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白黒編 第三話 伸ばした手
今日僕は、朝からずっと暇を持て余していた。歌い手活動も今日の分の仕事は昨日の内に終わらせておいたので、本当に集中することがなかった。もちろん、動画編集などもあるっちゃあるが急いでやるものでもなかった。俺は、何をするか考えていた所、スマホからピロンという着信音が鳴った。時間帯は昼時であり、誰かと思いながらスマホを確認すると、悠くんからだった。悠くんに重い感情を抱いていると自負している俺は、悠くんからの連絡に胸を踊らせながらすぐさまLINEを見て、連絡を確認した。
「(っ’ヮ’c)<ショォォォォォォォォォォォォォォォ今、暇しとる?良かったら今から遊びに行かん??」
珍しく悠くんからの遊びのお誘いだった。いつも、俺から連絡をし遊びに行くので何時ぶりかも分からない悠くんからのお誘いは想像以上に嬉しかった。俺はすぐさま返信した。
「もちろんええで!!楽しみやな!ちなみにどこ集合?」
俺は興奮している感情を抑えながら平然を装い返信を悠くんに送った。
「じゃあ、俺の家の近くのバス停に来れる??バスで行きたいからな。特に持ち物とかは要らんで!」
どうやら、遠くの方へ行くのだろうか、バスで行くようだ。俺は中々、バスでの移動で悠くんとどこかに行くことは無かったので、珍しいなと思った。俺は何処に行くのかは言わない悠くんを不審に思いながら返信をした。
「了解!すぐ行くな!!」
俺は、念の為にスマホと財布、あと家の鍵を持ち、悠くん家の前のバス停まで向かった。
俺は、悠くんに早く会いたいという気持ちが先走り、少し小走り気味にバス停まで向かった。向かいながら、スマホを確認すると予定していた時間より随分早い時間に着きそうだった。まぁ、待つ時間も悠くんに対する思いが深まるだけ楽しいので待っている事にしよう。
そんな事を思いながら悠くんの家の近くのバス停が見える曲がり角を曲がった。すると、バス停で待っている1人の綺麗な人が立っていた。なんと、その綺麗な人は悠くんだったのだ。悠くんがもう既に待っていた事に驚きながら俺は慌ててバス停の方へ行った。すると、悠くんがニコニコ笑顔で俺を抱き締めてくれた。
話を聞くと悠くんは今日、俺に会いたすぎて早く家から出てしまったようだ。俺は、悠くんの愛らしい行動に悶えながら、来ていたバスに乗った。
バスに揺られながら、未だ悠くんに伝えてもらえず分からない目的の地へ向かっていた。俺は、悠くんの隣の席に座っていて、幸せな気持ちだったが、ひとつ悠くんに対する邪心が浮かんできた。
時は遡る事3日前の深夜頃だっただろうか。遅めの晩御飯を買いに行くために僕はコンビニに行っていた。もちろん、コンビニからの帰り道では真っ暗で、目を凝らさないと見えない程だった。美味しそうなホットスナックがあったので、1人で帰り道をルンルンで帰っていた。すると、何処からか不振な音がした。荒い息遣いも聞こえてきて、水温もピチャピチャとなっていた。音の出処は近くの公園の隅っこの方だった。流石に俺も男だ。ここまでくれば公園の端っこで何が起きているのかぐらい容易に想像できた。しかし、1度気になってしまうと止められないもので、野暮かもしれないが、様子を伺ってみた。
目もだいぶ暗闇で慣れてきたので、様子をしっかり確認することが出来た。俺は、公園の端で、愛を確かめ合っていた人を確認した瞬間、心臓が止まり、肺が圧迫された気がした。その理由はなんと、公園の端で蜜時をしていたのは悠くんだったのだ。正確には悠くんと、我らがリーダーないちゃんだった。
悠くんとないちゃんは深いキスをし、お互いの秘部を擦り合わせていた。悠くんはないちゃんにムリヤリ犯られるというわけでもなく、瞳も蕩けておりハート気味だったのだ。
それを見た瞬間俺は何も考えられず、その場から俺はダッシュで逃げ出してしまった。分かってはいたがこんなにも辛い事だなんて、、、だいぶ、心が落ち着き、冷静になったと分かるまでにホットスナックはすっかり冷めきったようだった。
俺は、元々悠くんには愛されていないと分かっていた。悠くんの視線は明らかに俺には向けられていない、悠くんの伝えてくる好きは本心だとしても、絶対に恋愛的感情はない。そう確信できていた。なぜだか分からないが俺は愛されいないと知っていた。
もちろん俺は、悠くんの事がどうしても好きだし、愛している。悠くんは遊び半分かもしれないし、ちょっとした大人の戯れかもしれない。でも僕は、悠くんの一つ一つの表情を絶対的に誰にも見せて欲しくないし、悠くんを誰のものにもなって欲しくなかった。
いつか、終わりが来るかもしれないこの関係。明日になったら終わりかもしれないし、10数年後まで続くかもしれない、あとどれくらいで終わるか分からない、この関係を俺は大切にしようと心に決め、悠くんの戯れに付き合って行くことにした。
バスに揺られ、20分程経っただろうか、ここで降りるで!と悠くんに言われるがままに、周りに人が少ない、バス停に降りた。周りは殺風景という訳でもなかったが、畑やら森などしか無かった。ここから何処に行くのだろうかと不審に思いつつ、悠くんを見ると、こっちこっちと手招きされた。
「初兎!!ここにあがれば見えるで!」
バス停から少しだけ歩いて行くと、悠くんが急にコンクリートの壁に登りたった。奥が見えないほどの高いコンクリの壁だったので、悠くんの手を借りながら登ってみると、辺り一面真っ青の海だった。空の色もまじり、なんとも言えない満足感に襲われた。こんなにも、綺麗な景色が近くでみれるとは、、
僕が無言で景色に感動していると、悠くんが「しょう」と呼んだ。何かと思い、振り向くと、不意に頬にキスをされた。
「初兎とこの景色が見たかったんよ。いつもありがとうな!」
ヘラりと笑い、目を細める悠くんの姿に僕は、抑えてきたものが全部溢れる感覚に陥った。本当は悠くんを独り占めしたい。いちばん最初に浮かび上がってきたのはその思いだった。しかし、悠くんは決して俺の方を振り向かない。何度も体を重ね合わせても無駄な事だ。
悠くんに手を肩に伸ばしても微動だにせず、きっと笑うだけだよね。最近では悠くんの瞳に光ともいえない分からないものが宿ってきており、俺はただただそれを見守ることしか出来ないだけだった。
俺は悠くんの肩に手を回し、もう一度キスをした。もちろん、口と口を重ね合わせたキスだった。
俺そのソフトキスを死ぬまで忘れないだろう。ニコリと笑い、俺を抱きしめるゆうくんに俺は消え入りそうな声で呟いた。
「悠くん、ありがとう。」
コメント
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最初のLINEの文章の 「ショォォォォォォォ」 絵文字わかんないけど、この部分でまず尊い