キャプション読んでね!
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(うぇ”…最悪だ)
とある日の世界会議inイタリア・ヴェネツィアでの出来事に、俺は落胆している。
通常、会議に参加する者には各々が希望する飲み物を貰う事が出来る。アメリカだけは持参だが。
俺は勿論紅茶を希望したが、残念な事に毒入り紅茶だ。
紅茶そのものは中々の上等品が使われていると言うのに、毒入と分かれば一気に美味しく感じなくなる。
今日俺の紅茶を淹れたのは誰だったか。
飲み物を淹れる者は、日によって違う。
開催国が手配した者が淹れる時もあるし、同行した部下が淹れる時、自分で淹れる時もある。
今回はと言うと―――
(ちっ…あの部下め…折角のティータイムを台無しにしやがって…)
部下が仕込んだか。
中々仕事の出来るやつだが、こんなことをする様な人物を、国の重要役職に着けておく訳には行かない。
少し惜しいが、後々解雇しなくては。
しかし、人間は何が楽しくて飲食物に毒を仕込むのか。
毒なんてもの、このご時世簡単に手に入る品物でもないのに。そうまでして俺を苦しませたいのか。
でもまぁ、仕込んだのが俺だったのは悲運とやら。
飲食物に毒を仕込まれるなんてこと、昔から嫌という程経験してきた。お陰で、毒への耐性は国体の中でもトップクラスだ。
残念だが、この程度の毒じゃビクともしない。労力の無駄だったなと、後で嘲笑ってやろう。
しかし困った。毒入りと分かれば、もう紅茶を飲み進められない。
コップに毒を塗るタイプだったら、変えるなりなんなりして飲み進められたのに、今回は紅茶そのものに毒を入れてある。
つまり、いくら容器を変えても、何度淹れ直しても毒入りの紅茶しか喉を通らない。
本当に俺のティータイムを返して欲しい。
「―――イギリス、どうした?随分静かだが…」
「え?ああ悪い、紅茶が美味くて」
本当に、紅茶そのものは美味しいのに。毒入りなのが悔やまれる。
この味の紅茶なら、俺が好んで飲みもする所の紅茶だ。本当ならもう一度淹れて飲みたいのに。出来ないなんて。
別に致死量より少し多くくらいの量までなら耐えられるが、飲まない方がいいに越したことはない。
俺は毒への耐性が強い方ってだけで、無敵じゃない。耐性が比較的弱い毒だってあるし、致死量×2にもなる量入れられれば流石に苦しむし。
だが、こんなこと余り皆にバレたくは無い。
俺たち国体達がつく役職・立場は国の重要機関。そこにつく者が暗殺されかけたと知られれば、国際問題になってしまう。
こんな少量の毒でそんな大事にはしたくないし、俺だけで対処出来る。
それに今までだって隠し通してきたし、今回も行けるだろう。
「本当に坊ちゃんって紅茶好きだよね」
「当たり前だろ、紅茶は英国紳士の嗜みだからな!それに、今回の紅茶は俺の中でも上位に入るくらいの上等品だ」
「ヴェ〜、そんなにいい紅茶なんだ〜なんか、俺も飲みたくなっちゃった」
「え?」
今イタリアはなんと言った。
聞き逃せない事を言ったぞ。駄目だ、俺以外の奴に飲ませる訳にはいかない。
俺だけが毒を飲んだなら小さい問題だ。でも、他の奴らも飲んだら本当に国際問題になる。余計な仕事は増やしたくない。
絶対に、俺以外の奴が口をつけてはダメだ。
「確かに、イギリスさんが上等品、という程の紅茶って気になりますね、私もたまにはお茶以外のものを飲んでもいいかもです」
「ヴェ、なら一緒に紅茶お願いしに行こーよ!」
「ええ、いいですよ」
「なっ…だ、駄目!駄目だ!」
「え?」
何でよりによって毒への耐性が少ないこの2カ国が飲みたがる。勘弁してくれ。
こうなったら何がなんでも飲ませちゃ駄目だ。
周りになんと思われてもいいから、何とか諦めさせたい。
「なんだいイギリス、いくらその紅茶が好きだからって独り占めは良くないんだぞ!」
「い、いや違っ…俺のオススメの紅茶を飲みたいって言ってもらうのは、嬉しいけど…その、」
「イギリスさん…私達のような者に飲まれるのは嫌でしょうか…」
「だから違っ…あの、…〜〜〜〜っ、毒入ってるから飲んだら駄目なんだよ!……ぁ」
「……毒?」
ああ、やはり今日は最悪だ―――
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END
コメント
5件
ふへ…良いですね…毒耐性あるの好きです…続きがあるのでしょうか…