「…死ね。」
力強く閉められた扉に向かって低く吐き捨てる。当然、あの女が戻ってくることはなく、空しさだけが残った。
あんな母親から生まれたのかと思うと気持ち悪くて吐き気がしてくる。
「実の可愛げない娘よりも、自分に都合のいいことを言ってくれる男の方が大事なわけだ。」
自嘲気味に呟くと、二階のパパがいる部屋に視線だけ向ける。
あれだけママが奇声を発してたから、聞こえているはずなのに、出てくる気配もない。
現実からただひたすら逃げている情けない父親。
どうして離婚しないのか、というと答えは簡単だ。
母親の方は、働いていない。その為、独りになったら生活ができるお金がないから。
父親は、外面だけはいいので、離婚したら会社の人達に噂されるのが嫌なのだろう。
それぞれが自分のことしか考えていない、勝手な人達。
これが私の家族。どんなに頑張っても変えられない現実。
「ま、もうどうでもいいけどね。」
お金がたまったら、こんな家すぐに出ていくつもりだ。
あと少しの辛抱――
そう思いながら、私はこの空っぽの家をあとにした。
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