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あなたの記憶、売りませんか?

あなたの記憶、売りませんか?

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藤田大地 様

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2023年10月05日

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社会人になって数ヵ月が経った。


憧れていた生活とは程遠い。毎日のように上司に怒られてはため息をつく。今日もつまらないミスをして怒られてきたばかりだ。思い出すだけで胃が痛い。

そんなことを考えながら帰路に着く。



暗くなった住宅街を歩いていると、ふと気になるチラシを見つけた。


『忘れたい記憶、ありませんか?

欲しい記憶、ありませんか?

あなたの記憶買い取ります。

ぜひお立ち寄りください。

記憶商店』


どこからどう見ても怪しい。

記憶を売買するなんて聞いたこともないし、そんな魔法のようなことができるはずもないのだ。

ただ、そんな疑いの気持ちと同時に興味も湧いてくる。


本当に記憶を売れるのだろうか。


もしできるなら嫌な記憶も忘れられて金も稼げて一石二鳥。微かな期待を抱き、少しだけ立ち寄ってみることにした。



店の前に立ち、ゆっくりと扉を開ける。

「いらっしゃいませ。」

中には初老の男性が1人。おそらく店主だろう。


「ご用件はなんでしょうか。」

「えっと、記憶を売りに……。」

「売却をご希望ですね。そちらにお座りください。」


椅子に腰掛け、店内を見回す。

店はきれいに整っていて、昔訪れた駄菓子屋のような安心感がある。


普通の店と違うところといえば、水晶玉のようなものがたくさん並べられていること。

「この水晶玉はなんですか?」

「ああ、それは記憶の結晶ですよ。」

「記憶の結晶?」

店主の話によると、持ち主のいない記憶をこの中に移しているらしい。記憶には形がないから管理が難しいとか。


「早速始めましょう。お名前と年齢、ご職業をお願いします。」

「藤田大地、23歳。会社員です。」

「ありがとうございます。では、どの記憶を売りたいですか?」



いざこうやって聞かれると迷う。

仮に忘れたい記憶をお願いして、やっぱりできません、とか言われたら堪ったもんじゃない。できないと言われてもダメージのない記憶……。

「上司に怒られた記憶……とか?」

「その記憶でよろしいですね?」

「はい。」

「では、目を瞑ってください。」


ゆっくりと目を閉じる。

「いきますよ。」





















「終わりましたよ。」

店主が俺の肩をポンポンと叩く。

「俺、今まで何を……?」

「記憶を売っていただいたのですよ。こちら、代金の500円です。」


意味が分からない。突然気を失ったと思ったらお金を渡されて……。

そもそも記憶を売るとは一体なんだろうか。そんなことができるはずない。


「覚えていらっしゃらないのですか?」

「俺はなんの記憶を売ったんだ。」

「上司に怒られた記憶を。」

こいつは何を言っているのだろうか。上司に怒られたことなど1度もないのに。

「もう帰ります。」

「ありがとうございました。」



逃げるように店から出る。あそこは一体何だったのだろう。

変な水晶玉がたくさんあったし、記憶を売るとか意味の分からないこと言ってたし。

「早く帰ろう。」


店でもらった500円玉を見つめる。貰ってきてしまったか、怪しいお金ではないだろうか。

何か違法な取引で得たお金だったりとか……。

少し不安になり、早足で帰路につく。


とても疲れたが、なぜか足取りは軽かった。

あなたの記憶、売りませんか?

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コメント

18

ユーザー

またまたすごい物語をお書きして〜(´・∀・` )続きが気になって夜も眠れませんよーー

ユーザー

これって何エンドなんだろ? ハッピーエンド…?なのかな?

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