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(…僕と関わる目的は絵が上手くなりたいから、だから僕にも話しかけてくれるし、優しくしてくれるんだ)
なんて考えずにはいられない。
我ながら、相変わらずの捻くれ者だ。
「てかさ、気になってたんだけど」
天馬くんは、ご飯を頬張りながらふと言葉を続けた。
「水瀬ってなんでいつもそんな長い前髪してんの?切らないの?」
「へ?」
突然の質問に箸を持つ手が止まる。
「なんか邪魔じゃね?顔隠れてて見えづらいし」
「……この方が、落ち着くから」
「ふーん」
天馬くんは納得していない様子で首を傾げる。
そして何を思ったのか、ふいに手を伸ばしてきた。
「ちょっと貸してみ?」
「え……」
「ほら、前髪あげてみなよ。きっともっと印象変わるんじゃね?」
その声は親切心から来るものだったのかもしれない。
でも僕の身体は勝手に強張ってしまう。
視界が急激に狭まった。
触れられるという事実だけで過去の嫌な思い出がフラッシュバックする。
───キモい。
───汚い。
───近寄んな。
そう言われながら乱暴に髪を掴まれたり、無理やり引っ張られた日々。
あれはもう終わったはずなのに。
どうしても反応してしまう。
「……っ!」
反射的に肩が大きく跳ね上がり、僕は無意識に後ずさりした。
コンクリートのベンチが軋む音がやけに大きく響く。
「…あ、悪い。そんな嫌だと思わなくて」
天馬くんの声は驚きと困惑が混じったものだった。
「いや、えっ、と…こっちこそごめん、ちょっとビックリした、だけだから」
咄嗟に言い訳を口にする。
心臓が痛いくらいに脈打っている。
(なんで逃げちゃったんだ……)
自分でも分からない。
ただ体が拒否反応を示した。
天馬くんは傷ついたような表情で黙ってしまった。
沈黙が重い。
(何か言わなくちゃ)
だけど、何を言えばいいのかわからない。
喉の奥がカラカラに乾いている。
すると彼はため息混じりに立ち上がり、背を向けてフェンスへ歩み寄った。
その後ろ姿を見ながら、僕はますます申し訳なさでいっぱいになる。
(どうしよう。絶対怒らせた…嫌われたかもしれない)
自分に自信がなさ過ぎて最悪のシナリオばかり浮かんでしまう。
天馬くんが振り返らない限り何も解決しないのに
僕からはどうすることもできない。
しばらくして天馬くんは徐にこちらを振り向きながら言った。
「この間から薄々思ってたけど、水瀬って、やっぱ俺のこと苦手……?」
「えっ?」
予想外の問いかけに思わず息を飲む。
「別に責めるわけじゃないけどさ」
彼はフェンス越しの遠くの景色をぼんやり眺めながら続ける。
#シリアス