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夜のカフェはいつもの喧騒が消え、静寂に包まれていた。
僕は外の暗闇を見つめながら、心の中で繰り返し問いかけていた。──本当に戦うべきなのか?
「待たせたわね。」
その声は、背後から聞こえた。振り返ると、あのウェイトレスがいた。普段の制服姿ではなく、黒いジャケットとブーツに身を包み、長い鎖を握っている。その鎖の先には、漆黒の「鬼」が繋がれていた。
「ここでやるのか?」僕は立ち上がりながら問いかけた。
「いいえ、ここは職場。大事な店を壊すつもりはないわ。」彼女は微笑んだ。笑顔はどこか凍てつくような冷たさを含んでいた。「外に行きましょう。存分に暴れるなら、場所を選ばないとね。」
彼女が先導し、店の裏手にある広場へと向かった。月明かりが照らす中、二人の影が長く伸びている。
「どうして能力者狩りなんてしてるの?」彼女が唐突に問いかけてきた。その声には好奇心だけでなく、怒りが混じっている。
「それが使命だからだ。」僕は短く答えた。
「ふうん、使命ね。だけど、本当にそれが正しいと思う?」彼女は鎖を軽く引き、鬼がうなり声をあげた。「私はね、ただ生きたいだけよ。でも、あなたみたいな狩り手がいるせいで、能力者は常に追われる立場。」
「追われる理由があるからだ。」僕は冷静に言い放った。「能力者の力は危険だ。放っておけば、いずれ世界を脅かす存在になる。」
「誰が決めたの?」彼女の声は静かだったが、その目には燃えるような怒りが宿っていた。「人間にとって、都合が悪いだけなんじゃないの?」
その瞬間、彼女の鎖が一閃した。「鬼」が地を蹴り、こちらに向かって突進してくる。僕は即座に身を翻し、背中に隠していた短剣を抜いた。
「やはり戦うことになるのか。」僕はつぶやきながら、鬼の鋭い爪を受け流し、距離を取った。
「容赦しない。」彼女が笑みを浮かべる。鬼の動きは俊敏で、攻撃の度に大地が揺れるような威力を持っていた。
僕は鬼の猛攻をかわしつつ、彼女との間合いを詰めていく。彼女自身も能力者だ。直接攻撃するチャンスを伺うしかない。
「一つだけ聞く!」僕は叫んだ。「君のその力、本当に使いこなせているのか?」
「もちろんよ。」彼女は即答した。その言葉に迷いはなかった。
だが、僕は知っている。鬼には隙がある。鎖で繋がれている以上、制御するには彼女自身の集中力が必要だ。僕の狙いはそこだ。
「証明してみろ!」僕は地面を蹴り、彼女に向かって突進した。鬼が間に入ろうとするが、短剣を振り上げ、鎖に狙いを定めた。
──ガキンッ!
刃が鎖に当たり、火花が散る。その瞬間、鬼が一瞬動きを止めた。
「やるじゃない。」彼女は一歩後退しながら、再び鎖を振り回す。だが、僕の狙い通り、制御が乱れている。「鬼」の動きが微妙に鈍くなっていた。
「ここだ!」僕はすかさず彼女に向かって跳びかかる。彼女は驚いたように目を見開いたが、すぐに笑みを浮かべた。
「そう簡単にはやられないわよ。」
再び戦闘が激化する中、僕は彼女の底知れない力に圧倒されながらも、自分の使命を忘れないように闘志を燃やしていた。この戦いの果てに何が待っているのか、それを知るために──。