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― 午前 1:30 ―
「…何だか、寝れない…。」
ぼーっとなる頭を振り払い、布団から体を出し、起き上がる。
外はまだ真っ暗で、普段なら起きる筈のない時間である事はすぐに分かった。
時計を見れば、まだ1時途中。
(…なんで、こんな時間に起きたんだろ…やる事もないのに。)
風に当たれば、また寝る気になれるだろうか…そう思って外に出て、少し歩く。なるべく家の近くを、すぐに帰れる様に。
そうしていると、ふと、どこかから声が聞こえる。
『明日は危ない日なんだって。』
『明日は偉い人が出歩くんだって。』
また、いつもの様に声が聞こえた。
硝子の様に儚く、刃の様に鋭く、鉄の様に固く、そして真っ直ぐで芯のある声が。
「…偉い人はどこにいくの?」
『学校に行くんだって。』
『学校で”せいみつけんさ”っていうのをするんだって。』
「教えてくれてありがとう。」
…”せいみつけんさ”?
漢字に直せば、精密検査、みたいになるのかな。
でも、私の知る検査は学校でやる検証検査だけ。一体精密検査とは何で、そして何を目的としたものか…名前から予想すると、より精密な?
そう思いつつも、声の方に向けて感謝を伝え、その場を去って家に帰る事にした。
その場で振り返って、一本道を歩いていく。
いつの間にこんなに歩いたんだろうか…曲がり角一つも見当たらない、想像も出来ない、果てしない距離を歩いていた様だ。
…私に出来る事は、ただ引き返して、戻って戻って、家に帰るだけ。
そう言い聞かせ、重い足で一歩を踏み出した。
― Ⅳ 白紙の染まる時 ―