テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
君のスケッチブック
注意(絶対に読んでください)
🦍社二次創作 ☃️メイン
ご本人様とは一切関係ありません。
そこまでグロテスクなタイプではありませんが、死の要素が沢山入っています。
嫌な方は、此処で読むのを中止してください。
君はスケッチブックを大切そうに抱えている。
お風呂に入っている時以外、肌身離さずにしっかりと持っているらしい。
「ねぇ、そのスケッチブック、何描いてるの?」
そう聞くと、
「んー…内緒で‼︎」
と返ってきた。
君の笑顔はとても綺麗だった。
おらふくんは、いつもスケッチブックに何かを描く。
何を描いているのかは見せてくれないけれど。
この子は特徴的な絵を描く。
この子にしかない感性とセンスがある。
スケッチブックは、毎月変わっていく。
君が毎日毎日何かを描いて、だんだんスケッチブックが埋まっていくのだろう。
君はそのスケッチブックを、誰にも見せない。
俺達ドズル社メンバーにも、家族にも見せないらしい。
「僕の内緒のスケッチブックなんで〜‼︎」
笑顔でそういう君は、眩しかった。
新緑が芽吹く5月の中旬。
君は、俺らと来た自然豊かな広い公園で楽しそうに絵を描いていた。
みんなでおんりーが作ってきてくれた弁当を食べたり、ゲームをしたり、景色を見たり。
おらふくんは何回もスケッチブックを開いて、絵を描いていた。
7月のことだった。
君は、海に来た時もスケッチブックに何かを描いていた。
パラソルの下で、真剣な目をしてペンを握る君を、俺達は近くでで遊びながら見ていた。
「思い出に残したいんよ」
君は色鉛筆を回しながら言った。
色鉛筆はくるくると、拙い動きで回った。
「思い出を沢山形に残せば、例え死んでも、僕がみんなと生きた証が残るから。」
そう呟くおらふくんを、俺はじっと見つめていた。
「おんりー…あのさ…」
筆箱から取り出した鉛筆を走らせながら、君は俺の名前を呼んだ。
「何?」
「…──────?」
おらふくんの声は、潮騒の音で掻き消された。
「ごめん、上手く聞こえなくて…一回言ってくれる?」
「…なんでもないんよ、気にせんといて」
君は悲しそうな顔を浮かべていた。
鉛筆が、砂浜に落ちた。
俺が拾って、砂を落としておらふくんに渡した。
「ありがとう」
その声色は、何故か少し暗かった。
おらふくんと連絡がつかなくなったのは、1週間前だったと思う。
電話やメッセージを送っても、スマホの電源を切っているようで、一切返事がない。
ドズルさんが家に行っても、誰も出てこなかったらしい。
8月の終わりの夕暮れの中には、
ひぐらしの声を聴き、感傷に浸る自分しか居なかった。
スマートフォンに着信があった。
ドズルさんからの電話。
出ると、焦っているドズルさんの声が聞こえてきた。
「men、今すぐ送る場所に来て欲しい。」
「え、今すぐですか?」
「うん、お願い。なるべく急いで‼︎」
そう言われ、電話が切れた。
ドズル社のグループに送られていたのは、 おらふくんの家の近くにある有名な総合病院だった。
即座にタクシーを捕まえて、場所を伝えた。
流れていく街の景色を見ながら、何故呼ばれたのかを頭で考えていた。
最悪のことしか想像できず、拳を強く握った。
15分程で目的地に着いた。
道が珍しく空いていたのが救いだったと思う。
札ををトレーに置き、釣り銭は要らないと断って慌ててタクシーを降りた。
病院の総合入口に、ドズルさんが立っていた。
「men、こっち」
エレベーターで上へ昇り、7階で降りた。
急ぎ足でドズルさんに着いて行き、何も知らないまま病室に入った。
思わず、声を上げた。
ドズルさんは、静かにベッドを見つめている。悲しそうな、辛そうな顔だった。
ぼんさんは、サングラスを外し、とても暗い顔をしている。今にも泣きそうな顔だった。
おんりーは、声を上げて泣いていた。眼鏡を外して、目元をハンカチで覆っていた。
見たくなかった。考えたくなかった。
最悪なこの現実から目を逸らし、逃げてしまいたかった。
ベットに静かに眠る”誰か”の顔にかけられた白い布を、震える手で取った。
それは、間違いなくおらふくんだった。
君は少しだけ笑っていた。
身体の上にはいつものスケッチブックが置かれていた。
「嘘だろ…?」
誰かにドッキリだと言って欲しかった。
嘘だと認めて欲しかった。
この現実を否定して欲しかった。
この悪夢から覚めたかった。
「おらふくん…なんで…逝かないでよ…」
おらふくんの手を握って泣き叫ぶおんりー。
ぼんさんは、俺に一枚の紙を渡してきた。
「入院のご案内」と書かれた紙に、ボールペンで、震えた文字が綴られていた。
『みんなへ ありがとう。いえなくてごめんね。』
その手紙を見て、君の顔を見た。 笑顔で眠っている姿が、そこにあった。
俺はもう無理だった。おんりーの横で、自分も泣いた。ドズルさんとぼんさんは、俺達の頭を、黙って撫でていた。
君が難病を患い、余命宣告をされていたことを、俺達は今日初めて知った。
いや、それは嘘だ。
あの日、海でおらふくんが俺に言ったこと。
実は、少し聞こえていた。
「おんりーは、僕が余命1ヶ月って言ったらどう思う?」
って、君は悲しそうに言っていたことを。
本当は、全部全部わかっていた。
ペン回しが得意なのに色鉛筆を回せなかった理由も、 鉛筆を落とした理由も、
「死んだとしたら」なんて言っていた理由も。
俺は目を逸らし続けた。
自分の大切な人が居なくなるかもしれない現実から。
最低でごめんね、おらふくん。
涙が止まらなかった。
君のご両親が、僕達に渡してくれたものがあった。
大量のスケッチブックだった。
数えてみれば、55冊もあった。
僕達がドズル社を結成したあの頃から、
今年の7月まで。
みんなで、一冊目を開いた。
それは、独特な君の感性で丁寧に描かれた、僕達の絵ばかりだった。
めくってもめくっても、他のスケッチブックを見ても、僕達の絵ばかりだった。
笑っていたり、ふざけていたり。僕達の様子が、しっかりと絵にされていた。
一つ一つにコメントが添えられている。
最後に書かれたコメントを、みんなで読んだ。
「このスケッチブックをみんなが見てるっていうことは、きっと僕はもうこの世に居ないのかな。
みんな、本当にありがとう。ドズル社と、ドズル社のみんなが、僕は大好きだよ。」
君は、いつも僕達を泣かせるよね、本当。
こっちこそ、本当にありがとう。
絵(浅間作)
多分清書してイラストコーナーに投稿します。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!