テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
87
1
糖分
111
警察官は、証拠を信じるべきだ。
目の前の人間がどれだけ無実を訴えようと、感情に流されてはいけない。
それが緑の信じる正義だった。
*
「被疑者は神宮寺黄。昨夜の殺人事件の重要参考人だ」
上司から渡された資料に、緑は目を落とした。
昨夜、住宅街で男性の遺体が発見された。
防犯カメラには、事件現場付近を歩く黄と思わしき姿が映っていた。さらに、現場に残されていた証拠品からも、黄につながる情報が見つかったという。
被害者と黄の間に、面識はない。
それでも、状況証拠は黄を指し示していた。
「話を聞いてこい」
「わかりました。署に連れてくる令状は、?」
「もう出ている。」
緑は迷わなかった。
証拠があるのなら、確かめるのが警察の仕事だ。
それが正しいと、信じていた。
*
黄色は、駅前の小さな喫茶店にいた。
「黄さん、ですね。警察です。少しお話を伺いたいのですが」
突然声をかけられ、黄は目を丸くした。
「……え? 僕、ですか?」
「昨夜の行動について確認したいことがあります」
「昨夜……?」
黄は困ったように眉を下げた。
「すみません、なんのことかわからないのですが……?」
その声はか細く、今にも消えてしまいそうだった。
それでも、黄は緑の目をまっすぐに見つめていた。
「署で詳しくお話ししましょう」
「……はい」
黄は素直に立ち上がった。
名残惜しそうな瞳で自分の店を見て、緑に連れられ立ち去った。
*
「昨夜の午後九時ごろ、どこにいましたか」
「家にいました」
「証明できますか」
「……一人だったので、難しいです」
黄は膝の上でギュッと両手を握りしめた。
「でも、本当に家にいたんです。僕、この方も知りません…!」
「現場付近の防犯カメラに、あなたによく似た人物が映っています」
「それは……わかりません。でも、違います」
「現場に残された証拠についても説明が必要です」
黄の顔から、少しずつ血の気が引いていく。
「待ってください。僕、何も知らないんです。どうして……」
声が震えていた。
それでも、黄は首を横に振った。
「それはわからないことです。」
緑は資料を閉じた。
証拠はある。本人には明確なアリバイがなく、現場付近にいた可能性も高い。
黄の言葉を信じるだけの理由は、今の緑にはなかった。
*
「黄 さん。あなたを殺人の容疑で逮捕します」
黄は、呆然と緑を見つめた。
「……どうして、ですか」
「証拠に基づいた判断です」
「僕、本当に知らないんです。亡くなった方のことも、事件のことも……本当に何も」
黄の目に涙が浮かんだ。
それでも、声を荒らげることはなかった。
「お願いです。ちゃんと調べてください。僕じゃないって、わかるはずですから」
緑は黄に手錠をかけた。
冷たい金属音が、静かな部屋に冷酷に響く。
黄は抵抗しなかった。
ただ、うつむいたまま、小さくつぶやいた。
「……本当に、僕じゃないです。」
緑は、その言葉に返事をしなかった。
捜査が進めば、真実は明らかになる。
黄を連れて歩き出す。
背後で、黄がもう一度だけ口を開いた。
「緑さん」
「何ですか」
緑は振り返った。
黄は涙をこらえながら、それ以上のことは何も言わなかった。
2人の影は暗く冷たい部屋に消えていった。
コメント
1件
読了〜!!🌸 第1話からもう引き込まれたよ…!「証拠を信じる」緑さんの正義感と、震える声で無実を訴える黄さんの対比が切なすぎる😭 特に最後の「緑さん」って呼びかけ、なにか隠された意味がありそうで続きが気になりすぎる…! 2人の名前が色なのもオシャレでエモい♡ 真実がどう転ぶのか、めっちゃ応援しながら待ってます✨