数日前、欧華の能力を愛に見てもらってから、欧華は毎日、ずっと、感情の制御の練習をしている。
大丈夫だろうか。
感情の制御と感情を殺すのを履き違えて無いだろうか。
「欧華、心を殺し過ぎないでくれよ。私みたいに、私達みたいにはなるなよ」
とうとう言ってしまった。
「それはどういう、」
欧華がそう聞き返そうとしていたから、分からなかったのだろう。
「知らなくて良いんだ。ひたすらに重苦しい話だし」
欧華が良い終える毎に私はそっぽを向いてそう言った。そして、早々に鏡の中に使った部屋の中に逃げるようにして入って行った。
鏡の中の部屋でフーと深い息を吐いた。
「感情を殺してしまえば、戦争中の苦しさも感じなくて済む。覇権国の化身である主を妬ましく思ったりする輩からの私への敵意も感じなくて済む」
そう独り言を言う私の顔が写った銅鏡には、本当に、“人形”みたいな何も感じていない、一切の光を宿していない瞳をしたのが写っていた。
「良い所がある物は、必ず、悪い所も有るんだよ」
「苦しさも、悲しみも感じなくなったと同時に、喜びも、嬉しさも、楽しさも感じ無くなった」
口角を上げて、ニッコリ笑って見せる。何時もの明るい蘭華が銅鏡に写った。
「元々、私は明るく、元気な性格だった筈だ。だから、主の前ではその頃のように、大胆不敵で、明るく元気な蘭華を演じている」
「そうじゃなきゃ、心配されちまうからな」
私は、ニカッと笑ってそう言った。
「欧華、お前は、こうなるなよ。感情を殺して、本当の“人形”になんて、なるなよ」
鏡の奥に見える景色の中に居る欧華に向かって、そうポツリと呟いた。
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