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第8話:触れてほしい、触れたくない
先輩と過ごす時間は、いつも予測できない。
放課後、部活が終わった後。
生徒会室に呼び出されることが増えてきた。
「なぁ、葵」
その呼びかけに、いつも通り返事をするのは難しかった。
「はい、先輩……」
「俺に抱かれること、もう怖くねぇのか?」
先輩が座っている椅子の前で立ち尽くすオレに、
急に言葉をかけられて――
反射的に息が詰まった。
「え?」
「怖くないのかって言ってんだよ。お前、俺にされることが、どんどん気持ちよくなってきてるくせに。そんなこと考えても、逃げる気なんてねぇだろ?」
……っ。
その言葉が、まるで鞭のようにオレの心を打った。
「でも……」
「でも?」
オレは言葉を濁した。
だって、言えなかった。
「でも……先輩、あの夜のことを、誰にも知られたくないんでしょう?」
その一言に、先輩は笑いながら立ち上がった。
「誰にもって?お前、俺のことなんて誰にも教える気ないだろ?」
その言葉を聞いて、オレは目をそらすことができなかった。
先輩の目が、完全に“支配者”のそれだったから。
「だから、怖くねぇんだろ。俺に触られても、誰にも言えなくて、他のやつと普通に話してても、俺のことを忘れられないんだよ」
そのままオレの体を引き寄せ、唇が重なった。
「ねぇ、欲しいんだろ? 俺にだけ触れてほしいんだろ?」
そう言いながら、先輩の手がオレの腰をぎゅっと掴んだ。
その強さに、オレの心がさらに囚われていく。