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「はい。今の言葉に、何一つ嘘偽りはありません」
「そうか……」
次に、バルトロメウスは大臣たちに視線を向けて冷笑した 。
「だそうだが?私のせいにするとは、怖い物知らずだな。お前たちは、前々からクラウスが王太子にふさわしくないとほざいていたそうじゃないか」
大臣たちは首を横に振り、必死に言い訳をする。
「ご、誤解でございます陛下!わたくし共はそんなことを言ったことなど……」
「この者たちを含め、証言してくれた不特定多数の使用人たちが嘘をついていると申すのか?」
大臣たちは汗をだらだらと流し、押し黙った。
そんな中、取り巻きの一人が口を開いた。
「……ま、マルティス殿は、二十年以上前から王太子殿下の陰口を申しておりました」
突然の裏切りに、マルティスはぎょっとした。
バルトロメウスは興味深そうに笑む。
「ほう……?」
「こ、此度の件では、侍女に金を握らせて言伝を頼んでおりました……」
「なるほど……?」
マルティスは顔を真っ赤にして怒鳴った。
「貴様……!裏切りおって……!」
本性がやっと現れ、マルティスははっとした。
「ち、違うのです陛下!」
「これだけ証言が揃っているというのに、何が違うのだ」
バルトロメウスはマルティスを滑稽そうに眺め、面白そうに笑った。
かと思うと、背筋がぞくりとするほどの無表情を浮かべる。
無慈悲で冷酷な目だ。
「連れて行け」
バルトロメウスはにべもなかった。
すぐに兵が数人現れ、大臣たちを捕まえる。
「お、お待ちください陛下!ご説明させてください!」
マルティスは暴れ、必死にバルトロメウスに訴えるが、もうバルトロメウスは聞く耳を持たなかった。
マルティスはぎりぎりと歯ぎしりをした。
顔を怒りで歪ませ、エーファの方を向く。
「この小娘め!貴様さえいなければ……!」
マルティスがそう叫んだ途端、クラウスはマルティスを睨んだ。
彼女を侮辱するのは絶対に許さない。
彼女を侮辱する者に、生きる資格などない。
クラウスは腸が煮えくり返りそうだった。
エーファは僅かに瞠目すると、驚くほど穏やかな笑みを浮かべた。
そして魔法で大臣たちの腕をきつく縛った。
「ぐっ……」
大臣たちは痛みで顔をしかめ、もう逃げ場はないと悟ってうなだれた。
大臣たちが連行されていき、室内には、バルトロメウス、クラウス、エーファだけになる。
バルトロメウスは打って変わってふたりに朗らかに笑んだ。
「ふたりとも、ご苦労だった。今は一旦下がりなさい。落ち着いたらまた呼び出す」
バルトロメウスの言葉に、エーファも微笑む。
「ありがとうございます、陛下。では、失礼いたします」
エーファは一礼し、後ろへ下がった。
クラウスも下がろうとした時。
「クラウス」
「はい」
バルトロメウスは哀しそうな笑みを浮かべる。
「すまなかった」
バルトロメウスの目は、慈愛に満ちていた。
昔からずっと、クラウスはこの目に見守られていた。
バルトロメウスは、クラウスを心から愛しているのだ。
それはクラウスも幼い頃からわかっており、周知の事実である。
父がクラウスを疎んだり見捨てたりするわけがなかったのだ。
クラウスは首を横に振る。
「いえ、父上に非はございません」
そうして、クラウスとエーファは退室し、 廊下に出た。
クラウスは、中での出来事は一瞬だったように感じた。
完全に扉を閉めると、エーファがクラウスににかっと笑った。
「ね?大丈夫だったでしょ?」
まるで花のような笑顔。
クラウスをいつも励まし、癒やす笑顔だ。
クラウスは、この笑顔を見ると、何でもできそうな気がするのだ。
「エーファ」
クラウスは初めて彼女の名を呼んだ。
エーファは愛らしく小首を傾げる。
クラウスは優しい笑みを浮かべた。
「ありがとう」
命を賭して助けてくれて、事態を迅速に収拾させてくれて。
……俺は、いつも彼女に救われてばかりだ。
クラウスは言葉に尽くせないほど彼女に感謝していた。
同時に、初めて会った時から抱いていた感情がさらに募った。
エーファは目を見開き、ふわりと笑った。
「当然のことをしたまでです」
そして、ふたりは笑い合った。
と、クラウスは聞きそびれていたことを思い出した。
「……ところで、君は一体何者なんだ」
あんなに広範囲に魔法を使ったり、高難易度の技を使ったり、只者ではないことは明らかだ。
エーファは驚いたような顔をする。
「そう言えば、言っていませんでしたね。失礼しました」
するとエーファはにっこりと笑んで、胸に手を当て、恭しく一礼した。
「私は、英雄アグネスが末裔、エーファと申します。どうぞお見知り置きを」
エーファはそう言うと、一礼から直って笑みを深めた。
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