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朝。カーテンの隙間から差し込む光が、あなたのまぶたを揺らす。
私は、ベッドの横で椅子に座ったまま、じっとあなたを見つめていた。
――ほとんど眠れなかったけれど、そんなことはどうでもいい。
「……おはよう」
囁くように声をかけると、あなたはぼんやりと目を開ける。
「あれ……? なんで……」
かすれた声が零れる。まだ寝ぼけているのかもしれない。
「いいの。考えなくて」
私はあなたの額に手を当て、微笑む。
「ただ、私が隣にいるってことだけ覚えててくれれば」
一瞬、あなたの表情に困惑が走る。
その顔さえも愛おしい。
机の上に置いてあるスマホ。
私はすでに昨夜のうちに、いくつかの連絡先を消しておいた。
あの子からのメッセージも、あの子との写真も、全部。
――だって、必要ないでしょう?
「ねぇ……」
私はあなたの首にそっと腕を回し、抱きしめる。
「今日、学校も仕事も休んじゃおうよ」
あなたは少し驚いた顔で私を見る。
「え……いや、でも……」
「大丈夫。誰にも文句なんて言わせない。私が全部、処理してあげる」
耳元に吐息をかけながら囁く。
その瞬間、あなたの身体が小さく震えた。
怖がっている?
それとも……気づき始めている?
でも、もう遅い。
あなたの世界は、もう私に染められているんだから。
「ほら、こっち向いて……」
顎に指をかけて顔を近づける。
唇が触れる直前、私は小さく笑った。
「逃げたら、許さないからね」