テラーノベル
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最近になって気づいたことだけど、ジャスティンは日本に強い関心を持っていて、竜馬を通じて日本を学んでいるような気もしていた
そして、ここ数か月、ジャスティンと一緒にいて竜馬は彼を尊敬するようになっていた、もちろん彼はいつも機嫌が良い分けではないし、たちまち喧嘩腰になったりもする、決して穏やかな性格でもなかったが、ジャスティンのそのカリスマ性は、人をぐいっと引き寄せるたぐいのものだったし、世間の波に揉まれて来たその顔つきから、年齢よりも精神はしっかりとした大人だった
それが竜馬を安心させ、頼りになる存在だった、夏休みが開けてもジャスティンは大学には行っていない感じで、昼間は終始、配達のアルバイトやなんやと忙しく働いていた
「あんまジロジロ見んなよ・・・」
ジャスティンが自分の部屋に竜馬を入れてくれたのは、二人がずいぶん仲良くなってからだった、彼は中古車センターの二階の倉庫のような所を一人で間借りしていてた
隠れ家的な彼のねぐらは、打ち付けのコンクリートの床に壁、大きなイギリス風の黒の鉄格子が入った窓の傍に、王様が寝るような大きなキングサイズのベッドがあった
「素晴らしいよ・・・ジャスティン・・・」
家の中はとても倉庫だったと思えないほど、かなりジャスティンが手入れをしていた、そして彼の家のソファーは赤いステンレスのコカコーラと書かれたバス停のベンチだった、ベンチの足に引きちぎられたチェーンが巻き付いていた、盗んできたのか?と竜馬が聞くと「拝借しただけだ」と彼は言った、ものは言い様だと竜馬は思った
竜馬はジャスティンの部屋をキョロキョロ見回した、月明かりが鉄格子の窓から、外の月明かりが大きなベッドを照らしている・・・打ちっぱなしのコンクリートの床、コンクリートの壁には、大きな海の絵が飾られ、そこにライトが当たるように配置されていた
「こういうのが性に合うんだ」
我が家を竜馬に見られて、ちょっと照れくさいのか、ジャスティンがガシガシ頭を掻いた
「僕も・・・こういう部屋に住みたいな、秘密基地かバットマンの家みたいだ!」
シャスティンは笑い声をあげた、竜馬は感心して言った、いったい家賃はいくらなんだろう?外観は古くてもジャスティンは丁寧に暮らしていた、カルロスの木造の家は全体にカビ臭いし、大酒飲みと暮らした人しか経験はないだろうが、リビングに置いてある酒の空瓶から嫌な臭いを終始放っているためとても臭い、キッチンも洗面所や便所さえも家全体が酒臭く、竜馬が学校から帰って来て玄関を開けるとムッとした酒臭さに本当に嫌気がさす
ベットの上の窓の桟に竜馬がプレゼントしたドラえもんのコミックが三冊立てかけてあった・・・その他にもあちこちに本が積んでいる、そこで竜馬はアメリカに来て初めて目標が出来た!自分もジャスティンのように一人暮らしがしたい、いや絶対してみせる!いったいいくらお金を貯めれば、カルロスの掃き溜めのような家から脱出できるだろう
ジャスティンを観察して分かったことだが、彼も竜馬と同じ、100%幸せとは感じた事は彼の人生ではそれほど多くないのではないかと思っていた、ジャスティンに自分の事をありのままに話せることが出来たのも、そんな彼に竜馬は共感したからだ
そしてある夜、二人で遠出してコンバーチブルのボンネットの上に横になって、降ってきそうな星空を眺めている時に、ジャスティンがポツリポツリ・・・と語ってくれた生い立ちは、それはそれは、壮絶なものだった
ジッポライターに火を付け、マールボロのタバコを吹かしながら語るジャステインを・・・竜馬はぼんやり見つめていた、アメリカでは父親がいない家庭はよく見かける、しかしジャスティンの母親みたいに三回も離婚再婚を繰り返した人は少ないだろう
ジャスティンの母親はどうしようもない男を好む傾向があったらしく、三番目に再婚した男は、幼いジャスティンと母親を酷く殴ったらしい、しかし彼はただ大人しく殴られているのは子供の時だけで、大きくなって力がついて来たある日、その男をボコボコに殴って家から追い出した
そして今は、郊外のトレーラーハウスで血の繋がっていない妹と母親は、二人でひっそりと暮らしているそうだ、ジャスティンは奨学金で大学に進んでみたが、自分で生活費を稼ぎ、さらに母親に仕送りをしているため、今期は働きづくめで、なかなか学校に行けず、もう進学を半分諦めていると言った
そして竜馬も自分の事を語った・・・突然の両親の交通事故死・・・父親の会社の倒産・・・父の犯罪・・・それらすべてのモノから逃げるようにアメリカに来たことを・・・ただお世話になったあの家の美しい少女のことだけは・・・なぜかジャスティンには言えなかった
・.。. .。.:・
「別にさ・・・」
「うん」
コンバーチブルのボンネットに二人は寝っ転がり降ってきそうな星空を見上げながら竜馬が言った
「借金したならさ・・・僕も働いたし、母さんも働いて・・・みんなで働いて返せばよかったんだ・・・犯罪を犯したとしてもちゃんと罪を償ったらよかったんだよ・・・」
竜馬は起き上がって・・・体育座りでうずくまった
「死ぬ必要なんて・・・何もなかったんだ・・・」
ジャスティンは両手を頭に回して星空を見たまま言った
「でも、自殺と決まったわけじゃないんだろう?」
「同じだよ」
ジャスティンが大きくタバコの煙を吐いた、そして暫くの沈黙の後・・・そっと口を開いた
「もう死んだ親のことは気にするな、考えても仕方がないことさ、竜馬、お前はこれから自分の力で好きな事がやれる、俺も今の所はただのジャスティンだけどさ」
フッと笑って竜馬は言った
「その後はどんなジャステインになるっていうの?」
「さぁな!でもこのままでは俺は終わらない、ここはアメリカだ、どんな血筋とか、どんな家柄とか、まったく関係ないさ、俺はいつかのし上がって見せる、そのためならどんなことでもする!」
そう言未来を語るジャスティンが星を見上げる目は・・・とても美しかった・・・
エンジンを切ったばかりのコンバーチブルのボンネットは、ホットカーペットのように温かく・・・ひんやりとした秋の夜風が吹いても背中は温かく・・・いつまでも二人の話はつきなかった
コメント
2件
ジャスティンは本当に優しいよね。 セドリックに対しても竜馬に対しても。
うわ、このエピソード、めちゃくちゃ良かったです…。ジャスティンの倉庫みたいな部屋が、本人の手で丁寧に整えられてる描写にまずグッときました。あのバス停のベンチ、盗んできたんじゃなくて「拝借」って言い換えるところに彼の美学というか、生き様が滲んでて。そして星空の下で互いの過去を語り合うシーン、静かで温かくて、ずっと見ていたくなりました。竜馬が「目標ができた」って思う瞬間、読んでるこっちまで希望が湧いてくる感じがしました。
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