※ 注意 ※
・irxs
・青桃
・パロディ
作業してて気づいたら手元にあったモンエナの缶全部空になってる現象どうにかしたい
あと普通に風邪の前兆来ててやばみ
桃.side
朝からけたたましく鳴るスマホに、まだぼやける視界のまま手を伸ばす。
どうせ上司くらいしか普段電話する人はいないし、きっとまたそうだろうと画面も確認せず電話に出た。
『…昨日、バーに忘れ物してますけど』
「はい???」
『だから、昨日の演奏会での忘れ物。自分の楽器忘れるとか神経どうなってるんですか』
「…嘘でしょ俺」
酔って気持ち良くなってたせいですっかり忘れてた。
繋がれた電話をそのままに電源をブチッと切って、鍵を引っ掴んで家を飛び出した。
数時間前も聞いた、扉に付いた鈴の音。
…なんて優雅に考えてる暇もなく駆け込むと、バーカウンターで酒を流し込む青髪が目に入った。
扉が空いたことで風が入り込み彼の髪を梳くように通り抜け、喉から酒を飲む音が聞こえる。
そのままゆっくりと風の吹く方向を向いた彼と目が合った。
その動作がなぜだかとても幻想的に見えて、思わず声が出そうになる。
「……お待ちしておりました」
「口だけじゃないですか」
カウンター前の椅子に体を預け、グラスを揺らしながらこちらを見るその姿からは、昨日の夜に見た清楚系バーテンダーのような面影は一切感じられなかった。
その後店員らしくカウンターの裏へ回り、良く言えば保管してもらっていたクラケースを取り出してテーブルに置いた彼は、そのまま頬杖をついてこちらを見上げる。
「確か…ないくんだっけ」
「!」
「何か一杯、飲んでいきません?♪」
先程自分が飲んでいたグラスを引き寄せ、見せびらかすように縁を叩いて見せた。
本来、このバーは17時に開店するらしい。
それなのに現在時刻はショッピングモールが開店してから30分後。勿論、入口には「Close」の札が掛かっている。
俺だけが特別な客。よく考えてみれば、不可解な点がある。
そもそも忘れ物の連絡は、昨日の夜の内にすればよかったのに今日の朝電話をかけた。
そして、今ここにいるのは、いふさんと俺だけ。
まるで、それを図ったかのよう。
だから、俺は聞いた。
「お兄さん、俺のこと好きなん?」
彼は、うん、と目を瞑ったまま、
首を振った
「ないくんの、サックスみたいなクラの音色が」
「…バレてたか」
実は数年前までは、サックス奏者として多くの場所でジャズを演奏していた。
それに気づくということは、いふさんも関係者なのだろう。
つまり、俺があんなにソロをアピールしたくて踏み込んだのもバレているということだ。恥ずかし。
「もう一度、あのソロ聞かせてくださいよ。」
「……喜んで。」
ケースを開いて、リードを咥える。
そのままマウスピースとバレルを合わせ、リガチャーを嵌めてからリードを差し込んだ。
その様子をじっと眺めるいふくんを横目に、上管と下管を嵌め込み金属部分を合わせる。
それからベルを取り付け、マウスピースで数回音を鳴らす。
最後に上管に取り付ければ作業は終わり。
「相変わらず準備が長いですねぇ」
「そのせいで苦労が多くてね」
正面の6つの穴と、裏の1つの穴、それから左小指でレバーを押せば、B♭音が鳴る。
それを見てか、いふさんは目を見開いた。
「はは、俺正規の運指じゃないんだよね」
「…もうひとつの方法のやつか、珍しい」
俺はそのまま、ソロを吹き始めた。
途中のhigh E♭も難なく熟す。
心地よさそうに目を閉じ、残っていたグラスの酒をあおる。
「……ふぅ」
一通り吹き終え、左手でクラを持ったままどかりと椅子に座った。
「流石、慣れてるだけある」
「それはどーも。」
演奏前に出されていたカクテルと同じものが再び目の前に差し出された。
さっきと一つも変わらない色合い。どれだけ手練かが目に見えた。
「…私、このバーの中でも人気な方なんですよ」
「はぁ、」
「だから、名刺も誰にも渡したことがない。変な関係と思われるのが面倒で。」
昨日と同じように、テーブルに伏せながらぼうっと話を聞いていた。
「だから、これ」
「……え」
「次会うときは、飲み屋にでも」
「俺はいふさんのカクテルがいいけどなぁ」
「…ははっ」
いふさんはひらひらと手を振り、クラケースを掲げた。
それを右手に受け取り、左手で差し出された名刺を受け取る。
受け取った「それ」は、いふさんの「初めて」の証だった。
Fin.
コメント
1件
なりちゃ~!! 久しぶり!めちゃくちゃいい話で普通に感動🥹 ディスコキッド懐かしすぎて自分もいつかこのソロ吹きたいって思ったよ!🙌🏻