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宮本は無言のままティッシュを数枚引き抜き、汚れている両手を拭う。その間に橋本も同じように下半身の処理をし、身支度を綺麗に整えた。
「雅輝悪いな。気を遣わせて……」
「へっ?」
「ハイヤーでしないって言ってる俺の事情を尊重して、こんな形でシたんだろ?」
「はぁまあ、そんな感じですけど。それでも結局ハイヤーでいたしちゃったことには、変わりないと思います」
「俺からキスして、雅輝を焚きつけたんだから、気にすることなかったのにな」
橋本はティッシュを握りしめる宮本の手からそれを奪って、車内にあるゴミ箱に捨てる。
「気にするに決まってるでしょ。このあと俺たちは、別々に帰るんだし。家じゃないんだから、きちんとナカの処理ができない状態の陽さんのことを考えたら、こうなることは必然だった」
「雅輝……」
「陽さんとしては、俺がナカでイってほしかったんだろうけど、自分だけ気持ちよくなることは!」
言い終えないうちに、橋本が宮本に抱きついた。
「それでも俺は、おまえにめちゃくちゃにされたかったんだ。愛してるから」
橋本が耳元で囁いた愛の告白に、宮本の躰がふたたび熱を帯びる。
「陽さん、煽らないでくださいよ」
「煽りたくもなるって。俺と一緒じゃなきゃ走らないなんて、雅輝が言うとは思わなかったんだ」
宮本は橋本の躰を、強く抱きしめ返した。他の部分に触れてしまうと場所をわきまえずに、手を出してしまいそうになったから。
「俺としては、当たり前のことを言っただけなのに」
「しかも俺に隠し事をしてまで、ここに通うなんて。妬いてほしかったのか?」
「そんなことないですよ、本当に……」
橋本の耳元で囁かれた言葉は、宮本らしくない感じのものだった。焦りや困ったふうを感じさせるそれに、橋本は微苦笑しながら口を開く。
「一応、浮気の心配くらいしたんだけどな。もちろん、おまえが襲われるという前提で」
「は?」
予想をしていなかったセリフに宮本は驚き、強く抱きしめていた腕の力を抜いて、橋本の顔をまじまじと見つめる。
「雅輝の性格を考えたら、どう考えても襲われるほうのリスクが高い。だって車のことを真剣に考えてるおまえの顔やインプを走らせてる姿は、なかなかの男前なんだぞ!」
少しだけ上目遣いで、宮本のことを熱く語った橋本。普段は語られることのない言葉の連続に、宮本は何度も瞬きを繰り返す。
(陽さんってばどうしてこのタイミングで、こんなに俺のことを褒めたたえるのやら)