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それからまた、数日と経たずにまた誰かが来た。
大きなスーツケースに、赤色のチャイナ服に深紅と言っても良いような濃赤の髪を持ったドールが来た。
どうせ兄貴の客人だろう。俺には関係ない。
あぁ、今日は一段と寒いな。
俺の周り全てを埋め尽くす氷が永遠に冷気を放つ。
ドンッ。そんな音を立てて、氷柱が上から落ちてきた。
サイズ的には、30cmも無い程の大きさだ。
気が付けば、俺の頬から“赤”が滴り落ちていた。
怪我をしたらしい。この程度なら、兄さんが死ぬときに感じた冷たさよりはきっと、全然マシだ。
それに、傷口に触れたせいで、俺を出た“赤”は凍り付いた。
これ以上部屋を汚す事にはならなさそうだった。
もう、外にあの赤いドールは居なかった。
数分も経たずに今度は、声が聞こえる。
それも、兄貴ともう一人、女性の声だった。
兄貴のぶっきらぼうでどこか優しい声とは違い、鈴の音のような美しい声だった。
軽快なヒールと、重い革靴の足音は俺の部屋の前で止まった。
ギギっと年季の入った床が音を立てる。
兄貴が座り込んだりすると鳴る、いつもの音。
《炎露、 起きてるか?今日は弟子を連れてきたんだ。出てこなくても良いからさ、ドア越しで良い。話してみないか?》
兄貴の声は前より少し明るかった。何か良い事でもあったのだろう。
ただ、俺は誰かと話せる程の気力は無い。
兄さんを殺した弟をそんなに大事にしないでくれ。
少し、…放っといてくれ。