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#specter
ゆ
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城プル
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午前三時四十六分。
モニターの光だけが部屋を照らしていた。
窓の外は真っ暗。
エナジードリンクの空き缶が机の端に積み上がり、キーボードの上には無数のログが流れている。
大規模な侵入作業の真っ最中だった。
Noliは相変わらず異常な集中力を発揮していた。
指が止まらない。
思考も止まらない。
まるで脳そのものがコードで出来ているみたいだった。
だが。
「……」
隣のセブンは違った。
数日まともに寝ていない。
作業量も限界だった。
画面を見つめる瞳が少しずつ重くなる。
瞬きが増える。
反応も遅い。
そして。
カクン。
頭が落ちた。
Noliの手が止まる。
静寂。
数秒。
「……セブン?」
返事はない。
小さな寝息。
完全に落ちていた。
Noliはじっと見つめる。
それから椅子ごと近づいた。
「おい」
反応なし。
「セブン」
反応なし。
「起きろ」
微動だにしない。
Noliは少し考えた。
そして。
「仕方ないな」
小さく呟く。
次の瞬間。
彼はセブンの顔を両手で挟んだ。
そして軽く唇を触れさせる。
ほんの一瞬。
羽が触れるような短いキスだった。
「……っ!?」
セブンの目が開く。
反射的に椅子から飛び退きそうになる。
「なっ!?」
「起きた」
Noliは満足そうだった。
「お前今」
「起こしただけ」
「起こし方がおかしいだろ」
「効率重視」
「絶対嘘だ」
セブンが額を押さえる。
Noliはくすくす笑った。
機嫌が良い。
異様に良い。
「寝ちゃダメだよ」
「少しくらい――」
「ダメ」
即答だった。
セブンが顔を上げる。
Noliは珍しく真面目な顔をしていた。
モニターの青白い光が瞳に映っている。
「まだ終わってない」
「……」
「今、一番面白いところなんだから」
その声には妙な熱があった。
Noliは昔からそうだった。
世界が燃える瞬間。
システムが崩れる瞬間。
完璧なコードが動き出す瞬間。
そういう”舞台の頂点”を誰より愛していた。
そして。
その景色を誰かと共有したがっていた。
特に。
セブンと。
「別に一人で見ればいいだろ」
セブンが言う。
Noliは少しだけ眉をひそめた。
本当に少しだけ。
「嫌だよ」
静かな声だった。
「なんでだ」
「だって」
Noliは肩を竦める。
まるで当たり前のことを言うように。
「君がいないとつまらない」
数秒。
沈黙。
セブンは視線を逸らした。
Noliは続ける。
「僕のショーを見ていてよ」
笑う。
けれどその瞳だけは真剣だった。
「特等席で」
他の誰でもない。
観客席の最前列。
その場所にいてほしいのは一人だけ。
そんな顔だった。
セブンはため息を吐く。
長く。
深く。
「面倒臭いな」
「知ってる」
「重い」
「知ってる」
「厄介だ」
「それも知ってる」
Noliは笑う。
全然反省していない。
セブンはしばらく黙っていたが。
やがて椅子に座り直した。
「……分かった」
「ん?」
「最後まで付き合う」
その瞬間。
Noliの顔がぱっと明るくなる。
まるで子供みたいに。
「本当?」
「本当だ」
「よし」
満足そうに頷く。
それから再びキーボードへ向き直る。
指が動き始める。
コードが流れる。
ログが踊る。
世界が少しずつ書き換わっていく。
そしてセブンは隣でその様子を眺める。
Noliは上機嫌だった。
まるで舞台の中央に立つ役者のように。
その横顔を見ながら、セブンは思う。
さっきのキスも。
引き留めた言葉も。
結局全部。
この男なりの「一緒にいてほしい」だったのだろうと。
モニターの光の中。
Noliは楽しそうに笑う。
セブンは、その隣の特等席で、
ショーの続きを見届けるのだった。