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「あぁ・・・やっぱそうだよな」
樹はその言葉に納得したように呟く。
「うん・・だから・・」
「やっぱ透子なんだよね」
「・・え?」
「そうやってオレが気付かない所まで気付いてくれるのが透子なんだよ。透子に初めて出会ったあの時みたいに、オレが見つけられないパズルのピースを、そうやって一つずつ埋めていってくれるんだよ」
「パズルのピース・・?」
「そう。オレの心のパズルのピース。ずっとグチャグチャだったんだよね。透子に出会うまでは。だけどさ、透子と出会ったあの日から、一つずつそのピースが埋まっていったんだ。透子のくれた言葉とか存在とかさ、オレ一人では埋められなかったピースをどんどん埋めてくれんだよね」
「また大袈裟だよ、樹は」
「いや、ホントに。オレの人生のパズルはさ、透子がいて完成するんだよ。透子の言葉に、オレが探していた答えとかさ、気づかされてることとかが一つ一つ探していたピースみたいにピッタリその心のパズルにハマっていく」
それなら自分にとっての樹だってそうだ。
ずっと昔から樹と出会っていたはずなのに、私は知らないままで。
だけど、樹との今の時間に辿り着く過程が、運命かのように私のピースもハマっていく。
きっとそれは樹が私に出会ってくれて、作り始めてくれたピース。
樹と同じ時間を過ごしていくことで、私の人生のパズルもきっと樹が完成させてくれる。
「だからオレは透子がいなきゃダメなんだよ。オレの人生のパズルは透子がいないと完成しない」
「それなら・・私だってそうだよ。もう樹と出会ってから、樹がいないと私の人生のパズルだって完成出来ない」
ホントはこんなにもお互いが必要で。
お互いじゃなきゃダメだってわかってるのに。
だけど、現実はそれを許してくれない。
だから、お互いのパズルはここできっと未完成。
一緒にいられない限り、樹と一緒の人生のパズルは永遠に完成することは出来ない。
お互いまた新しい人生のパズルを最初から完成させていくしかない。
「樹と二人でお互いの人生のパズル完成させたかったな」
思わず出た本音。
だけど叶わない願い。
「透子はきっとそういうだろうと思った」
「えっ?」
「きっと今の透子はオレが何を言っても、多分もうこれ以上一緒に完成させてくれないんだろうなって」
正直樹のその言葉に何も答えられなかった。
本当は離れたくないし、別れたくない。
だけど、いろんなことを、周りを犠牲にしてでも今までのように一緒にいられる勇気がない自分がいるのも確かだ。
どうしてただ好きなだけじゃダメなんだろう。
どうしてこんなに好きでも一緒にいられないんだろう。
どうして私は何もかも捨てて樹を選べないんだろう。
「こんなに好きなのに・・なんでうまくいかないんだろうね・・」
別れたくないのに、結局私はそんな言葉しか言えなくて。
お互い好きな気持ちは伝わり合うのに、だけど、お互いがこれ以上今の関係を続けようとは言わない。
私は樹の状況がわかっていて、それを一番優先に考えてしまう。
そして、樹はきっとそんな私の気持ちを優先しようとしている。
この状況が変わらない限りは、きっとずっと平行線のままだ。
「だからさ。一旦、そのピース、透子が持ったままでいてくれない?」
「どういうこと・・?」
「きっと今の状況が変わらない限り、透子はオレとの人生のパズルこれ以上もう完成させようとしないでしょ?」
「それは・・・」
「だから。オレがまた透子の前に一人前になって戻って来たら、またピース完成させてよ」
「でも・・・もう樹の相手は私じゃないから・・・」
「・・・それを決めるのはオレ。誰とこれから一緒にいて、誰と結婚して、どうするかはオレが決める」
自分で樹にそう言わせたくせに、樹のその言葉は初めて自分じゃない誰かを想像してしまえて、胸がギュッと苦しくなる。
本当は想像なんてしたくない。
別に樹と将来を本気で思い描いていたワケではないけど・・・。
だけど何事もなく、今のままずっと一緒にいられたとしたのなら。
もしかしたらそんな将来もあったかもしれない。
自分以外の人を愛しく思う姿なんて、ホントは想像すらしたくないけど。
だけど樹の決められた人生のレール上にいるのは、私じゃない。
私は樹を幸せにすることは出来ない。