テラーノベル
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明かりが戻った教室で、私はしばらく動くことができなかった。
目の前にはあおいが立っていて、その顔は紙みたいに白かった。さっきまでそこにいたはずの担任の先生は、どこにもいない。ロッカーの中にあった古いスマホも消えていた。
「……今の、見たよね」
あおいの声はかすれていた。
私は小さくうなずいた。
でも、自分が本当に何を見たのか、もう自信がなかった。
先生はたしかにそこにいた。私たちに近づいてきて、何かを言おうとしていた。なのに、電気が消えたほんの数秒の間に、跡形もなくいなくなってしまった。
そのとき、廊下の方から足音がした。
びくっとして振り向くと、隣のクラスの男子が二人、ふつうに話しながら通り過ぎていくのが見えた。教室の前を通っただけで、こちらには気づいていないようだった。
私は急いでドアの外へ出た。
廊下にはいつもの夕方の空気が流れていて、さっきの出来事だけが切り取られた悪夢みたいだった。
「先生、職員室にいるかも」
私がそう言うと、あおいは迷ったあと、無言でついてきた。
職員室にはまだ何人かの先生が残っていた。
でも、担任の姿は見当たらない。
勇気を出して近くの先生に聞くと、その先生は不思議そうな顔をした。
「え、担任なら今日は会議で午後から外だよ」
私は思わず聞き返した。
「でも、さっき教室に……」
そこまで言って、言葉が止まる。
先生は首をかしげた。
「今日はまだ戻ってないはずだけど」
私はあおいと顔を見合わせた。
さっき、私たちが見た人は誰だったのか。
教室の前に立っていたのは、本当に担任だったのか。
その夜、自宅に帰ってからも胸のざわつきは消えなかった。
机に教科書を広げても、文字がまったく頭に入ってこない。
気づけば私は、またスマホの画面を見つめていた。
新しい通知は来ていなかった。
でも、トーク一覧の一番上に、見覚えのないグループが表示されていた。
3年2組
そんなグループ、私は知らない。
震える指で開くと、参加メンバーの欄には、クラス全員の名前が並んでいた。
そして最後の一人に、真白の名前があった。
次の瞬間、グループにたった一文が送られてきた。
読んだ人から、来て。
コメント
1件
うわ、これは……第9話で一気に不気味さが加速しましたね。担任が一瞬で消えた場面、そして職員室で「今日はまだ戻ってない」と言われたときの、あの背筋の冷える感じ。現実がじわじわと剥がれていくような恐怖があります。最後のグループメッセージ「読んだ人から、来て。」——この一行だけで、読者を物語のさらに奥へ引きずり込む力がある。世界のルールがまだ見えないからこそ、想像が膨らんでぞっとします。次が気になって仕方ないです。