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2話始めます
もう既に泣きそうな人いるといもいますが…お付き合いください
――乱歩視点
ポオ君の嘘は、すごく丁寧だ。
言葉の選び方も、声のトーンも、視線の逃がし方まで、完璧に「何でもない」を演じている。
だけど、僕にはわかる。
だって、
ポオ君は嘘をつくとき、左手の親指を少しだけ動かすんだ。
それに、話すたびにほんの一瞬だけ、僕の顔を見れなくなる。
……今日も、そうだった。
昼、たい焼きをかじってたとき。
ポオ君はふと遠くを見た。
その瞬間に、なんだか胸がズキっと痛んだ。
「あ、これ、春の匂いである。」
ポオ君がそう言ったとき、
僕は「春って、何かを終わらせる匂いでもあるよね」と言いかけて、口を噤んだ。
そんなこと言ったら、
何かが壊れてしまいそうだった。
彼が倒れたとき、僕の頭は真っ白になった。
身体が勝手に動いて、受け止めた。
彼の顔が青白くて、冷たくて、
それでも「ちょっと疲れただけ」って言う彼を、
僕は、責めることができなかった。
だって――
僕だって、気づいてないふりをしてるから。
夜、ポオ君が眠ったあと。
僕はそっと起き上がって、
テーブルの上のノートを手に取る。
開いてみたい衝動に、何度も駆られる。
でも、それをしたら、
彼の嘘が「本当」になってしまう気がして。
僕は、ただそっとそのノートに手を置いて、こう囁く。
「……まだ、僕には見せないでよ。」
明日はきっと、
またいつもと同じ一日が始まる。
そう信じてる。
信じてるふりをしてる。
ポオ君が、まだここにいてくれるって、
そう思ってる。
いや、信じさせてほしいんだ。
嘘でもいいから、君の声で『大丈夫』って言ってくれたら、僕はまだ、笑えるから。
乱歩のメモ帳(破かれたページの裏)
君の嘘を、全部見抜いているよ。
でも言わない。
僕は、君がつく最後の嘘に、
「ありがとう」って笑って返したい。
6月中に終われるかな?