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声と教室の間で
登場人物
入野自由:高校生声優。天才肌だが、自覚が足りない。
鈴村健一:自由の先輩声優。明るくおちゃめな性格で、自由の背中を押す存在。
シーン:アフレコスタジオにて
(アフレコ現場。自由がマイク前で台詞を言い終わるが、演出家からOKが出ない。)
演出家:「うーん、もう少し感情を込めてみようか。自由くんのキャラは、ここで心から泣いてるんだよ。」
(自由は台本を見つめながら首をかしげる。)
入野自由:「感情…泣く、ですか。」
演出家:「そうそう。君ならできるよ。」
(自由が席に戻ると、隣で見ていた鈴村健一が小声で話しかける。)
鈴村健一:「お、頑張ってるねぇ。でも、ちょっと硬いんじゃない?」
入野自由:「…そんなこと言われても、わかんないですよ。『心から泣け』って、そんなの急にできるわけないし。」
鈴村健一:「おっ、反抗期か? 可愛いなー、後輩って感じ。」
入野自由:「鈴さん、ふざけないでください。」
(鈴村が笑いながら自由の肩を叩く。)
鈴村健一:「悪い悪い。でもさ、自由、心から泣くってのは、自分が泣いたことを思い出せばいいんだよ。ほら、泣いたことくらいあるでしょ?」
入野自由:「……。」
鈴村健一:「あれ、ないの?」
入野自由:「あるけど、こんな場所で思い出せるわけないじゃないですか。」
鈴村健一:「まぁ、そりゃそうだ。でもね、泣くってのは、頭で考えるんじゃなくて感じるものだよ。」
(自由は鈴村の言葉に少し戸惑いながらも耳を傾ける。)
入野自由:「感じる…。」
鈴村健一:「そうそう、例えばさ、この台本のキャラ、君に似てると思わない?」
入野自由:「僕に?」
鈴村健一:「そう。頑張ってるけど、上手くいかなくて、悔しくて泣きたくなる時とかさ。そういう気持ち、自由も持ってるでしょ?」
(自由はハッとしたように目を見開く。)
入野自由:「……あるかも。」
鈴村健一:「ほら、そいつをマイクの前で出せばいいんだよ。」
(自由はしばらく考えた後、再びマイク前に立つ。)
演出家:「じゃあ、もう一回いこうか。」
(今度は感情がこもった台詞が響く。スタジオ全体が静まり返る。)
演出家:「いいね! 今のは最高だよ!」
(自由が戻ると、鈴村が大きな拍手をして迎える。)
鈴村健一:「やればできるじゃん、自由! ほら、俺のおかげってことで感謝しなさい。」
入野自由:「感謝する気になんてなりませんよ。」
鈴村健一:「えー、ひどいなぁ。でも、ま、これからもっと伸びるよ、君は。」
(自由は少し照れくさそうに微笑む。)
入野自由:「……ありがとうございます、鈴さん。」
鈴村健一:「おっ、素直になったじゃん。可愛い後輩め。」