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#一次創作
ruruha
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……えっ?
私は天井を見つめていた。
見慣れた天井。
明るい……朝?
「!!」
裸足のまま、部屋を飛び出す。
「アーウィン!」
二階の手すりから、身を乗り出して呼ぶ。
奥の部屋から、驚いた顔をして出てきた。
「おはよう、レナ。どうしたんです」
階段を駆け下りて、その勢いのままアーウィンにしがみつく。
「地下があるの!血だらけで人が死んでて……!」
「レナ?」
「一番奥には柵のある部屋があって、それでそれで私、私が!!」
続きが言えなかった。
「私が……わたし……」
言い淀んだ私を見て、彼は困った顔をする。
「どうしたんです。話がわかりません。地下ってなんですか?」
「地下があるのよ!血だらけの……来て!」
アーウィンの手を引っ張る。
「ここに……えっ」
昨夜あったはずのドアがない。
「そんな!確かにあったのに……」
「何がですか?」
後ろで物置の明かりをつけてくれながら、聞いた。
電灯に照らされた壁には、ドアのあった形跡さえない。
信じられなくて、何もない壁に触れた。
「ドアがここにあったのよ……地下の通路へ出る……だって私を呼ぶ声がして……」
声が萎んでいく。
だって目の前にドアは無い。
納得してアーウィンが頷く。
「怖い夢を見たんですね」
「違うわ!本当に見たのよ!血の臭いもしたし、お化けの笑い声も聞いた!!」
夢なんかじゃない。
だってあそこにはーー。
涙が溢れてきて、両手で顔を覆った。
だって私見たもの。あそこで。
「もう一人、私がいて……血を吸ってた……笑って!」
黙って私の額に手を当てる。
「……また熱が上がりましたね。さあ、ベッドへ」
そう言うと、きっぱりと私を階段へ押し出した。
「ほんとなの……」
背中を押されながら、むずかるように呟く。
「熱で頭が混乱しているんですよ。さあ、もう泣かないで」
その時、出し抜けに居間の電話が鳴った。
電話のベルに、背中を押す力が消える。
これ以上何をするのも億劫で、のろのろと階段に足をかけた。
「もしもし?」
背後で彼が、受話器に向かって話しているのが聞こえる。
頭、重い……。
このところ、ずっと調子が悪い。
昨夜の体調の良さが嘘みたい。
やっぱり夢だったのかな。
「はい、今替わります……レナ」
アーウィンの声に、ようやく階段の二段目に足をかけたところで振り返る。
電話口を手で押さえて、受話器を軽く持ち上げてみせた。
「リズからです」
受話器を受け取ると、二、三度深呼吸して息を整える。
調子が悪いってこと、バレないようにしなきゃ。
また心配させちゃう。
「もしもし、リズ?」
電話口から、いつになく焦った声が聞こえてきた。
「レナ。ねえ昨日、あれからマシューはどうしたの?」
突然の質問に面食らった。
「マシュー?……どうしたって……何が?」
「マシューが戻ってきたでしょ?それからどうしたか知ってる?」
「ま、待ってリズ。何の話?」
束の間に沈黙が流れる。
「……マシューが昨夜から家に帰ってないんだって」
「えっ」
思わず絶句する。
リズがもどかしげに続けた。
「昨日、レナの家から私たち一緒に帰ったでしょ。そのすぐ後に、マシューが忘れ物したからって一人で戻ったのよ。ねえ、その時何か言ってなかった?どこかに寄るとか……」
「……知らない、私、会ってない……マシューが戻ってきたのなんて知らない……」
「えっ……」
今度は彼女が絶句する番だった。
顔をあげてアーウィンに声をかける。
「アーウィン。昨日マシューがうちにもう一度来た?」
はたきを持った彼が手を止めて、こちらを見た。
「いいえ、どなたも。昨夜は奥様も戻られてませんし」
「リズ、やっぱり来てないわ。それに忘れ物なんて……ないと思う」
「……そう、分かった。ありがと……」
ふと行方不明事件を思い出した。
「リズ……!」
「大丈夫よ。きっと何でもなかったってことになるわ。今日は土曜だし……どこかへ遊びに行ってるのかも」
その言葉は私を慰める言葉じゃなくて、自分自身に言い聞かせているようだ。
「私、もう少し心当たりあたってみる」
「私も一緒に!」
思わず言った私に、彼女は明るい声で遮る。
「だーめ。熱があるんでしょ?……そんな声してるし。また後で電話するから。それじゃあね」
「うん……それじゃ後で……」
受話器を手にしたまま立っていた。
ツーツーと通話が終了する音が鳴っている。
私は不安だった。
とてもとても不安だ。
ゾクゾクと寒気がする。
熱のせい?
ーーだるい。
「レナ、ベッドへ。顔色が悪いですよ」
彼がそう言うのが、遠くに聞こえた。
コメント
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ああ、もうここで第6話、一気に不穏さが加速しましたね……!「地下のドア」が消えて、アーウィンは「怖い夢」で片付けようとするし、なのにマシューが行方不明っていう電話が入る。レナの混乱と焦りが地の文からひしひし伝わってきて、読んでるこっちまで息苦しくなりました。自分が“血を吸うもう一人の自分”を見た記憶だけが確かで、周りはそれを否定する——この孤独感がすごく怖い。次の展開が気になって仕方ありません!