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うわあ、ついにプロポーズ! 水族館のキラキラした光の中で指輪を差し出すひろくん、そして涙ぐみながら「お願いします」と返すゆめちゃん――お互いの視線の先にある大きな水槽の描写が、二人の未来そのもののようで胸が熱くなりました。ラスボス(お母さん)に立ち向かう準備も整ったみたいで、この先がますます楽しみです!
真弓りの
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【夢弓のターン】
私は今、自分の部屋のベットで仰向けで寝転がってゴロンゴロンしてます。
ニヤニヤが止まりません。
「にへへへへへ~」
何回見ても夢ではないですよ! 心の中でもにやけてしまいます。
にへへへへ。
自分でも気持ち悪いなぁ~って思うけど止められないものは仕方がありません。本当に嬉しいんだから今だけは仕方ないよね! と自分に言い聞かせて私はベッドの上を転がりながら幸せを全身で噛みしめるのです。
━━3日前に遡る……
ひろくんと料理をしながらレシピを作り始めて1年経ちました。ノートは11冊目に入ってノートを見ながらなら作れる料理はかなり増えました。
味のブレもほとんど無くなり安定した料理が作れるようになりました。それになんとお菓子だって作れちゃいます! メシマズだぁ~ってひろくんに告白した私がですよ。凄くないですか?
不器用なのはそんなに改善されてないけど、落ち着いて作れる様になったおかげで失敗の確立がぐーんと減りました。
ここまで成長出来たのは嫌な顔一つせず根気よく付き合ってくれたひろくんの存在がかなり大きいです。
もちろん、るりさんや悟さん、お姉ちゃんの手助けあっての今の私なのも間違いありません。
それでもやっぱり本当はもっと早く成果を出したくてたまらなかった私に、このレシピ作りが作業にならないように一緒に楽しく考えて、作って、食べてくれたひろくんに感謝しかありません!
そうそう作るだけでなく買い物の練習もしています。レシピにあった買い物の項目を決めそれ以外は買わない。
もし目当ての食材が無かった場合は、ノートに最低限必要食材というものが書いてありそれを参考にします。もしそれでもなかったら諦めて第二希望の料理を作る。それでも材料がなければあっさりと出来合いのものへ切り替えるということを徹底しています。
アレンジは一切出来ず、臨機応変には対応出来ない私にとってはこれが一番ベストなんです。
慌てず、焦らずできることを無理なくやる。ひろくんに私が作った料理を食べてほしいけど、作れなかったときは料理お休みの日だって割り切るのが大切なんです。出来合いのものを買ってきた日はひろくんは味の参考なるからって、使われている調味料を当てたりして一緒に楽しんでいます。
完璧です!
レシピノートの表紙を見つめニヤニヤしている私にひろくんが声をかけてきます。
「ゆめ、作れる料理も増えたし何よりおいしく作れている。環姉も言ってたし、もうお母さんに挑戦出来ると思うんだけどそろそろどうかな?」
「う~ん、できるかな? お姉ちゃんと意気込んだのはいいけど、冷静になって考えると不安になるんだよね。もし失敗したらひろくんとの結婚が認められないのかなって思うと怖いと言うか……」
不安になる私の頭に手を置いて撫でるとゆっくり抱き寄せられます。ドキッとして恥ずかしいけど私からも顔を埋めちゃいます。すごく好きな匂いがします。
「ゆめなら絶対できるよ」
そう言ってぎゅっと抱きしめてくれるので勇気をもらえた私も「できる!」って前向きな気持ちになれます。
顔を埋めたままの私ですが、ひろくんがなんだかソワソワしているのに気づきます。なんだろう? って思って顔を上げようとする前にひろくんがちょっと言葉に詰まりながら話し始めます。
「それでさ……3日後休み取れたんだけど、一緒に水族館行かないか? 前に行ったときはゆめ心から楽しめてないだろ。そのなんだ、観覧車では色々あったしさ」
「え、えぇとう~んとね、実は結構楽しんでたんだけど……まあ考え事はしてたから真の意味では楽しんでなかったのかなぁ?」
あの日はメシマズを告白することでいっぱいだったのは確かだけど、水族館の中では思いっきり楽しんでいたのも事実だったりします。
「ま、まあそのなんだ。息抜きって大切だろ? いつも頑張っているゆめに楽しんでもらいたいなって思ってさ」
「そんなに気を遣ってくれなくてもいいのに。こうして一緒に作るのもすごく楽しいもん。作れるものが増えるって楽しいし、ひろくんが食べてくれるの嬉しいし」
「そう言ってもらえるのは俺も嬉しいけど……えーっと、まあなんだろ。これからも一緒に作る時間はあるんだし息抜きってことで。な?」
私はひろくんを見上げてじっと見つめます。私と目を合わせてくれないひろくんの目は泳いでます。
「なんか必死だねぇ。ひろくんがそんなに水族館に行きたがるって珍しいよね? そんなに好きだったっけ?」
「あぁいや、もちろん水族館は好きだけど、どちらかと言うと楽しそうにするゆめを見ると言うか……」
珍しくしどろもどろになるひろくんをからかいたくなる衝動を抑え答えます。ここはひろくんの企みに乗っかってあげるのが正しい気がします。
「じゃあそう言うことにしておこうかなぁ~。私も行きたいな、水族館!」
「お! そう。よし行こう、また俺が計画するので良い?」
「うん、お願いするけど……なーんかひろくんおかしくない? ソワソワしてる」
「いや別に、普通だ」
さらに挙動不審になるひろくんに疑問を持ちながらも、水族館行には行きたいので了承します。
う~ん怪しいなぁ~。
私はひろくんが何を企んでいるのか気になりながらも、水族館で何を見ようかなと考え始めてしまいます。
────────────────────
【裕仁のターン】
水族館へ行く当日俺は駅から出てゆめを迎えに歩いている。
色々と考え事をしていたらあっという間に家に着く。
「あ、ひろくん!」
家の中で待っていても良いだろうにわざわざ外で待ってくれてたゆめが手を振る。ご近所さんの噂になってそうだが、付き合っているんだし堂々と……いやむしろ可愛いゆめを自慢したい。なんて思いながら軽く手を振り返す。
「日差しも強いし中で待ってても良かったのに」
「へへへ、楽しみで出てきてしまったよ」
「そこまで楽しみにしてもらえるとこっちも嬉しいな」
手を繋ぎ水族館行きのバスに乗るため天神へと向かう。因みに前回は山口だったが今回は地元の福岡の水族館へと行く。
***
「ねえ、ねえこのパフェのバナナ、イルカになってるよ!」
嬉しそうにパフェを突っつくゆめを見ながらいつも通り可愛いなぁとか思いながらも、もっと見たい気持ちが沸き上がる。
「お~い、聞いてる? この後イルカのショーの時間だよ。そこからペンギン見て、アシカに魚をあげてねっ! それからそれから──」
パンフレットの地図を広げて楽しさを爆発させたような表情を見せながら話しかけてくる。
前回も楽しんでたって言ってたけど、今回は前回よりもテンションが高い気がする。やっぱりどこかでメシマズを告白することを気にしてたんだろうなって思う。
まあ俺は水族館も楽しんではいるが、どちらかと言うと水族館を楽しむゆめを楽しむ上級者としてここにいる。
変態ではない。そのなんだっけ……紳士だ。
***
「イルカもアシカも近いよ! すごい! そう言えばリニューアルして1回しか来てない気がするけど、近いといつでも行ける気がして逆に行かなくなるのかも」
「あぁ、そんなものかもしれないな。年パスとか買ったら定期的に行くようになるかも」
「おぉ⁉ それはなんて素敵な提案! 採用!」
イルカショーの休憩時間『年パス』の言葉に心奪われているのかゆめは頭に花を咲かせている感じでぼ~~としている。
うむ、可愛い。
***
「さっきも通ったけどここは九州各県の海を再現してるんだよね。熊本は森みたいだね」
「あぁ、各県の特徴ある海が再現されてて面白いよな。同じ九州でも海の中ってこんなに違うんだって初めて知ったよ」
「うん、私も初めて知ったよ。あっ! あっち行ってみようよ。ほらやっぱり福岡だから玄界灘だって! うわぁ~迫力すごいよ」
テンションの高いゆめに手を引かれ水槽の方へと歩みを進める。
足元から天井にむけ湾曲する玄界灘水槽を2人で眺める。時々水が追加されてるのか海面が波打つ音が響く。
「今日は人が少ないね。平日だからかな?」
「多分な」
水槽を真剣に眺め魚を楽しそうに見るゆめの頭上からキラキラと水に揺らめく光が降り注ぐ。
そんな姿を見て本当に綺麗だと思った。
よく恋は脳が誤作動してるだけとか言うけど、そんなのどうでも良いじゃないか。今のこの気持ちに嘘はない。
俺はゆめが好きだ。ずっと一緒にいたいって心から思っている。
でも思っているだけではダメで言葉に、ときには形にすることも大事なんだ。だから俺は喉を鳴らして唾を飲み込むと意を決して鞄の中に手を入れる。
「ゆめ」
「ん?」
俺は鞄からリングケースを出すと震える手で開ける。
ゆめは中身を見て体を小刻みに震わせ目を大きく開き固まってしまう。
「結婚してほしい」
ゆめは言葉を発することなく涙をボロボロこぼし始める。
その場で涙をこぼし続けるゆめを抱きしめるとしばらく落ち着くまで待つ。
やがて顔をあげると、目に溜まった涙を指で拭いながら潤んだ瞳で俺を見つめる。
「うん、私の方こそお願いします」
涙目で笑顔を見せてくれるゆめの左手の薬指に婚約指輪をはめる。
左手を水槽の光に掲げ涙の跡のある顔で笑顔を見せるゆめ。
もともと好きだったが、あれだけ一生懸命になって料理を覚えて練習しているゆめを見てたら、この人以外いないだろうって心から思った。
俺との結婚をお母さんに認めてもらうために頑張っているってことを考えれば断られないだろうって気持ちもあったが、万が一断られたり「料理を極めるまで結婚はしない」とか言われる可能性もあったかもしれないとか考えるとやっぱり返事がもらえるまでは不安だった。
ほんと……緊張したぁ~っっっっ
緊張で汗ばんだ手をハンカチで拭い、いつもと違う感触のゆめの左手を握って水族館を俺たちは巡る。
────────────────────
【再び夢弓のターン】
それで冒頭な訳ですよ。
左手でキラキラ輝くダイヤの婚約指輪を天井の照明に向け、にやける。
できたらいいなって思っていたけど、まさか私がひろくんと結婚できるなんて夢ようです!
今の私の心を表してるかのようにキラッキラッに光る婚約指輪を抱きしめてベットの上を転がり回ります。
よし! お母さんに準備が出来たと言おう。私が出来るってところを見せてお母さんを認めさせてやるんだ!
まってろよラスボス!
勢いよく振り上げた左手の拳にキラキラ光り輝く結婚指輪を見た私は顔が緩んでしまい、再びベッドの上をゴロンゴロンと転がってしまうんです。