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【一次創作】ノベル短編集

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【一次創作】ノベル短編集

3 - "いきたい"。お前と一緒なら。

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2023年02月27日

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死のう。そう思ったのは何度目か。


昔から人付き合いは苦手で、喋るのが苦手で、人からどう思われているのか気になって。

そうして、疲れてしまった。

周りのひそひそ声は俺を恨む悪口に聞こえるし、俺の口から紡がれる言葉は拙いし、相手に伝わっているのか心配でろくに喋れないし、周りから悪く思われたくないし、全ての人から好かれたかった。

やっぱり、疲れたし嫌になった。

まだ俺は高校生。そんな中途半端に人生を諦めるな、なんて叱る人も居るのだろう。でも、そんなことしないで欲しい。ここまで頑張った俺を、褒めて欲しい。でも、そんな人は居ないから。成績も悪いし人付き合いも苦手な俺は、親から愛される資格も無かったらしい。先生も、俺を叱るきりで助けることなんてない。クラスには味方なんて居ない。やっぱり、産まれてくるべきじゃなかった。

だから今日、俺は人生に終止符を打つ。




部屋の天井から吊る下げたロープで輪っかを作って、椅子に登って、輪っかに首を通して、あとは椅子を蹴り飛ばすだけ。そんな簡単なことで、俺は地獄から抜け出せるんだ。ここまで頑張った終わりがこんな呆気なくて良いのだろうか。そんなことを考えてしまうくらいには順調に人生を終える準備が進んでいた。

まぁ、一生に一度しか無い大舞台が、そんな上手くいく訳もなくて。



「お前、まだ死ぬなよ。」



でもまさか、唯一の友人、いや、親友が来るなんて思ってもいなかったのだけど。



「なんで、ここに居るんだよ」



流石に親友の目の前で死ぬ程、俺も壊れている訳では無い。一旦、首を縄から抜いて椅子を降りた。


「用事あるなら、早く済ませて、俺死ぬから。」

「お前、マジで1週間話せないだけですぐ壊れるよな。」


そうか、話すのも一週間ぶりか。こいつは確か、隣の国にどうしても欲しいものがあるとかで一週間居なくなるとか言ってたっけ。


「帰ってきてお前に会おうと思って来たらお前死のうとしてるし、マジびびったわ。」

なんて言いながら笑うもんだから、なんだか嬉しくて泣きそうになってくる。


それからは何故か、隣の国の話を聞かされた。ほとんど一方的に。すごい景色があるとか、ものすごくおいしいお菓子があるだとか、向こうの文化だとか。


そう言っていつも通りに話してくれるお前の、そういう所が好きなんだ。死のうとした理由も聞かずに、いつも通りに接してくれる。それがなによりも嬉しかった。





話が一段落つくと、急にいつもとは違う真面目な顔をされて、言われた。


「俺には、お前の気持ちは分からん。理解してるつもりではあるけど、全部は分からん。でもな、聞くことはいくらでも出来る。だから、いつでも辛いことあったら言えよ。無理に話さなくてもいい。話したくないなら、話さなくてもいい。でも、少しは頼って欲しいわ。」


やっぱり、お前は優しいと思った。お前の方が俺よりずっと苦しくて苦しくて堪らないはずなのに。こうやって、俺に手を差し伸べてくれる。なのに何故、お前は嫌われなきゃいけないのだろう。


「分かったよ。頼る。ちゃんとね。」

「そうか、なら、良かった。」


「それから、あと一つだけ。これは、俺の願望だ。」







「お前、俺置いて死ぬなよ。俺だって、もう生きたくないんだよ。」


それを聞いて、悲しいような、安心するような気持ちになった。

そうか、でも、


「でも俺は、お前を連れては、逝けないんだろ。」


お前は、魔法使いだから、不老不死の呪いにかかっているからだから。だから、”いきたくても”、それが上手く出来ないんだろ。


生きたって、お前は化け物扱いされて苦しむ。

死のうとしたって、痛みを感じるだけで死ねない。

どちらにしろ、お前は地獄から解放されないんだろ。


お前の言うように、俺はきっとお前の気持ちの1ミリくらいしか分かってやれていない。きっと、想像以上の苦痛なのだろう。それなのに、俺に手を伸ばして、頼れと言ってくれるんだ。


「なんで神様は、お前みたいな優しいやつに不死の呪いなんてかけたんだろうな。」

「さぁな。前世で大量殺人でもしたのかもな。」


そう言って笑うお前は、辛そうだった。そんなお前にどうしてやるのが正解なのかと、何も出来ないことが悔しかった。



稀に魔法使いにかけられてしまう不死の呪いが、何故お前にかかってしまったのだろう。数百歳と歳が離れた俺にもこんなに優しくしてくれるお前は、前世だって絶対優しいのに。やっぱり、この世は理不尽ばっかりなんだ。


「お前と一緒に”いきたい”な。」


どちらが言ったかも分からないが、そんな言葉が部屋に響いた。


お前とずっと一緒なら生きたい。

お前と一緒に逝きたい。


どちらも、叶わない。


俺はいつか、お前を置いて逝ってしまう。

お前は、いつまでも生きたまま。




「いつか、こんな理不尽な世界壊してやりてーな。」

「その時は一緒にな。」

「そりゃもちろん。」


叶うかも分からない約束を交わせば、なんだか少しだけ、楽になった気がした。

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