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今日は千愛が楽しみにしていた、駐車場でのバーベキュー。
庭があるわけでもない、似たような建売住宅が並んでいる家でバーベキューなんてすれば、お隣から
“洗濯物にニオイがつく”
とか苦情が来るだろうけど、お隣の中西家と合同でやるから大丈夫。
夫は、朝からパーキングに車を停めに行ったあと、一度だけ使ったことのあるバーベキュー道具をいそいそと用意している。
「おはようございます。お買い物、お任せしていいってことでお願いしましたけど、お手伝いありますか?お野菜とか……」
夫が何度も出入りするから、玄関ドアはもちろん、家の中の全てのドアが開いており、駐車場から直美さんの声が聞こえた。
「おはようございます。手伝いは、特に大丈夫ですよ。野菜切るだけなんで」
夫の言葉に
洗って切るのは私だけど?
と思いながら、洗ったピーマンを切る。
始まる前から憂鬱なバーベキューって、どうなの?
バーベキュー自体はいいのよ。
千愛の夏休み最初の楽しいイベントだし、私も外で食べて飲むなんていう非日常を味わえることは楽しみ。
買い物だって、私が重い思いをしたわけでもない。
バーベキューに関しては、夫が買い物してきたから。
「そこなのよ…」
思わず声に出たわ……と一人で苦笑しながら、人参を洗う。
普段はキッチンに立たない夫が
“買い物から全て自分で何から何までやる人”
を今日だけ演じるというか、他から見ればそう見えることにため息が出るのよ。
「千愛、ママはこのお野菜持つから、千愛はこのウインナーとコーンのトレイを運んでくれる?」
「いいよーもう食べる?」
「まだじゃない?パパの準備がどこまで出来てるかな?」
私は千愛の後ろを歩いて駐車場に出てみると
「パパ……一度着替えたら?」
と、思わず言った。
だって、Tシャツの元の色がわからないくらい汗だくなんだもの。
「今、俺ここから離れられないから、Tシャツとタオル持ってきて」
夫は、私を見ることなくそう言ってから
「千愛は自分の好きなものを運んできたのか?」
と笑った。
もやっとしたまま、Tシャツとタオルを玄関に置いて
「パパ、ここに着替え置いたから。お肉はもう冷蔵庫から出していい?」
と聞いてみる。
が……聞こえたのは
「中西さん、おはようございます。どうぞ、座って」
というご機嫌な夫の声だ。
「おはようございます。飲み物、いろいろあるんでどうぞ」
大量の紙コップと紙皿などを用意して来た直美さんと、重そうな大きいクーラーボックスをゆっくりと地面に降ろすご主人が見える。
「もう網、熱そう……亜優、この周りでふざけたらあかんよ。気を付けてね」
「千愛もな」
「「はーい」」
「まあ、子どもだけでなく、中西さんもみんな座っていてくれたら、俺が全部やるので。ママ、肉は?もう網の準備出来てるから、早く持って来て」
さっき私が聞いたのよ、それ。
更にもやっとしながら、私は冷蔵庫のお肉を取りに行った。
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