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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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あんな状態では絶対に眠れっこない!と思っていたのに、気が付いたらいつの間にか寝落ち出来ていたことに、日和美ひなみは自分自身驚いた。

きっと初めての仕事で心身ともに疲れ切っていたことが原因だろう。


加えて――。


意外にも立神たつがみ信武しのぶという、まるで俺様強引ドSが服を着て歩いているような男が、日和美を部屋に連れ込む前約束した通り、本当に添い寝のみで許してくれたことが大きい。


絶対に貞操の危機だと思っていたのに。


悔しいけれど、信武が言ったように人肌の温もりに包まれることは案外心地よくて。

緊張と安らぎの間を右に左に揺れていたら、疲労感も後押ししていつの間にか意識を手放してしまっていた日和美だ。


とはいえ――。


「苦、し……っ」


何とも言えない胸の圧迫感に、 『西遊記』の主人公・斉天大聖せいてんたいせい孫悟空そんごくうよろしく大岩におしつぶわれる夢を見て、半ばうなされるようにして目を覚ました日和美は、ガッツリしっかり信武に胸を鷲掴わしづかみにされていて、瞳を見開く羽目になった。


きっちり閉め切れていなかったのだろう。

カーテンの隙間から細く伸びるように差し込んできた朝の光に照らされて、自分の置かれた状況が少しずつ見えてきて。



「ふっ――」

(ギャァァァァ!!)


それと同時、一気に眠気が吹っ飛んで、思いっきり色気のない悲鳴を上げそうになった日和美だったけれど。

ギュッと両手で自分の口を押さえて何とかそれは回避した。


もしここで大声を上げて信武を起こしでもしたら、もっといやらしく胸を揉みしだかれそうな気がしたからだ。


膨らみの上の大きくて無骨な、如何にも男性と言った手のひらの感触に泣きそうになりながら、そろそろと身体の向きを変えて胸に乗っかった信武の手を他所へズラそうと頑張ったのだけれど。


「――あ、んっ」


生まれて初めて異性の手が自分の胸に触れている!と意識し過ぎたのが悪かったのか、信武の手のひらの下、乳首が勝手に固くしこってしまった。


もちろん、日和美だって健康な成人女性。人並みに性欲だってある。


今まではたまたま彼氏が出来てもそういう関係にまでは至らなかっただけで、別にエッチなことをしたくなかったわけじゃない。


恥ずかしいけれど萌風もふもふ先生の作品を読んで身体が熱くなって……ひとり自分を慰めたことだって数えきれない。

怖くて下の方にはあまり触れたことがない処女の日和美が、自慰をするときにもっぱら触れるのが小ぶりだけど形の良い胸で。

今、ツンと天を向いて存在を主張しまくっているが、目下のところ日和美が一番感じるポイントなのだ。


自分の指で慰めても優しくこねるだけでイケてしまう胸の先端を、自分ではない異性の手に包まれていて感じるなと言う方が無理な話ではないか。


ほんのちょっと身体を動かしただけなのに、乳首からビリッと電気が走るみたいな快感に全身を侵されて、日和美は懸命に口を押さえながらその感覚に耐える。


(……もぉ、ヤ、ぁッ……、んっ。……いっそのこ、とガバッと飛び起きて、現、状……を打破っ、した方がい、ぃんじゃない、のっ?)


頭の中で考えている思考ですら、敏感になり過ぎた身体のせいで途切れ途切れ。


息も絶え絶えな日和美は、トロリと下着を濡らす状況に涙目になった。


全くの一人ならば濡れた下着を取り換えるのだって問題ないはずだ。

でも、今ここには信武がいるわけで――。


朝っぱらからパンツを履き替えたことに気付かれたりしたら、何を言われるか分かったもんじゃない。


不破ふわ同衾どうきんしてしまった時ですらこんなことにはならなかったのに。


(全部全部胸に手なんて置いている信武さんのせいだ!)


そう思って意識すれば、お尻の辺りにが当たっている気もするし。


それが、男性にはどうしようもない朝の生理現象だと頭では理解できていても、身体が勝手に良からぬことを考えてしまう。


背後の男とを致す気がない身としては、本当に最悪な状況だ。


(うー。絶対絶対、三、二、一で飛、び起き、……る!)


日和美がそう決心をして心の中で三、二……とカウントダウンを開始したと同時。


信武が「んっ」と小さく吐息を漏らして日和美の胸に添えた手をムニムニと動かした。


きっとそれは無意識の行動なのだろうけれど、やられた日和美としては故意かそうでないかなんて関係なくて。


「ひ、あぁっ……!」


ビクッと身体を跳ねさせてあろうことか信武の腕の中。

朝っぱらからかされてしまった。


びくびくと小刻みに震える身体を、自分ではどうすることも出来なくて、ただただ快感の波が通り過ぎるのを待つしかない。


(お願い、気付かないでっ)


もうこうなったらそれをひたすら願うしかない日和美だったのだけれど――。


「……日和美?」


神様はどうあったって日和美に意地悪みたいだ。


声と同時、スリリ……ッと今度こそ明確な意思を持って胸の昂りを指の腹で転がされた日和美は、痛いくらい敏感になり過ぎたそこへの刺激に、恥ずかしいくらい身体を跳ねさせた。


(ダメ、ダメ! これ、絶対マズイやつ!)


涙目になりながら身体を縮こまらせて、日和美は懸命に胸に伸びたままの信武の手を引き剥がして。


「ごめ、なさっ」


勝手に信武の手で気持ちよくなってしまったことに罪悪感を覚えまくりの日和美だ。


恥ずかしくて信武の方を見られない。


「――な、んで」


「――え?」


「何で日和美が謝んだよ。わりいのは勝手にお前の身体に触れてた俺だろーが」


言うなり後ろからギュウッと抱きすくめられた日和美は、お尻に当たる固い感触にドキドキしながら緊張でカチンコチンになる。


「あ、あのっ……」


「あんま動くな。今ちょっとがある」


どこか不貞腐ふてくされたように言いながら、それでも信武しのぶ日和美ひなみを気遣うように心底優しい声音で「あと……泣かなくていい。そう言うんは基本不可抗力だろ? 気にするこたぁーねぇよ」と腕に力を込めてくる。


不破ふわとは口調が全然違うし、信武の腕の中にいるのは明確なはずなのに。まるで不破に抱き締められているような、そんな錯覚を覚えさせられて驚かされた日和美だ。


それに――。


こんな状況になったのだから、信武は絶対強引に日和美のことを手籠てごめにしようとするに違いないと思っていた。


なのに固く張りつめた下腹部を日和美でどうこうしようという気はさらさらないのだと意思表示するみたいに、信武が自分の現状を〝さわり〟とまで言ってのけるから。


日和美はそんな信武に心臓がうるさいぐらいドキドキしていることに気付かされてプチパニックにおちいる。


(何これ何これ何これ……!)


日和美の知る信武は、不破ふわと違ってもっともっと強引で、自分勝手な男のはずなのに。


(何で襲ってこないの⁉︎)


別にそうして欲しいわけではないのに心裏腹なことまで思ってしまう始末。



「なぁ日和美。お前さ、俺のこと強姦魔か何かだと思ってんのかも知んねぇけど……いくらお前が俺のすぐそばでトロットロに感じちまってるとしても。俺、自分テメェに気のねぇ女をなし崩し的に抱くような趣味はねぇからな? 二人で気持ちいいことすんのはお前が俺を好きになってからだ。覚えとけ」


だからとりあえず安心しろ、と言外に含ませる信武に、日和美は心を見透かされた気持ちになって内心オロオロする。


「俺はお前が思ってる以上に欲張りなんだよ。いずれ心も身体もキッチリ捧げてもらうからな? そのつもりでいろよ?」


言ってククッと楽しげに笑う信武に、日和美はそう遠くない未来、自分は彼に完全に絡め取られてしまう気がしてゾクリと身体を震わせた。



「あ、あの、信武さんっ。も、分かったので……その……、そろそろ離して頂けませんか?」


それを誤魔化すみたいに自分に回された腕にそっと触れたら、「――ああ、そうだな。お前抱き心地いいし……くっそ名残なごり惜しいけど……確かにそろそろ起きねぇと遅刻しちまうな」と案外すんなり腕をほどいてくれて。


強引なのかと思えば、煮え切らない日和美の覚悟きもちを尊重するみたいにスッと引く。


そんな信武の意外な一面に触れて、日和美は彼のことを意識せずにはいられなくなっている自分に気が付いた。


(二人は全然違うと思ってたけど……そんなことないのかも知れない。――だって私、不破さんは信武さんの中にちゃんといるって気がしてるんだもの)


それと同時、認めたくはないけれどそう思わずにはいられなかった。

溺愛もふもふ甘恋同居〜記憶喪失な彼のナイショゴト〜

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