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私、結婚します

3 - 第3話 最悪の月曜日⑵

♥

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2024年12月12日

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◻︎親友の早絵


「で、またその夢を見てそんな悲壮な顔してるわけだ。はい、これ飲んでシャキッとしなさいよ、チームリーダーなんだから」

パーテーションで区切られたオフィスの一角。机に突っ伏してうなだれる私に早絵さえが熱いコーヒーを淹れてくれた。


「あー、ありがとう」


ふうふうして一口飲む。深煎り豆の香りと、爽やかな苦味が寝ぼけた頭をスッキリさせていくようで、沁みる。


「はぁー、どうしてこう、他人が淹れてくれるコーヒーって美味しいのかね?いいよねぇ、早絵の旦那さんは」


「旦那にはこんなに丁寧にコーヒー淹れたりしないわよ。家事も育児も私がやるのが当たり前みたいに思ってるヤツに、そんなサービスしないって」


進藤早絵。私と同期入社で同じ総合職だったけど、5年前に結婚して出産して今は一児の母。育休明けで、今はまだ短時間の事務仕事をしている。共働きで郊外に一戸建てを買うのが夢…らしい。


「夢かぁ…なんでいまだにアイツのことなんて夢に見るんだろう?」


「私さぁ、茜からその話を聞いた時、本当にただの夢かと思ったわよ。なのに現実だったなんてね。デートにきた彼氏が“俺は結婚するから式には来てよ”って、そんなバカげたこと言う男が、いるなんて信じられなかったもん」


「ところがいたんだ、これが」


「前触れ…みたいなものはなかったの?」


早絵に言われて、思い出してみる。



「前触れかぁ。“茜は、付き合うにはいい女なんだよな、めんどくさくなくて”って言われたことはある。それって今思えば、結婚したい女じゃないってことだよね?」


「遊べる女と結婚する女は別!ってことだったのか。それにしても、久しぶりのデートって時に婚約者を紹介するとかさ、バカにしてるよ」


「それは…。でも、ずっと話したいことがあるって言われてたのを、忙しいからって先延ばしにしてたのは私なんだよね」


もういまさら考えてもどうにもならないことなのに、たまにこうやって夢に見るから、いつまでもあの時のショックが抜けないのかもしれない。


「もう8年も前のことなんだからさ、忘れたいよ」


「忘れたい…か。それならやっぱりほら、新しい恋をしなさいよ!女の恋は上書きされるんだから」


ぽん!と私の背中を叩く。


「えー、恋なんかもういいよ、めんどくさいから」


「でも、いつまでも一人でいるわけじゃないでしょ?」


「あ、いい、一人でいい!もうずっと一人で生きて行くから」



ぴこん♪


テーブルに置いたスマホのアラームが、会議開始5分前を知らせた。


「あ、役員会だわ、行かなくちゃ」


「頑張ってね!女性みんなの憧れの出世コースなんだから」


「ほーい、が・ん・ば・り・ま・す!」


私は資料のファイルを持って、エレベーターへ向かった。誰もいないエレベーターの中で、ほっぺをパンパン!と叩いて気合いを入れた。







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