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#シリアス
夕陽が建物の隙間から差し込み始めるころには、僕は自然に深呼吸できるようになっていた。
「もう平気そう?」
「……うん。大丈夫。ありがとう」
「ならよかった」
天馬くんは安堵を見せながら立ち上がった。
その横顔を眺めていたら不意に胸がぎゅっと締め付けられるような感情に襲われる。
(本当に優しい人だ…こんな僕にここまでしてくれるなんて)
同時に申し訳なさも湧き上がる。
何も知らない彼に負担をかけてしまったことへの罪悪感。
「あのさ、水瀬」
彼が振り返る。
「なんかあったら言えよ?無理してるの見ると俺も落ち着かないからさ」
「……っ…うん」
彼は呆れたように微笑むと、肩を軽く二度叩いてくれた。
「じゃあ、今日はここまでな。気を付けて帰れよ」
「……うん。天馬くんも」
「おう。また明日な」
そう言って手を振る彼の後ろ姿が遠ざかる。
夕暮れの街灯に照らされた影を見送りながら僕はひとり立ち尽くした。
胸の中で微かな熱が灯っている。
(…言えばよかったかな、正直に。でも…虐められてたなんて、かっこ悪くて、情けなくて言えないや……)
過去の影は依然としてそこに在る。
けれど、今は。
天馬くんという支えが傍らにあることを実感できる。
それだけでも少しだけ未来が明るく見える気がした。
夕闇に紛れるようにして、僕は自宅への道を歩き出した。
足取りはまだ重いけれど、震えはもう止まっていた。
◆◇◆◇
あの一件から一夜明けた朝
教室に向かう足取りは少し重かった。
(天馬くんに変に思われてないといいな……)
昨日は彼を最後まで付き合わせてしまった。
あの苦しさの原因をちゃんと説明できなかったことに、罪悪感が残っている。
でも何より……
「水瀬ー!おはよう」
廊下でばったり天馬くんに出くわすなり
彼は何事もなかったかのようにニカッと笑いかけてくる。
その眩しい笑顔に一瞬ホッとしたものの、すぐに昨日の気まずさが蘇る。
「お……おはよう天馬くん……」
「どうした?体調悪い?」
「えっ?いや、そんなんじゃないよ……!」
慌てて否定する僕に天馬くんは苦笑いを浮かべる。
「まぁ無理しないようにな」
そしてさりげなくポンと僕の肩を叩くと
「んじゃまた後で」と言ってそのまま教室に入っていった。
(やっぱり気遣われちゃってるのかな……)
罪悪感がまた一段と濃くなった気がした。
午前の授業はほとんど集中できずに終わった。
ノートには落書きとも文字ともつかない線が散らばっているだけだ。
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