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悪魔ルインは、二人から構えられているのにも関わらず素敵な笑みを浮かべさせていた。
「お前……核ってなんなんだ……!」
「知らないなら知らなくていいさ。どうせもう終わる」
そして、ルインは両手を掲げた。
「闇魔法 シャドウビート!」
三人の胸から放たれていた糸が無数に出現した。
僕は急いで後退するが、ホクトは何もしない。
「ホクト! なんで避けないんだ!?」
「え……」
そして、ホクトはそのまま魂に黒い糸が刺さった。
「ホクトには……見えてなかったのか……?」
すると、ホクトは動かなくなった。
「その通り。やっと気付いた? その糸が見えてるのは君だけだよ。『魂に干渉する魔法』だからね」
「魂に干渉する魔法……?」
「そう。僕の仕事は魂の管理だった。攻撃も防衛も出来ない代わりに、魂を拘束する魔法が使えるんだ」
そうか……まさか悪魔ルインが闇の神を裏切るなんて想像もしていなかったことだろう……。
「もう核も揃えられたし、僕の仕事は終わり。何も出来ない哀れな異郷者に、核と言うものを教えてあげよう」
そして、悪魔ルインは語り出した。
その昔、唯一神バベルはこの地を創った。
そして、七龍を生み出し、どんな厄災にも太刀打ちできるように願いを込めた。
そして、国起こしの為に七神を生み出した。
その世界の創まりに、もう一つ創っていたものがある。
それが “四方守神” という、龍でも神でもない存在。
神でも、龍でも、災いが生じた際に結界を張れる者達。
「それが、神の気まぐれなのか、はたまた運命なのか。君のパーティメンバー、花南、西華、東真、北斗だ」
僕は、唖然として言葉を失った。
冷静に考えれば、四人の過去を聞いたことがない……。
ずっと吹っ切れたと思っていたけど、セーカの記憶も全てドレイクに改ざんされており、アズマと同じ記憶喪失と同じ状態だったじゃないか……。
「どうしてもっと早く気付いてやれなかったんだ……」
「気付いた時には手遅れ。また同じ過ち。ホント、ヒトって生き物は愚かだよね……」
そう言うと、闇に紛れてルインは消えてしまった。
僕は、そのまま膝から崩れ落ちることしか出来なかった。
仲間を……守れなかった……。
――
ボロボロの大翼を翻し、守護の国に降り立つ。
「ガンマ、いるんだろ? どのくらい進んだ?」
ルシフェルの問いに、ガンマは未だ守護の国の地下に闇魔法で潜んでいた。
何人かの神を捉えたまま。
「水の神がもう少しで暴発する……アイツは禁忌を犯し過ぎていたから早く済みそうだ……」
「そうか、やっとこの世界からオサラバできる。……と、その前に、お客さんの相手をしなくちゃな」
バサっと白い大翼を広げ、守護の国の上空を羽ばたいているのは、大天使ミカエルだった。
「天使の国 光の神 バベルの右腕 大天使ミカエル……」
「あそこで僕を殺さなかったのが君の敗因だ。光の神として、しっかりケジメは付けさせてもらう」
そう言うと、ミカエルは静かに着陸した。
「わざと殺さないであげたことも分かってないの?」
ミカエルの表情は変わらない。
「ハハっ、僕は君の “クローン” だってのにさ!」
「だからこそのケジメだよ。ルシフェル……。お前を止められるのは、同じ生命体の僕しかいない」
「お熱いところごめんねー。こっちも仕事終わったから、どっかで昼寝しててもいい?」
そこに現れたのは、四人の魂を拘束した悪魔ルインだった。
「それで、ヤマトのことを脅したんですか」
「あぁ、バベルの右腕だった君も知らないもんね。アハハ、そう言うことにしとこうかな。じゃあおやすみ」
ミカエルは、睨みつつも、ルシフェルに向かい合った。
「”元” 仲間なんじゃないの? 僕みたいに……」
「世界の救済が優先だ……」
一頻り睨み合うと、ミカエルは後退した。
「光魔法 ブラックヘル!!」
「僕だけじゃなく、他の奴も一緒に……ね……」
眩い光がミカエルの背後から大きく照らされる。
「闇魔法 ジャッジメント」
しかし、ルシフェルが手を翳すと、一瞬にして光は闇へと一転した。
「ルシフェル……なんでお前が闇魔法を……!」
「この世界の “理” でしょ。僕は堕天したからね。君は闇をずっと憎んでいるようだけど、相反する二つを僕は受け入れることに成功した。光と闇を制する者だ……」
そして、その手を強く下ろした。
「闇魔法 グラビティエッジ」
「ぐあっ!」
ミカエルは重力操作でそのまま地面に突き落とされた。
「君が “堕天” してるみたいだね。大天使……」
「減らず口を……叩くな!!」
ブワッと手を広げ、広範囲に風魔法を放った。
「遂に出したね……本性を……」
ルシフェルは風魔法に後退、その間に、ヨロヨロとミカエルは立ち上がった。
「風・炎・水・岩・雷……この地に巡るエネルギー……この原点に回帰しなさい……」
五色に輝く光がミカエルの元に集まる。
「 “創造魔法 森羅万象” 」
ゴッ! と、地面は割れ、塵が吹き荒れる。
「ガンマ、よく見ておくといい。この “世界” の最後の悪足掻きだ……」
そう言うと、ルシフェルはほくそ笑む。
「世界を創造したのは、バベルじゃない。この男、バベルに魔法を与えた張本人。魔法の祖だ」
「そして、コレは天からの罰だ! ルシフェル!!」
叫んだミカエルの瞳は、ギラギラと輝いていた。
「風魔法 疾風翔!」
一瞬にしてルシフェルの眼前へ詰め寄る。
「岩魔法 岩彗星! 炎魔法 炎烈火!」
無数の岩が背後から注ぎ落ち、ミカエルの両手からは火炎放射が放たれる。
「光魔法 スルース……」
ルシフェルは、その手に光剣を掲げる。
「闇魔法 ブラックホール」
そして、光剣から大きく黒い塊を描く。
ミカエルの大量の魔法は、闇の中に全て吸い込まれた。
ミカエルは唖然としてその光景を眺めた。
「何を呆然としてるの? 君と “同じ” 力でしょ? 『全ての魔法攻撃を僕たちは斬れる』って」
しかし、ニヤリとルシフェルは微笑む。
「ああ、闇魔法で吸収したことに驚いてる? コレはガンマとの協力魔法なんだ。ガンマの展開している闇の空間に僕が送るってね。君は沢山の魔法を使えるんだから、こっちは二人係じゃないとイーブンじゃないよね」
ミカエルは露骨に苦い顔を浮かべた。
この言葉が意味することは、ミカエルがどんなに属性魔法を増やして攻撃しても、無意味ということだった。
「お前は……どうしてそこまでこの世界を憎む……」
「自分の胸に聞きなよ。僕は君なんだから。君は使命としてこの世界を救済するって息巻いてるけど、七神も龍も、君の仲間のことも助けようとしないのが証拠だよね……」
ミカエルの顔は徐々に苦くなって行く。
「やっぱり僕と同じなんだよね! やってることが違くても、バベルを傷付けたこの世界が好きじゃないんだ!」
「僕は……ただ……」
「僕と同じなんだよ、認めろよ」
そして、ルシフェルは光剣をミカエルに掲げる。
「はい、おしまい」
ミカエルは、光剣により断罪された。
「あっ!!」
その背後で、うたた寝していたルインが声を上げる。
「召喚魔法 ゲイン……!」
ミカエルは、自分の光の幻影を見せ、その隙にルインの元に光と化して回り込んでいた。
そして、四人のことを召喚魔法で移動させていた。
「クッソ……! せっかく捕えたのに……!」
「僕は……お前と同じじゃない……!」
言い残すと、そのままミカエルは倒れた。
「四人を同時に召喚魔法……そりゃ魔力も尽きるね。まあいいや。一番厄介なのはここで潰せたし……」
そして、ミカエルは十字架に磔にされた。