tg視点
朝の教室って、なんか好きじゃない。
まだざわざわしてる時間なのに、入った瞬間の視線って、なんであんなに刺さるんだろ。
今日もまた、頭の上の数字を見られてる気がして。
そっと自分で確認する。
「811」
tg ……また上がってる
小さく息を吐いて、袖でそっと額をぬぐった。
ちょっと暑い。ていうか、顔、赤くなってないかな。
朝は808だったのに。
さっき、廊下ですれ違ったあっとくんが「おはよ」って言ってくれて――
それだけで「810」になって。
笑いかけてくれた時、心臓がきゅーって鳴って、
気づいたら、さらに1増えてた。
あっとくんは、なにも悪くないのに。
俺が勝手にドキドキしてるだけで。
モブ ちぐさ、また上がってるよね
モブ てかさ、マジで誰なのあれ……バレバレじゃない?
後ろの席から、ヒソヒソと聞こえてくる声。
わざとらしくて、でも聞こえないふりするしかなくて――
tg(……見ないでよ……)
胸の奥がぎゅってなる。
頭の上の数字が、みんなに見られてるの、ほんとにイヤだ。
こんなの、俺の気持ちなのに。
勝手に見て、勝手に言わないでよ……
放課後。
教室にはもう数人しか残ってなくて、
俺はカバンも持たずに、机に突っ伏してた。
頭の上に浮かんだ「811」が、重たく感じる。
気持ちがバレるのが怖くて、それなのに止まらなくて――
at ちぐ…
その声で、びくっと肩が跳ねた。
顔を上げると、教室の入り口に、あっとくんが立ってた。
at なにしてんの? まだ帰んないの?
tg えっ……あ……いま、帰ろうと……してた……
咄嗟に答えた声が、ちょっと上ずってた。
あっとくんは俺の顔をじっと見て、少しだけ眉をひそめた。
at 顔、赤いじゃん。大丈夫? 具合悪いの?
tg っ……ちが……ない、です……
焦って首を振ると、ふわっと前髪が揺れた。
その瞬間、あっとくんの目線が頭の数字に向いた気がして――
tg(見られた……?)
心臓が跳ねる。
at なんか、ちょっとふらついてるし。ひとりで帰れんの?
tg う、うん……帰れる……
at じゃあ、駅までくらい一緒に行く。ほっとけないし
tg えっ?
耳が熱くなる。
それと同時に、「815」って数字が、頭の上で光った気がした。
嬉しい。
けど、怖い。
このままどんどん上がって、隠せなくなっちゃったら……
きっと、気持ちがバレる。
……あっとくんに。
tg(1だけでいいのに……)
ほんの少しだけ、あっとくんの数字が変わってくれたら。
それだけでいいのに。
俺ばっかりこんなに増えてって――ずるいよ。
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