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#シリアス
気がつけばいつも屋上に向かう時間になっていた。
「水瀬、メシ行こーぜ」
いつもの調子で声をかけてくれる天馬くん
僕は小さく頷くと鞄を抱えて立ち上がる。
屋上に続く階段を昇る間も、妙に胸の奥がざわついて仕方なかった。
(昨日のこと話すべきなのかな……)
(でも……)
過去を曝け出すのは怖い。
嘲られた記憶。
潰された夢。
そんな話をしたところで何が変わる?
変に同情されるのも迷惑かけているようで嫌だ。
ただ黙っていれば普通に接してくれるのに。
そうだ、何も言わなければ今まで通り過ごせる。
そんな考えがグルグルと駆け巡る。
「今日もいい天気だな」
屋上のフェンス際で伸びをする天馬くんの後ろ姿を見つめながら
僕は胸元のボタンをきつく握りしめていた。
ベンチに腰を下ろしてそれぞれ昼食を取り始める。
風が吹いて草の香りが混じった空気が頬を撫でていく。
いつもなら穏やかな時間が流れるはずなのに
今日はまるで針の筵の上に座っているような居心地の悪さを感じていた。
「なぁ水瀬」
唐突に名前を呼ばれてビクッとする。
「え?な、何?」
「なんかさっきからずっと上の空っていうか……」
鋭い視線を向けられ言葉に詰まる。
「きょ…今日ちょっと寝不足で……」
苦し紛れの嘘を吐くと、天馬くんは納得いかないという表情で眉を寄せる。
「それだけじゃねぇだろ」
「え」
「昨日のことだろ?」
核心を突かれ思わず俯く。
手の中のご飯粒が指に張り付く感触すら鮮明に感じられる。
「……やっぱりそうなんだな」
沈黙は肯定を意味する。
認めたくないのに身体は正直だった。
しばらくの沈黙のあと、彼が再び口を開いた。
「昨日さ、“苦手な人にすれ違った”って言ってたよな?あれってどんな奴?」
柔らかい声だけれど逃げることを許さない強さがあった。
目を逸らすことも許されない気がして恐る恐る顔を上げる。
「……昔…よく絡んできた人たちで……」
言葉にするだけで喉の奥がきゅっと締まる感覚
過去の映像がフラッシュバックしそうになるのを堪えながら続ける。
「中学の頃……部活に入ってなくていつも絵ばかり描いてたら…その、不良…グループに目付けられて」
そこまで話した途端
堰を切ったように当時の光景が蘇ってきた。
放課後の教室に響く嘲笑。
投げつけられた消しゴムのカス。
「死ね」「キモい」「ウザい」という言葉。
そして……目の前でグシャグシャにされたスケッチブック。
全てが鮮明すぎるほど脳裏に焼き付いていた。
「……正直に言うと、虐められてた」
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