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って言うほど注意はないのですが…。
いつもの如く自己満足です!
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ゲタ吉さん諸共全員性格が分かりません。ごめんなさいいつもの事でした。許してネ。
交通事故だった。ヴィランと呼ばれるそいつの乗った車が撥ねた。二人は死に際に僕をほかへ突き飛ばし、僕を守った。ガコン、と一度だけ止まった車は再度エンジンを吹かして、やがて呆然としていた人々に向かって発車した。でもその車はみんなにぶつかる前に止まって、みんなは助かった。ヴィランはヒーローに捕まった。あとから聞いた話、そのヴィランは無個性ってやつだったらしい。なんでも、個性社会に腹が立って衝動的にやったらしい。
その場に咲いた真っ赤な花と轢かれてぐちゃぐちゃになった肉塊を見詰めていれば、ヒーローの人は僕のことを可哀想だと言った。突然訪れたそれに現実味が無かったからじゃない。寧ろ僕は真摯にこの状況を受け止めていたと思う。
「ははは。両親が死んだって言うのに、僕はなんて薄情者なんだろう。」
そうやってひとりごちて、これから入れられるであろう施設への思いを馳せた。
親戚は誰ひとり居ないと聞いていたし、僕自身こうなることは分かっていた。目の前に聳えるはこれからお世話になるであろう孤児院だ。これからは僕の家になるところ。僕と同じような身寄りのない子供たちが大人たちの愛情を受けて育つ場所、と言えば聞こえはいいが、まあ実際全員に愛情を与えるなんて、そんなところは少数だろうと思う。
だって、ぼくがこんな状況じゃあ、ネェ。僕のこの孤児院に対するイメージは最悪。でも、ご飯はくれるから、住むにはいい所だ。食うに困らないからナ。度を過ぎた幼児虐待は少々頂けないケドね。ぼくが__じゃなかったら死んでた…って、あれ?なんだっけ?僕が…ぼくが、なんなんだっけ。思えばそうだよナ、なんで僕は腕を切られてるのにまた生えてくるんだ?ぼくにその個性ってやつはないし、なんで?感じるのは恐怖ではなく、謎の安心感だった。そういえば、と思い出す。孤児院のみんなには呼ばれてたような。バケモノ、化け物。って。
そんなこんなでずっと過ごしてきた、が、無事に一年を乗り切ったころ。その頃には大分身体に傷跡がついていて、その殆どが治りかけだったもんで、身体中に包帯が巻いてあって、ミイラみたいになっていた。もう首から下はほぼ全部包帯だものね。右腕の真新しい傷に器用に包帯を巻き直していると、孤児院の人がやってきた。俺を引き取りたいという人が見付かったんだとサ。酔狂なやつが居たもんだなぁ。と感心していれば、随分な変わり者で、貴方にそっくりなの、と孤児院の人が言った。親戚なんじゃないの?とも。
玄関口につくと、茶髪の少年が外を眺めていた。まさか、此奴が?驚愕はあったけど、同時になんとなく安心するような気もした。くるりとこちらに振り向いた隻眼が目を見開く。大方はこの包帯のことだろうとアタリをつけて、「あの」と話し掛ける。
「なんでぼくを引き取ろうなんて思ったんですか?」
背丈は凡そ同じくらい。傍から見れば子供だが、纏う雰囲気は大人のそれだ。おそらく、この子供が僕の引き取り手。
「…何れ分かるさ。」
再びまた目を見開いてから、閉じて、にこりと笑った。その時は何を聞いても「何れ分かる」としかいわなかった。この子供について行かなければ、と思って、子供の家に住むことにした。
家には同じような姿をした沢山の子供が居た。随分と大所帯だなあ、と思っていれば、僕を見て驚いて、そのうちのひとりが僕の手を引く。それに従うままどこかへついて_恐らくは医務室的なところ。なんでそんなところがあるのかは多分聞いちゃいけない_医務室によくある丸椅子に座らされる。そのままされるがままに上半身の服を脱がされ、包帯を取られる。
「これは、…誰にやられたんだい?」
背中の傷は自分には分からないが、見えない分処置も荒いはず。見るに耐えないほどの傷だと思うが、それを見て僕をここまで運んできたさらさら髪の子供が言う。変なやつ、僕を心配するなんて。
「さあ?背中は自分で見れないから、手当があんまり出来なくて、ぐちゃぐちゃになっているだけですよ。」
「誰にやられたかくらいは分かるだろ?」
変わらずそう問うその子供に、僕は返答をした。
「孤児院の誰かだったのは覚えてるんだけど、…どうせ治るからと忘れてしまったんだ。」
「この左腕の跡は?」
「ああ、そりゃ切られたのに再生したんですよ。可笑しいデショ?」
ふふふ、と思わず笑えば、その子供は「普通だったら笑い事じゃないぞ。」と冷静にそういった。…普通だったら?普通じゃないのは誰?きみたち?それともぼく?ぼくが疑問に思っているのが分かったのか、その子が答えてくれた。
「僕らは幽霊族なんだよ。不死身の幽霊族。」
「不死身の…幽霊族?」
「信じられない?」
言葉を反芻したのが気になったのか、そう聞いてきた。でもぼくは、その言葉に妙に聞き覚えがあり、懐かしさを感じていた。それに、不死身の幽霊族なんて、人じゃないなら腕が再生しても納得だ。
「いいや?道理で死なないわけだ。納得しました」
それにしてもぼく、人間ですら無かったとは。驚きだなあ。左腕の切断跡をするりと人撫でしながら独り言を呟く。知らずのうちにゆるく口角は上がっていた。こんこん、と部屋の扉が叩かれて、返事をする間もなく扉が開く。ふんわりとお菓子のいい匂いがする。
「お菓子が出来たから、一旦ここらで切り上げてこっち来なよ。」
自己紹介もしなきゃでしょ?と朗らかに笑って、此方を見た_多分、正確にはぼくの身体を見た_その子供が一瞬だけ顔を歪める。人の体見て顔歪めるやつがあるか?失礼ダロ。未だにその意味が分からない僕は首を傾げて右腕の傷だけに包帯を巻き直して、元の半袖の服を着た。
「それって、ぼくも食べていいですか?」
「…あぁ、もちろんだよ!みんな君の為に作ったんだから。」
やった、早く行きましょう!とその子供の近くによる。並んでみれば、ぼくと頭二つ分くらい身長が違う。さらさら髪の子供もこの子供と同じくらいの身長だった。背が高いなあ。でも、リビングについてみれば僕と同じくらいのやつと、ぼくより低そうなやつも居たから、幽霊族は総じて身長が低いか、子供のまま身長が止まってしまうのだろう。美味しそうなクッキーを掴んで、ひと口食べてみれば、口の中でほろりと溶けてすごく美味しい。お店に出ていても他と遜色ないくらいのクッキーだ。これはすごい。
「さ、みんな揃ったし、自己紹介しようか。」
自己紹介。そういえば、ぼくはこの子供たちの名前を知らない。苗字もないし、これじゃ少し変かな?
「まずは僕から。と言っても全員鬼太郎だからあれだけど。僕のことは松岡、と呼んでくれればいいよ。よろしくね」
僕の傷の状態を見ていたさらさら髪の子供は松岡と言うらしい。それよりも、全員の名前が鬼太郎とは。幽霊族は全員この名前をつけられる星の下にでも産まれたのだろうか。そういえば僕も鬼太郎だ。
「じゃあ次、僕いいですか?僕も鬼太郎、高山って呼んでね。」
次はお菓子が出来たと呼びに来た子供。高山と言うらしいその子供は特徴をあげるなら、この中でいちばん、色が明るかった。服の色とか、髪の色とか。…ぼくもなにか呼ばれる名前を考えておかなきゃいけないかな?
「次は僕だな。野沢って呼んでくれ。よろしく」
野沢と名乗るこの子供はぼくを孤児院へ迎えに来た子供だ。身長は若干ぼくの方が上。って、こりゃどんぐりの背比べってやつか。身長のことを考えるのはもう辞めておこう。虚しくなるからナ。その後も戸田と名乗る子供や、沢城、それから一期と名乗る第二の野沢、3人が名乗ったが、正直まだあんまり関わってないから顔と名前を覚えられる気がしない。一期ってなんのことなのサ?
「次…僕かい?鬼太郎って言っても紛らわしいから取り敢えず…そうだなあ、ええと、そうだな、田中とでも呼んでくれれば。」
結局なにも思い付かなくて咄嗟にありがちな名前を答える。一部からは「それでいいのか」というような顔をされたが、取り敢えずだからこれでいいと思う。多分あとで後悔するけどネ。