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教皇はゆっくりと深く息を吸い、狩り手たちの前に立ち続ける。その目には冷徹な光が宿り、まるで全てを見通しているかのようだ。狩り手たちは言葉を待ちながらも、重く息を呑んでいる。教皇が語る言葉は、ただの任務指示ではなく、彼ら全員にとって重大な警告であることが感じ取られる。
「神域とは、かつて私が築いた理想の集団だ。」教皇の声が低く響く。「だが、その理想は、今や異能者たちに歪められ、変質した。」
教皇が過去の記憶を追うように目を閉じる。
「私が狩り手を創設した時、支配する力を求めなかった。ただし、異能者としての力を、秩序のために使いたかっただけだ。」
その言葉に、狩り手たちの表情は一様に引き締まる。だが、教皇の声が続くと、意外な一言が飛び出した。
「だが、私の理想に従う者たちがいた一方で、反発する者もいた。」
教皇の手が微かに震えた。それは過去を振り返る者としての痛みだろうか。
「神域は、私と同じく力を持つ者たちによって結成された。その中には、私を裏切り、違う道を歩んだ者たちがいる。彼らは、力こそが支配を成すものだと信じた。」
観音が静かに口を開く。
「つまり、神域は…教皇様の理想を裏切った者たちが作り上げた集団ということですか?」
教皇は無言で頷き、続けた。
「その通り。『神域』は私の理想を歪め、支配と恐怖で異能者たちを従わせることを目指した。」
教皇はその目を開き、狩り手全員を一人ずつ見つめる。
「神域の目的はただ一つ。世界を異能者によって支配することだ。」
その言葉に、狩り手たちの顔に緊張が走る。
「彼らは、異能者としての力を持つ者だけが世界を支配すべきだと信じている。『普通の人間』を道具としか見ていない。」
「普通の人間を道具だと?」
渋谷が呟いた。
「そうだ。彼らにとって、我々のような者たちは『消耗品』だ。」教皇の声がさらに低くなる。
「神域のリーダーは、私を裏切った者の中でも最も危険な男だ。彼の名は『零』。『零』は、他の異能者たちとは一線を画す。」
教皇はしばらく沈黙し、その後、言葉を続ける。
「『零』の異能は、他人の異能を吸収し、使用する能力だ。だが、単なる吸収ではない。彼は、吸収した異能を自在に操ることができる。」
「それ…すごいな。」
港が呟くと、教皇は静かに頷いた。
「『零』の能力は、異能者の中でも最強だと言っても過言ではない。彼は、過去に私の異能をも吸収し、私の力を持っている。」
狩り手たちは言葉を失う。教皇の言葉には重みがあり、そしてそれは恐ろしい事実を浮き彫りにする。
「そして、『零』の目的はただ一つ。私を完全に排除し、狩り手を壊滅させることだ。」
教皇は最後に一つ、決定的な言葉を放つ。
「私が狩り手を作り、その存在を支えているのは、『零』との戦いが避けられないからだ。だが、戦いはすでに始まっている。」
「戦い?」
石動が問う。
「『零』は、私の理想を崩壊させるために、狩り手を潰すつもりだ。」教皇の目は鋭く光る。「彼は『神域』の力で、狩り手の全員を抹殺するつもりだ。」
狩り手たちはその言葉を胸に刻み込む。教皇が語る「戦い」とは、彼ら全員にとって生死を分ける戦いだ。