[悪役っていうのは…]
【カナト】「うーん…。」
僕はカナト。サンダーさんやリーフさんたちと活動をしているアイドルである。
そんな僕は、とあるオーディションでとある役を手に入れることができた。
【カナト】「俺はオマエのことなんざどうだっていいんだよ!」
【男性1】「違う違う…そこはもう少し静かに言ってほしいんだ。」
【カナト】「な…なるほど…。」
それは原作漫画に出てくる悪役だった。この悪役は何もかも絶望しているようなキャラで、作者さん的にはシリアス満載のクールな悪役キャラって感じらしい…。
だけど僕は、このキャラの感情や性質を理解できないままでいた。
【カナト】「はぁ…今日もダメだった…。うーん…どこが違うんだろう…。」
【サンダー】「どした?」
【カナト】「わぁぁぁっ!?」
台本を読みながら考えていると、急に背後からサンダーさんが現れた。
【カナト】「サンダーさん!?」
【サンダー】「大丈夫〜?他の役の人たちから聞いたよ〜?どっか分からないところがあるんだって?」
【カナト】「は…はい…。ここのセリフ…どうやって言えばいいんだろう…って…。指導をしてくれている方たちに聞いても…あまりピンと来なくて…。」
【サンダー】「なるほどね…。カナト…この悪役は悲しい過去があるキャラだろ?」
【カナト】「はい…。」
【サンダー】「このシーンでは…哀愁というものを出さないとダメなんだ。心を締め付けられるような…ドンヨリしている感じ…。 」
【カナト】「哀愁…?」
【サンダー】「簡単に言うと…本気で絶望しなければならない。そしてその絶望感を他人に与えて…相手の心を壊すぐらいの勢いで演技しなきゃいけない…。」
【サンダー】「コイツの心の中には…絶望と悲しみ…承認欲求しかない。慈悲なんてないからこそ…正々堂々悪役として演技しなくちゃいけない…。」
そう言ってサンダーさんは、台本も持たずに立ち上がった。そして演技をし始めた。
【サンダー】「オマエらのことなんてどうでもいいんだよ。いい加減…俺を認めてくれよ。なぁ…?ヒーロー。」
【カナト】「えっ…。」
演技をしている時のサンダーさんの目には、光すら宿っていないような濁りきった目だった。 その目を見た瞬間…謎の虚無感に襲われた。
【サンダー】「こんな感じかな。次演技する時は気を付けてみて。まぁ…俺のアドバイスが役に立つかは君次第ってところだけど…。」
そう言って、サンダーさんは台本を渡してきた。そして…その後言われた言葉に…俺は影響を受けた。
【サンダー】「あのな…カナト。悪役だからって…毛嫌いしてはいけないんだ。悪役のような嫌われてる奴らのことも理解する…それが役者の仕事だ。」
【サンダー】「悪役になるなら正々堂々悪くなれ。分かったな?」
【カナト】「は…はい…!」
僕は役者の仕事は何度かしたことはあったけど、悪役はやったことはなかった。
でも今回の出来事で初めて悪役の気持ちを知った。
【カナト】「正々堂々悪く…そして絶望する…。」
今度はサンダーさんみたいに、悪役だからこそ、見ているお客さんたちに絶望を与えられるような演技をしたいな…。
そして大人気になったこの悪役キャラのように、みんなからスゴイと言われたい…好かれたいと思った。
【カナト】「あれ…?好かれたい…?この子と同じだ…。」
俺は初めて…悪役の気持ちを少し理解できた気がした。
【サンダー】(闇堕ちしない程度に頑張れよ。カナト。)
コメント
12件
サンダーきゅんのようなクールっぽさがその悪役に当てはまるんじゃないかね
悪には悪の正義とか理想とかあるんだもんな…サンダーくんのなんでもわかってる感じ好き…︎︎👍︎︎👍