テラーノベル
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※未来英雄クロスオーバー
✵✵✵✵✵
ふわふわ漂うような不思議な夢。
“いつも”見る夢とは違う、
天満はゆっくり目を開いた。
「・・・んぇ・・・?」
思わずそう口から零れた。
目が覚めると、自分は高級そうなソファに横になっていた。
立ち上がり、気がついた。
そこには、“本が沢山本棚に詰め込まれていた”
天井まで本棚があり、天井付近の本の背表紙なんて見えないくらい、そして、歩いても歩いても本ばかり。すると、
「おや、こんな所に“人間”かい?」
ふと、声が聞こえ、振り向く。
そこには、ふわふわと“人”が浮いていた。
だが、天満は直感的に彼が“人間ではない”と気づいた。
黄緑色の長い髪に、赤と紫の混じった瞳。
天満は思わず驚き、答えた。
「風夜さん!?」
「・・・ん???」
目の前の風夜?は困惑の表情を浮かべていた。
✵✵✵✵✵
「あー、はいはい、なるほどね。君、別世界からの子か・・・よく、夢を伝って別世界に来れたねぇ・・・普通なら、夢から夢に渡る時、多大なエネルギーを消費するのに・・・」
と、目の前の風夜・・・“世界の過去を映す魔導書”はそうこぼした。
どうやら、“夢”を伝ってこの世界に来てしまったらしく、時間が経てば時期に目覚める。と、机の上の砂時計を見せてくれた。
砂時計はさらさら音を立てて、砂が落ちていた。
「そういえば・・・君、普通の人間の気配を感じない・・・君は一体?」
「えーっと、その・・・蛇一族と、人間、のハーフかな・・・?」
「アッハッハッハッハッ!?まじで!?あのイカれた一族のハーフだって!?まじか!!」
と、魔導書はゲラゲラ笑う。それは、ただ人が笑ってるようにしか見えない。
笑ってる姿は、“風夜さん”にしか見えなかった。
「で、君がいう“風夜さん”って一体誰だい?」
と、魔導書はずいっと近づき、聞いた。それに天満は狼狽えつつ、答えた。
「え、えぇっと・・・僕の父さんの生徒で、ぼくと幼なじみの子のお父さんなんです。で、エンチャントが凄い上手いんですよ!」
「へぇ、エンチャント、ねぇ」
と、魔導書がこぼした。そして、少し置き、魔導書が突然詰め寄ってきた。
「わ、な、なんですか!?」
「・・・父さん」
「へ?」
「父さん、君の、父さんって・・・一体、誰だい?」
そう魔導書がじっと真剣な眼差しで見てくるため、思わず天満は答えた。
「・・・誰って・・・ヤマタノオロチを“倒した”すまない先生・・・ですけど?」
そうこぼすと、魔導書は突然、天満を抱きしめた。
「わっ!?」
「・・・そっか・・・君は・・・すまないくんの・・・!気配が似てると思ったら・・・!あぁ・・・良かった・・・!良かった・・・!!」
そう魔導書は嬉しそうにこぼした。
「・・・“そっち”の世界のすまないくんは・・・幸せそう?」
魔導書は顔を上げ、天満に聞いた。
「・・・うん!父さん元気だよ!この前なんか、ちょっと無茶したら、母さんと妹にめっちゃ叱られてた!」
「どういう状況でそうなったんだい!?!?」
天満が教えてくれた話に、魔導書は泣きそうな、嬉しそうな笑顔を綻ばせていた。
「・・・そういえば、魔導書さんの所に、父さんって──・・・」
そこまでこぼした途端、砂時計の砂が“落ちきった”
✵✵✵✵✵
「天満!もう朝よ!起きなさい!」
と、妹の蓬莱に布団を引っぺがされた。
「うわぁ!?ちょっ!!起こし方雑!!」
「前に、『あと5分・・・』って言って授業に遅れたのはどこのどいつ?」
「あの時は誠に申し訳ございませんでした」
と、天満は布団の上で綺麗な土下座を見せた。
「なに?なんかいい夢でも見てたの?」
「・・・夢・・・」
と、天満は思い出したが、
「・・・“忘れちゃった”」
そう答えた。
どうしてか、“彼”の話をしようとすると、悲しげに笑う魔導書の姿が頭に流れる。
それを見ると、どうしても“彼”のことを話そうとする気が起きなかった。
「・・・そう、早く顔洗って朝ごはん食べに来てね」
と、蓬莱は言い残し、部屋を出ていった。天満はぽかんとしていたが、思考を一旦置き、顔を洗いに向かった。
✵✵✵✵✵
「・・・そうか、彼は帰ったのか」
と、魔導書は立ち上がり、“風夜”の魔導書を持ってきた。
「別世界なんて、本当にあるんだなぁ、これは残しておかねば」
と、いそいそとペンを持って、先程の出来事をメモに書いていた。
書いている途中、書いた文字にポタリと水が落ち、文字が滲んだ。
「・・・あぁ・・・良かった・・・“別世界”だとしても・・・すまないくんは、“人として”・・・幸せに生きているんだ・・・・!」
そう魔導書は涙を流した。
“人として”ということは、不老不死などにはならず、人の身でヤマタノオロチを倒した。
その代償はあるものの、幸せに暮らしていることを聞いた魔導書は、嬉しさに心がいっぱいになった。
「本当に・・・本当に・・・良かった・・・」
そう魔導書は嬉しそうに、涙を零した。
その嬉しそうな声は、誰にも聞こえることなく、虚空へと消えていった。
コメント
2件
そっか!すまない先生は不死身でヤマタノオロチを倒したんだった! 風夜はパラレルワールドだったとしても『人として』すまない先生がヤマタノオロチを倒したことを心から喜んでたんだね! 夢から夢へと移ったのか、なんか難しそう!いつか不死身じゃないすまない先生と風夜あってほしいな