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「俺と別れてくれないか」
事後のベッドの中でシンくんは僕にそう言った。
「…理由を聞いても?」
「俺、たぶん“セックス依存症”ってやつだと思うんだ……それもけっこう重度の」
「そういう自覚症状でもあるの?」
「自覚症状っつーか……
仕事中も腹ん中ムズムズソワソワして集中出来ない感じだし、もしそんな所に敵が来たら簡単にやられちまうだろーし、坂本さん達にも迷惑掛けちまうし………」
「……それで?」
「…このままお前と付き合ってたら、治るもんも治らねぇだろうし……
だから、お前とはもうキッパリ別れてこういう事もしないようにすれば元に戻るかなって」
「そっか………
……うん、わかった」
僕の返事を聞いて、シンくんはどこか安堵したような表情を見せた。
「お別れするのは悲しいけれど、僕の事が嫌いになった訳ではないならよかった。ただしこれだけは約束して。
“僕と別れた後誰かと付き合う事になっても、絶対性交渉はしない”って」
「………そりゃあ…わかってるよ」
「約束だよ?」
恥を忍んで正直に白状すると、俺は南雲と別れてから最初の2ヶ月間は気が狂いそうだった。
南雲と付き合っていた頃はほぼ毎日のようにしていた行為を急にやめてしまったからか夜は眠れず、また日中もその事・・・ばかり考えてしまっていた。
棒状の物を見るとつい口に頬張りたくなるし、掃除に使う漂白剤の匂いを嗅ぐだけでムラムラした。
…そしてふと我に返ってそんな状態の自分に気付きゾッとした。
(…やべぇな俺……やっぱ南雲と別れて正解だったわ…)
欲を忘れる為俺はがむしゃらに働いた。
仕事以外は極力部屋に居ないように外出したり、トレーニングに行ったりして一人になる時間を作らないようにした。…でないとすぐにでも悪い一人遊びをしてしまいそうで怖かった。
別れた後も南雲は時々坂本商店へ顔を出した。
しかし南雲から俺に声を掛けてくる事は殆ど無く、来てもすぐに帰って行く事が多かった。
俺に気を遣っているのかもしれないが、少し寂しかった。
そうしてどうにかこうにか耐えている内に半年が経っていた。
依存症の方は3ヶ月目を過ぎたあたりでだいぶ抜けて来たのか、それまで四六時中ピンク色だった脳内は気がつくと次第に落ち着いて来ていた。仕事中もちゃんと、目の前の事に集中出来ている。
「いらっしゃーせー……んお?セバじゃん。どした?」
「よー。
ちょっとコッチに用事あったからついでに寄ってみただけ。…今日はワンオペ?」
「いや、坂本さんは銀行行ってて、ルーは休み」
丁度俺一人で店番している所にセバが来た。
コイツは度々こうやってJCCのある離島から本土へと単発のバイトをしに来たり遊びに来る事があり、「ついで」と言って毎回坂本商店で買い物をして行ってくれる。愛想は無いがいい奴だ。
「……せっかくこっち来たんなら今日この後飲み行かね?」
「おー。
じゃあ終わるまで適当に時間潰して来るわー」
「へーい。んじゃまた後で」
症状が落ち着いて来た今では、もう前みたいに無闇矢鱈と発情もしないし普通に楽しめる筈だ。
たまにはこういう憂さ晴らしもお互い大事だろうと思った俺は、こうしてセバと仕事終わりに飲みに行く約束を取り付けた。
「っかーッ!!ビールうんめー!!」
「…おいオッサン。ちょっと飲み過ぎ」
「誰がオッサンだってぇ?歳そんな変わんねーだろぉがよー…ヒック……
んあ゛ー?なんだコレおめージュースばっか飲みやがってよぉ…酒飲め酒!!俺のビールやるから飲め!!」
(はぁー…だりー……)「おい、もうその辺にしとけよ。そろそろ店出るぞ」
「ああー?もう一軒行くってかぁー?」
「あーそうそう。
もう一軒行くから出るぞー」
「わーったよもー!!しょうがねぇなぁー…ック、」
(……もう二度とコイツとは飲みには行かねー)
「………なんだよ……俺のこと嫌いなのかよおまえ…」
「は?」
「…どーせ俺とセックスできなくなったらいらねーんだろ……ッぐすっ、」
(え?なんか急に泣き出した……)「いや別に嫌いって訳じゃねーけど……っつーかデカい声でそういう話すんなよ…」
「ヒック……別れたとたん話しかけても来なくなったもんなー………セックスできねーなら優しくする必要もねぇもんなー、あーあ!!ばーかあーほ!!」
「…ッはぁー……勘弁してくれよ…」
「……ホラ、真っ直ぐ歩けるかー?」
「ん゛ー…むり……だっこして…」
「……ッはー………」
「うう゛ー……」
「おいどうした?」
「……………トイレいきたい…」
「……はぁー…………
ちょっと待って、コンビニかどっか寄るから」
「………………………あ」
「あ?」
「………もれちゃった」
「は?」
「ん゛ー……ここどこ?」
「店の近くのホテルだよ。
…あークソ、お前酒癖悪すぎなんだよ」
さっきまで居酒屋に居たのがいつの間にか移動していた。…このセバの態度から察するに、酔い潰れた俺をここまで運んで来てくれたようだった。
「ごめん……
俺、変な事したり言ったりしてなかったか?」
「…別に」
……このセバの態度から察するに、どうやら俺は何かをやらかしてしまったようだった。
何とも言えない気まずい空気の中、セバが「もー俺疲れたから寝るわ」と隣のベッドに倒れ込む。するとすぐに規則的な寝息が聞こえてきた。
(…居酒屋の支払いも立て替えてくれてたんだろーな。迷惑掛けた分、多めに出しておくか)
俺は足側に置かれていた鞄から財布を出そうとベッドを出て仰天した。
「…なんで俺、下なんも履いてねーの………」
これはまずい。非常に由々しき事態である。
きっとセバは無かった事にしようとしてくれているんだろうがそうはいかない……。俺はとんでもない事をやってしまった。
「………んっ、」
恐る恐る尻の穴を触って確認する。…使われた形跡けいせきは無いがもしかしたら処理してくれた後なのかもしれないと思い、意を決して約半年振りにソコへ指を挿れてみる。
「……んんっ、あっ♡」
…やばいコレ止まんねぇ………声我慢できね……
‼︎いや馬鹿何してんだ俺、只の確認だってのに……でももうちょっと奥……
「はぁっ……んっ♡」
駄目だって俺!!せっかくここまで我慢して来たっつーのにこれじゃあ……
「はぁ……はぁ………」
「お前ってやっぱソッチ系なの?」
「はうッ!!?」
驚いて隣のベッドに目を向けると、眠っていた筈のセバがこちらをガン見していた。
「いや、これは、その…」
…駄目だ何も思い付かない。
いや寧ろこんな状況で言い訳する方が浅ましいのではないか。ココはもう潔く肯定した方が……
「………気持ち悪いとこ見せてごめん」
「気持ち悪いとは言ってねーだろ。
…続きしねーの?」
「え……
いや、しねーけど………」
「すればいいだろ。俺の事は気にせず」
「……あの、セバ…
俺達もしかしてヤっちまった?」
「………ヤってねーけど、ヤって良いなら俺、お前とヤれるぜ?」
ベッドから起き上がったセバがこちらに近付いて来る。
セバの細身のパンツの股間部分の膨らみに、俺の目が釘付けになる。
ドクドクと鼓動が早まって、無意識に開いた口からはだらしなく涎が垂れて来る。
(駄目だ‼︎これじゃあ約束が……)「はぁっ♡はぁっ♡」
「…なんつー顔してんだよお前」
興奮のあまり目が潤んで視界がぼやける。
俺のすぐ目の前でファスナーが下ろされ、濃い雄の匂いにうっとりする。
「ホラ…お前の好きにしていいぜ」
(駄目、ダメ、だめ……)「はぁっ♡…はぅぅ」
舌を伸ばしかけて、慌ててやめる。…今度は口を開けようとして、急いで閉じる。
ずっと我慢してた。コレを尻に入れるだけで俺は満足出来るのに…コレがどれ程良いモノか知ってるのに……。
(欲しい、ほしい、ほしい、ほしい!!!)「はぁーッ♡はぁーッ♡」
びたり、とセバの猛った陰茎が俺の頬に当たった瞬間、俺の中のなけなしの理性が決壊した。
「あっ♡あっ♡あっ♡んあ゛あ♡」
「…っはァ……くっそエロ…」
「あ゛あ゛!!しょこ……もっとこしゅってぇ♡♡」
「……っふー、……ココ?」
「あン♡しょこッ、ふあぁ♡あぁん♡いくっいっちゃうっ♡」
「ッ!……おい、締めすぎ…ッ!!」
「はぁっ♡らって、きもちっ、らもん…はぁっ♡はあぁっ♡」
やばいこれどうしよ……きもちい…もうなにもかんがえられない………
……はんとしもがまんしたのに…
あ、でもはんとしがまんできたならいっか……いいよな………きっとなおってるし………ちゃんといままでがまんできたんだし……
「…ッ‼︎……ハーッ、ハーッ…
悪ぃ、中に出しちまった……」
「うん♡
せばのせーえきおいひい…♡もっとちょーらい♡」
「……ッお前、なかなかイイ趣味してんな…」
「あっ♡あっ…♡
おなかぐちゅぐちゅしてぅ……きもひぃ♡♡」
「フー…、…そんなに好きなら全部出してやるよ」
「うんっ♡らして、らしてぇ♡
おれのことめちゃめちゃにしてっ♡」
「…チッ、コイツ……」
「おい、もう出ねーって……っ」
「だめ♡まだぬいちゃやだ♡はぁっ、はぁっ…♡♡」
「…底無しかよ……タチ悪いな、ッ!
はーッ……、もう無理。勃たねぇ」
「やだ、やめちゃやだもっと…♡」
「ッはぁ……勘弁してくれよ…」
「お困りのようだね。助けてあげよっか?」
「は!?」「‼︎ひぃッ、」
…性行為の最中というのは注意不足になりがちなものだ。
彼等もずいぶんと夢中になっていたようで、部屋の隅に佇んでいた僕に全く気付いていない様子だった。
「こんばんわ♡ルームサービスです」
「あーあ。約束破っちゃったね、シンくん」
僕が二人に近付くと、二人共慌てて服を着始めた。
「…シンくんはそのまま裸でいてね。
君みたいな動物は服を着る必要無いからね」
「な、なぐも、これはっ、そのっ………むぐッ!!」
「…君みたいな動物には言葉を喋る権利も無いからね?」
右手でシンくんの口を塞ぎ、左手で脚を開かせる。
さっきまで猿みたいに赤くなってた顔は今ではすっかり真っ青になっていた。
「…で、君はどうする?」
「……え?俺?」
「このまま見学してく?
人が人じゃ無くなるところなんてそうそう見られないよ?」
「…いや、帰ります」
「そっか。残念」
僕はそそくさと荷物を纏めて部屋を出て行く男の子に満面の笑みで手を振って見送った後、失意に飲まれたような泣きそうな顔のシンくんの方に視線を戻した。
「若い燕に逃げられちゃったね。
せっかく気持ちよくセックスしてたのにね?」
「…ぅ……ッ」
「シンくんが約束破ったなら、僕も約束破っちゃっていいんだよね?」
左手だけでベルトを外し、スラックスのファスナーを下ろす。
シンくんの口を塞いでいた右手はもう、期待の涎でビチョビチョだった。
「下の口もだらしなければ上の口もだらしないなぁ……
まず最初にどっちに欲しい?」
「……なぐも……おねがい…ゆる「!やだなぁ僕ったら…動物に話し掛けて答えが返って来るはず無いのに……
ねっ!」
「ンお゛ッ!!!
オッ♡オッ♡オ゛ォゥッ♡」
「もう逃がさないよ。
僕専用のペットとして一生飼い殺してあげ、るッ!」
「はオォッ♡オゥッ♡やだぁッ♡オゥッ♡オン゛ッ♡♡
にんげ、んのッ♡ままでッ♡いさせてぇっ♡」
「はぁっ…、汚い声だなぁ、もう!!」
「オ゛ォ゛ッ!!?ホオ゛ッ♡♡ア゛ッ!!
こわれゅ……♡おかひくなゆぅぅ……ぁぅ♡」
俺と南雲は体の相性が良すぎた。
南雲とセックスしていると、本当にいつか自分がただの本能丸出しの動物みたいになってしまうんじゃないかと怖かった。コイツの性器の長さ、太さ、硬さ、形、匂い、全てが俺を狂わせた。それは南雲も同じようで、最初はこちらを気遣いながらしていたセックスが、回数を重ねるごとにどんどん無茶な要求や責め方をしてくるようになっていった。
更に輪をかけて厄介なのが、化け物のような体力と精力だった。お陰で休む暇も与えられず、持続的な快楽を与えられ続ける事によって気が付いたらもう後戻り出来ないくらいに俺の体は調教、開発され尽くしていた。
だから俺は、「これ以上コイツと居たらおかしくなってしまう」と身の危険を感じて別れたのだ。
…なのにこれじゃあ今までの努力が水の泡だ。
「はへッ……へッ…♡ヘッ……♡」
「気絶してる場合じゃないよ。
ほら起きて」
「ン゛ひぃぃ!!?
お゛ン♡お゛ン♡お゛ンッ♡♡」
(……せっかく、はんとしもがまんしたのにっ……♡)
「あはは♡
シンくん、結局なんにも変わんなかったね?」
「オ゛ッオ゛ッオ゛ッオ゛ッ…♡ン゛あ゛あ゛ぁっ♡」
「気持ちいところも弱いところも前のまんまだ。
…もう無駄な努力はやめて、おとなしく僕のペットとして余生を過ごそうね」
「ア゛オ゛おォッ♡♡ヘッ♡ヘッ……」
暴力的な程の快楽に、ゆっくりと俺の自我が失われていく。
その感覚はまるで、底の見えない深い穴へと滑り落ちて行くような不安と絶望感に似ていた。
(…………あれ?…なんでおれこんなきもちいことがまんしてたんだっけ……?)
「?
ふふっ、どうしたの?急に甘えたくなっちゃった?」
南雲の逞しい胴体に脚を絡めて、くぅんくぅんと喉を鳴らしてみせるとより深く中を抉られる。
(きもちい……ぞくぞくする…………もうなにもかんがえたくない………)
「気持ちいいね、シンくん♡
……ずーっとこうしていようね」
(…ずっとこうしていられるんだ…………うれしい……しあわせだなぁおれ………なにをあんなにこわがってたんだろう……)
ふと壁の方を見ると、スタンドライトの光で出来た俺達の影が映っているのが見えた。
二人分の筈のその影は一つの塊みたいにくっついて、歪な獣のように見えた。