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「単刀直入に言います。あなたには再度、王立第一魔法学校の講師になっていただきたいのです」
と。
応接室に入り、席に着くなりリーナは俺に告げた。
「…………えっと?」
一瞬、頭の中が真っ白になる。
リーナがなんと言ったのか理解しきれなくて、もう一度尋ねれば
「先生を連れ戻しに来ました。あなたには再度、王立第一魔法学校の講師になっていただきたいのです」
同じ答えが返って来た。
正直、意味が分からなかった。
俺は魔術の危険性を理由に、一度学会から追放された身である。
今さらその地位に戻ろうだなんて考えてもみない。
それよりも、だ。
「えっと、応接室って使っていいのか? それに、俺は仕事が山積みなんだが……」
あとで学長にどやされないかのほうが、俺は気にかかっていた。
「学長に、応接室の使用許可は得ました。先生の仕事は別の方がやってくれるそうです。
なにも心配はいりませんよ」
が、リーナはそこまで手を回していたらしい。
血色のいい唇を緩めて、俺に笑いかける。
こうして正面から見ると、その凛々しい美しさはなお際立って見えた。
教師と生徒だった時は、俺が25歳でリーナが17歳だった。
そこから5年、22歳になったリーナは、すっかり大人らしい魅力を備えた女性になったらしい。
俺は、言い返す言葉を失う。
そこで彼女は俺の戸惑いを察したらしく、こほんと咳払いを一つ。
「少しいきなりすぎましたね。まずは説明させてください」
「あぁ頼む。できるだけ詳細に」
「はい、先生が尋ねられることであればなんでも答えますよ。その話をするにはまず、先生をいつから探していたかについて話さなくてはなりません」
ん……? と少し引っかかりを覚える。
それよりも、王立第一魔法学校へのスカウトの件を知りたいんだが?
そう思う俺に構わず、リーナはもう語り出していた。
「あなたが学会を追われてすぐ、私は一度、学校を休学しました」
「休学……? あんなに優秀だった君がどうして。というか、ご両親は認められたのか?」
リーナの生まれであるリナルディ家は、押しも押されぬ大権力を持つ公爵家だ。
その長女として生まれた彼女は幼い頃から厳しく育てられていたようで、品行方正かつ成績優秀と、ほぼ非の打ち所がなかった。
魔術学にも真摯に取り組んでくれて、授業はほぼ毎回最前列で受けるなど、真面目そのものだったと言える。
「あなたにご指導いただけないならば、いるだけ無意味だと思ったからです。私が興味があったのは、先生と魔術だけでしたから。
でも、あなたはどれだけ探しても、冒険者や人探しを雇って探させても見つからなかった」
おいおい、たかが俺を探すためにそこまでしてたのかよ……! ちょっとやりすぎなんじゃ?
なんて、ツッコミを入れる間もない。