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⚠仏♀→英♂→日♀→←米♂の三角関係です⚠
仏目線
雪が舞う季節。
会社の休憩室の窓から腕を組んで歩くカップルを眺めて、コーヒーを一口飲んだ。
「コーヒーより、紅茶をいかがですか?」
そう私に言ったのは、中学からの同級生、同僚であるイギリスだった。
「今日はコーヒーの気分なの。」
私はそのまま道行くカップルを眺めた。今日は土曜だというのに、会社は休ませてはくれない。
「バレンタイン、もうすぐですね」
「そうね。だから?」
もしかしたら、頂戴と言われるかな。
あげるって言われるかな。
「私、あの人から貰えますかねぇ…」
私の淡い期待は一瞬にして滅びた。
最初から分かってはいた。だけど、すこし心が傷んだ。
「ちょうだーい、って言ってくればいいじゃない」
「そんな事言えるわけ無いでしょう。馬鹿なんですか?」
あんたのがバカよ、と言いながらイギリスの方に目をやると、どきんと心臓が鳴った。
「言えたら、いいんですけどね…」
伏し目をしていて長い睫毛が目立った。口元はにこにこしているが、目は寂しそうに斜め下を向いていた。
かっこいい。けど、この寂しそうな目は、私には向けてくれない。その事実が、私の心拍数を上げた。
「…ばっかみたい」
そう言い放って、私は休憩室を飛び出た。
イギリスはちょっと、と何かを言っていたが、止まることができずに女子トイレへと逃げ込む。
個室までが遠く感じて、私はその場に座り込んでしまった。
私はイギリスの恋も私の恋も実らないことを知っていた。日本には別に好きな人がいるのだ。
叶わぬ恋をするくらいなら、私にすればいいのに。
「……ほんとに、ばかみたい。」
化粧が落ちちゃう。でも、泣きやめない。
誰か、だれか…
私の寂しさを紛らわして……
「フランス…さん?」
顔を上げると、同僚であり、イギリスの片思い相手である日本がいた。
「日本ちゃん…」
「どどどどうしました!?!?誰かになにかされました!?!?それとも私なにか…?」
だいぶテンパっている様子だけど、落ち着いて、なんて言える余裕がない。
「日本ちゃん、ちょっとだけ…そばにいて…。」
少しのあいだ驚いた顔をしたが、すぐに笑顔で
「わかりました。フランスさんが満足するまで、何時間でも居ますよ」
そう優しく言ってくれた。
やっぱり勝てないなぁ…。
何分経ったのか体感でも分からくなった頃、私はようやく泣き止んだ。
左側に設置してあった全身鏡に目をやる。
ひどい有様だ。
目元は当然アイシャドウやアイラインが混ざり合い黒く染まっている。それが涙と共に流れ落ち、顎まで筋道を作っていた。
ファンデーションはところどころ薄くなり、地肌が見えてる。髪は乱れたままで、目は虚ろ。
白いブラウスにはグレーの斑点ができていて、黒いフレアパンツにはファンデーションで白い汚れが目立っていた。
「休憩室にメイク落としがあったはずです。私メイク直し程度の道具は持ってるのでよければ貸しますよ」
「ありがとう…私リップしか持ってないから貸してもらおうかしら」
日本はにこりと笑って、ではメイク直しとメイク道具もってきますね、と言って出ていってしまった。
その直後、私は衝撃的な言葉を聞いてしまった。
「あら、日本さん。今日もかわいいですね」
「いいイギリスさん!?」
“今日もかわいいですね”
視界が曇っていくのがわかる。手や口が震えて、私はまた腕に顔をうずめてしまった。
「もしかして中に誰かいました?」
「はい、ひとりだけ…」
声だけなのに、表情まで目に浮かぶ。嫌なのに、聞きたくないのに、なぜか全て完璧と言っていいほど耳に入り、頭から粘り強く離れてくれない。
「私の日本さんへの気持ち、バレちゃいましたか。」
「イギリスさん私急いでるんです。ごめんなさい、また後ほど…」
にこやかに返事をしたのが聞こえて、足音が消えていく。
自分でも何を思ったのかよく分からないが、外の様子を伺いに顔を出してしまった。たぶん、イギリスの傷ついて落ち込んだ背中がみたかったのだ。
「…あなたでしたか。」
曇った視界で見るそいつは、いつもより愛おしくて、いつもより心を抉ってきた。なにを考えているのか分からない。表情がみえない。
私は数秒固まったあとに、急に我に返って顔を隠すために後ろに体を向けた。
「……見るんじゃないわよ、女性のこんな姿を…。」
「べつに見ても気にしません。それより、どうして泣いているんですか」
優しさなのか、興味本位なのか、それとも何気ない会話なのか、私にはわからない。ただ、正体の分からない得体の知れないその言葉によって、私の心はまた痛んだ。
「言わないならいいですけど、…まぁ、さっき聞いたことは内密におねがいしますね」
「………。」
なにも言えなかった。私は振り向かないでトイレの中へと逃げた。今は社内でここだけが安全で、ここだけが安心できるのだ。
革靴の歩く音が聞こえる。リズムが一定できもちがいい。
しばらくすると、誰かが走ってくる音がした。入り口を見ていると、日本が疲れ切った顔で息を切らしながら慌てて入ってきた。
「遅れてしまってごめんなさい!」
色々なものを抱えてやってきた日本は、どこか機嫌がよさそうだった。
「もしかして、話せたの?」
「はい、今度の取引き、一緒に行こうって…」
私は安堵した。
イギリスの恋は絶対に実らない。
私はメイクを落とし、日焼け止めを塗った。
「どうして私ではないのでしょうか」
そう真剣な顔で相談してきたのはイギリスだ。
ポットにお湯を注いでいるイギリスに、横で座っている私は目を逸らして反発した。
「知らないわよそんなの。」
「…私の方が先に仲良くなったのに……。」
完全なる嫉妬だった。
私はもう慣れていた。あの一件以来、自分でも不思議なくらいに私の心は落ち着いていた。
「私じゃ、だめなのでしょうか……」
イギリスの初めて見る表情に、私はすこし驚いた。
「…応援してるわ。」
そう言うとイギリスは笑顔になって
「応援しててください。」
と言った。皮肉もなにもない純粋な言葉に、私の心はなぜかちくりとした気がした。
翌日出勤すると、人だかりが目立っていた。どうしたんだろうとその中心に目をやると、日本とアメリカが立っていた。
「え、どうしたのよ。こんな朝っぱらから囲まれちゃって」
「えっと、付き合ったんです、私たち」
恥ずかしそうに顔を赤らめる日本と、俺の彼女だ、と言わんばかりの自慢げな顔をしたアメリカ。
私はイギリスを探した。でも人だかりの中にはイギリスの姿は見つからない。
私はそこにいるような気がして、休憩室へと足を運んだ。
休憩室、と書かれた扉を開けると、窓を眺めながら座っている見慣れた背中が見えた。私は何も言わず横に座り、カウンターテーブルに置いてある個包装のショートブレッドに手を伸ばした。
「…失恋しちゃいました。日本さん、アメリカと付き合ったみたいです。」
「知ってるわ。さっき聞いた」
慰めてください、と表情で訴えかけるイギリスは、今にも泣きそうな顔をしてた。だけれど、やっぱり泣かない。私はイギリスが泣いたところを見たことがなかった。
日本にも、アメリカにも見せた泣き顔を、私は知らない。
そういうところが好きだった。私にだけ強がるその姿が。
「慰めなんてしないわよ。私いまそういう気分じゃないもの。」
そう言って私はイギリスに目もやらず、個包装袋を開けて、ショートブレッドを口に運んだ。
大好きな味がしたのに、それはなぜか苦く感じた。
コメント
1件
うわ〜ん、この切ない三角関係の空気感、たまらなかったです…!!😭💕 仏さんの「私じゃダメなのかな」って気持ちと、英さんの「応援してる」っていう強がり、どっちも痛いくらい伝わってきて胸がぎゅっとなりました。最後のショートブレッドが苦く感じるところ、めっちゃエモいっす…。続きが気になりすぎます!!Rnさんのキャラ心情の書き方、好きです🌸✨