先日、彼女に振られました。
同じ大学の渡辺友香。
付き合って半年。
順風満帆だと思ってた。
思ってたのに!
「冷めちゃった。別れましょ。」
おかしいだろ!半年も付き合ってたのに!
別れた1週間後に高身長イケメンとデートしてるところを目撃してしまった。
ちくしょう、結局世の中顔かよ……。
もう友香のことはキッパリ忘れて新しい彼女作るか~とかおもったんだけどな?
全然忘れられないんだよぉぉぉ!!
本当にいい奴だったんだ。忘れられるわけがない。
どうしようかと悩んでいた帰り道、1つの店を見つけた。
「いらっしゃいませ。」
チラシの謳い文句にのせられてまんまと入ってしまった。
きっとあれは俺のために作られたチラシだったんだ。そうに違いない。
「ご用件はなんでしょうか。」
「記憶を売りに来ました。」
「売却をご希望ですね。そちらにお座りください。」
なんだかソワソワする。
やっと友香のことを忘れて新しい彼女を作れると思ったら楽しみでしょうがない。
「お名前と年齢、ご職業をお願いします。」
「田中正人、20歳。大学生です。」
「ありがとうございます。では、売りたい記憶を教えてください。」
「友香の記憶!」
「具体的には?」
「元カノの友香と過ごした記憶を全部売りたいです!」
「全部ですか?」
「はい、全部です!隅から隅まで。」
「かしこまりました。では、目を瞑ってください。」
目を閉じるとワクワクしてきた。
記憶がなくなるってどんな感じなんだろう。
「いきますよ。」
「終わりました。」
「あ、ありがとうございます……?」
俺は、一体何をしていたのだろう。
「こちら、代金の3万円になります。」
「さ、3万!?」
なんで!?なんで急に3万円を!?
「もらっていいんですか?」
「はい。こちらは田中様のお金になりますので。ご利用いただき、ありがとうございました。」
思わぬ臨時収入にテンションが上がる。このお金で何しよっかな。
新しいゲームを買う?どこか遊びに行くのもいいかもしれない。やりたいことが次々と浮か──
「正人くん!」
途中、見知らぬ女性が話しかけてきた。いや、どこかで見たことあるような気もするけど全く分からない。
「この前は本当にごめんね。私たち、もう一度やり直せないかな。」
「えっと……どちら様ですか?」
「え?私だよ!友香だよ!この前まで正人くんの彼女だった……。」
何を言ってるんだこの人。自慢じゃないが俺は彼女いない歴=年齢だ。俺のことをからかっているのか?
「俺今まで彼女できたことないんですけど。」
「な、何言って……。もしかして、振ったこと怒ってる……?」
どうしてこんなにも執着してくるんだ。
振ったもなにも、そもそも付き合ったことすらないじゃん。
「ねぇ正人くん!」
「いい加減にしてください。本当にあなたのこと知らないんです。これ以上しつこいと警察呼びますよ?」
「正人くん、本当にどうしちゃったの……?」
もしかして、こいつストーカーか?最近は男もされるっていうし……。急いで逃げよう。
「待って、正人くん!」
コメント
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友美との記憶の価値が案外高かった…悪い思い出ばかりじゃなかったということか? でも友美ストーリーだしな…((