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優しい配慮をした分だけ意地悪を口にした宮本の躰を、橋本はぎゅっと抱きしめる。早く抱かれたい気持ちと一緒に焦った想いを加算して、両腕に力を込めた。
「誘うに決まってるだろ、クソガキが! 愛しているんだぞ、俺の事情なんてクソくらえだ」
静まり返った駐車場に、橋本の怒鳴り声が妙に響き渡った。照れ隠しやら自身の事情を含んだそのセリフを聞いて、宮本はニヤけながら顔を振り向かせる。耳まで赤く染めた恋人の顔が、すぐ傍にあった。
「だったら、さっさと帰りましょう。明日のことはまたあとで考えるとして、とりあえず1秒でも早く陽さんを抱きしめたい」
言いながら橋本の左手に触れる。宮本の指先にお揃いのリングの感触が伝わった瞬間、躰から両腕が外された。
「雅輝、ここから競争な」
「へっ?」
「『俺の車がデコトラだから、陽さんよりも遅くなっちゃいました』なーんていう言いわけは聞きたくないから。無駄に俺を待たせると、なにもせずに寝ることになるかもしれないぞ!」
呆気にとられる宮本を尻目に、橋本は素早くハイヤーに乗り込み、エンジンをかけた。宮本の目の前から黒塗りのハイヤーが消える前に、慌ててデコトラの運転席のドアに手をかける。自分がデコトラに乗り込む前に、さっさと発車させた橋本を恨まずにはいられない。
「陽さんってばハイヤーが身軽だからって、このタイミングで、ここぞとばかりにバトルを持ち出すとか、マジで鬼畜なんですけど……」
宮本は半泣きしながらも、いつも以上にデコトラを飛ばした。そのおかげで橋本をあまり待たせることなく、行為に及ぶことができた。これにより宮本の運転スキルが、ぐんとあがった瞬間になったのだった。
愛でたし愛でたし!