テラーノベル
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先程沈み込んだ浮き草の上と見られる場所には、合わせて三匹のカエルが並んでこちらを見ている姿が映る。
左から大きくて緑の体に部分的な褐色(かっしょく)を覗かせた個体。
中央手前には先程のメスより濃い褐色に大きな目をした小さなカエルと、その奥にでっぷりとしたやや大きな緑のカエル、こちらは黒っぽい斑(まだら)模様が背中の随所にあり、ナッキには美しく感じられた。
右の小さな浮き草の上には、例のメスが水中から這い上がって姿勢を正してこちらに向き直る。
最初に声を出したのが彼女であった。
「殿、こちらがお会いしたいと訪ねて来られた『メダカの王様』ナッキさんです」
「ふむ、見れば随分大きな魚だな、一体どこから来られた? ナッキ王とやら」
手前の濃い褐色のカエルが聞いた、ナッキは答えた。
「君がカエルのリーダー、殿様だね! 僕はナッキ、銀鮒さ! 今はここのすぐ下の池でね、五百匹位のメダカと一緒に暮らしているんだ! どうぞ、よろしく」
「ご、五百……」 ゴクリ
「す、すぐ下にそれ程の大群が……」 ボソリ
左の大きなカエルと右のメスが思わず漏らしてしまった、そんな感じで呟くのである。
濃い褐色のカエルが二匹を嗜(たしな)めるように言った。
「これっ! そなたら、礼を失してはならぬぞっ! お、おほんっ! ナッキ王よ、勘違いさせてしまったようだ、私は殿様ではない、大臣のカジカ、という者だ、こちらの大きいのが力士のブル、この娘が侍のアカネ、私の後ろに居られる方こそが、我等の主、殿様でございますぞ!」
「あーそうなんだ、間違えちゃったね、殿様、カジカさん、ブル君、アカネちゃん、改めてよろしくね」
「く、君? ま、まあよろしく、うっしっ!」
「ちゃん、は、要りません……」
左右の二匹はもごもご言っていたが、カジカと言う大臣はやけに通る美しい声で聞く。
「それでナッキ王、我が殿に、いいえカエルのリーダーと話をされたいとか? 一体どんな御用ですかな?」
ナッキはいつも通りストレートだ。
「うん、実はモロコのね――――」
「すわっ! モロコの手の者かっ! ブルっ!」
「うっしっ!」
モロコと言う単語を聞いた瞬間、これまで落ち着いていたカジカ大臣が大きな美声で叫び、答えた力士のブルが浮き草の上で両手を広げて構えたが、一つの声がそれを止めるのであった、殿様だ。
「止めよブル、カジカよ、最後まで聞いてみようではないか、ナッキ王、モロコがどうしたのかな?」
「ははっ、ナッキ王、殿がこう言われておる、話されるが良い」
ナッキは思う。
――――カエルの特性か、はたまたカジカさんが特別なのか? 凄い速さで切り替えられるんだなぁ、ビックリだよ! とは言え、今はそこじゃない、肝心な話を進めなくっちゃ
「僕が住んでいる下の池にモロコがやってきたんだよ、力を貸してほしいとか、抑止力とか何とか言ってね、それでこの上の池に来たんだけどさ、モロコが一枚岩じゃなくてねぇー、口喧嘩ばかりで要領を得なくてね、それで相手だって言うカエルの方に来たって訳、判る?」
右の浮き草から侍のアカネが答えた。
「なるほど、モロコは口先ばかりの臆病者、我等の言い伝えでもその様に聞いているが…… それで? 業を煮やしたナッキ王自らが…… 我等を滅ぼしに出向かれたと言う訳ですな! 只では死なんぞっ! ブル殿っ!」
「うっしっ!」
「えええっ?」
「止めよブル、アカネよ、ナッキ王の話はまだ途中であろう、最後まで聞くのだ、良いな? さ、ナッキ王、続きを」
またもや殿様が興奮した二匹を止めてくれた。
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