皇太后の来訪から一週間。
今日、五年ぶりに後宮からのお呼ばれを受けた
。おそらく真犯人である卯鈴の処刑と私への謝罪と賠償だろう。
蓮はまだ子供だから処刑などは見せないようにと父上に預けてきた。
後宮の門
長く見ていなかったから大きく感じた。
処刑場
「皇帝陛下と銀家の姫君のおなーりー」
玉座に着き足を組む蓮華と卯鈴を睨む珠奈。
「これより、中級妃卯鈴の処刑を始める。卯鈴最後に言い残す言葉はあるか?」
フッ
「そういえば愉快でしたね。貴方が下箋女をいたぶり罵倒するのは」
芭蕉扇の持ち手を折る珠奈。
「卯鈴、よくもまあ私の全て壊してくれたはね。早く死に兎にでも生まれ変われ、私は獅子に生まれ変わったらお前を食い殺す。」
「刑を執行しろ」
卯鈴の処刑は終わった。
銀家の庭
黒髪と落ち窪んだ眼下の女性が寝巻きでどこふらふらと動いていた。
「珠奈、何をしている?風を引くぞ」
蓮華は珠奈と勘違いして話しかけるがその女性は珠奈ではなく華鈴だった。
「誰だ。」
「私は華 蓮華、皇帝だ。」
華鈴は手を重ねお辞儀した。
「失礼いたしました。」
「珠奈、いやお前は何者だ。」
華鈴の落ち窪んだ眼下が狂気狂う。
「珠奈は私が生んだ女です。」
「珠奈の母親か。」
フッと冷たく笑い
ゆっくりと首を横にふる華鈴
「母親ではありません。あくまで珠奈を生んだ女という立場でございます。私は妓女なので母親には慣れません。」
珠奈の部屋
「珠奈、お前に聞きたいことがある。お前は妓女の元に生まれたのか」
チッ
目付きを悪く光の入って目をする珠奈
「華鈴に会ったんですね。」
トポトポ
お茶を淹れ差し出す珠奈
「華鈴は母ではありません。私を生んだ女であります。花街では妓女は母に慣れませんので」
「ここは花街ではなく銀家だ。珠奈、お前もそれを分かってるだろ。」
「それでも華鈴は「私を母と呼ぶな」と言っておりました。元は花街の妓楼 白陽館《はくようかん》の最高級妓女でした。ですが父と肉体関係を持ったことにより私を孕み出産しました。堕胎剤を使う選択もありましたが華鈴の時の堕胎剤は下手すれば死にますし効果が低かったんです。」
蓮華は差し出されたお茶を一口飲むと珠奈が後宮に初めてきた事を思い出す。
皇太后と先帝の推薦で上級妃の貴妃の位に着いた存在。目付きの悪さと出生の事を理由に位の低い妃と女官に嫌われていた。
珠奈の兄は彼女を庇うことはなかった。
兄もまた珠奈を嫌っていた。
「私は銀家の側室になった女と銀家の現当主の子供なので銀家の当主には慣れません。なれるのは銀家の正統な血筋だけです。」
蓮華が珠奈に近づくと珠奈の背中をすっと人差し指でなぞる。
ビクッと肩を震わせ、嫌な顔をする珠奈。
「珠奈、お前が望むならもう一度お前を貴妃に戻すことが出来るがこれからどうするんだ?」
「私はもう、妃戻るつもりはありません。」
珠奈の声は冷たかった。