テラーノベル
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注意事項は《前置き》を参照してください。
お久しぶりです。皆様。それでは、お手を拝借。離してはいけませんよ?もしかしたら、次元の狭間に落ちてしまうかもしれませんから──────
戦闘訓練をこなした後。私は再び客室へと足を運んでいた。無論、疲れきった体を寝て癒すためである。身体中が筋肉痛で痛む。さっさと寝てしまおう。私は夜ご飯も食べずにベッドに飛び込む。この硬いベッドは多分いつになっても慣れることはないだろうな、なんて思いつつ、疲れていたこともあって、あっという間に深い眠りについた。
──────夢を見た。目の前には1人の少女が、黄色の花畑に座っていた。そして、近くには歳の近い男の子が2人ほど座っていた。何かを話しては、3人で談笑している。そっちに向かおうと、私は足を動かすけど、なぜだか足が動かせない。いや、わかっている。これは夢なのだ。しかし、私は何かに惹き付けられるかのように抵抗を始めた。私は必死にそちらに行こうともがく。もがいて、もがいて。でも、それに反比例して足はその場に固定されたかのように動かない。なんで、なんで!!焦りで汗がたらりと頬を伝う感覚がした。
その3人は私に気づいたのは振り向く。柔らかく笑う彼らは手を振ると同時に光になって消えてしまう。───と、同時に花畑に溢れた色が急速に失せていく。そして、色を失くした花が強い風と共に散っていく。───どうしてこうなってしまったのだろうか?
バッと目が覚め、勢いのまま起き上がる。息が苦しくて、思わず肩で呼吸する。はっはっと本能のままに空気を求め、自身の胸近くの服を強く握りしめる。まるで、悪夢でも見ていたかのようだ。しかし、既に夢の内容は思い出せず、いくら頭を捻っても、もう二度と思い出すことはできなかった。はぁ、と深いため息をついて、ベッドに再度寝転がる。慣れない環境だからだろうか。夢見心地が悪くない。いい夢が見られるギフトだったら良かったのになー、なんて安易なことを考えつつ、私はさっさと軍服に着替え、左手に時計型デバイスを身につける。若干もたつきながらも、マップ機能を使い、食堂へと向かう。
行く途中にすれ違うのは私よりも小さい子や、かと思えば大人っぽい人もいるが、誰1人として大人なんかはいない。やはり、ここは異質な場所だな、なんて変わらない感想を抱く。私は、そのまま簡単に朝食を済ませ、訓練所へと向かう。
今日も今日とて刀の使い方についての訓練を終えたあと、私は客室に戻ろうと足を進めようとする。が、私はある人に声をかけられて、足を止めた。
「す、すみませぇん…。gso、…さん、で、合ってます、かね…?」
途切れ途切れで、不安気な声が背後から聞こえた。振り返ると、そこには私よりも小さい男の子がいた。雪のように白い白髪の髪に、それに似合わないきっちりとした服を着ている。そして、象徴的なのは頭上に生えたクマ耳であった。その大きな耳だけで暖かな印象と、愛らしさを感じるその子は私の目をじっと見つめていた。あ、いや。そういえば今質問されている最中だった、と思い出し私は簡単に受け答えをする。
「はい。そうですよ。なにか御用が?」
「えと、あなたの、部屋。決まりました。案内、するので、着いてきて、ください。hn先輩。この子、今日の、訓練、終わってますか?」
その子がhn先輩を見て、こくりと首を傾げながら尋ねる。先輩は満面の笑みで明るく答える。
「うん!もうバッチリ!2人とも、バイバーイ!」
そう言って、先輩は手を振りながら、逆方面へと歩き始める。…行ってしまった。初対面の人と1体1にするのは如何なものか、と文句が言いたいが、グッとこらえて、私はその子に向き直る。
「初めまして。あなたのお名前は?」
歩きながら、そう尋ねる。そうすると、その子は不安定で、あやふやな言葉で話し始める。
「ぽれ、はzn、kpsです。コード、ネームです。長い、ので。znって、呼んで、ね?」
「了解。znさんですね。よろしくお願いします。」
「よろしく、です!」
えへへ、と笑うznさんは愛らしく、幼子特有のあどけない顔立ちと、クマ耳の良い噛み合いでさらにこの子の魅力を引き立たてていた。…私なんて、可愛げのない角が生えているって言うのに。なんでこんなにも差が…と考えてしまうが、今更ギフトが交換できるわけもないので諦める。諦めは早い方が肝心なのだ。
「えと、これから。一緒の部屋、よろしく、です!」
「…?同じ部屋なんですか?私たち。」
一緒の部屋。それはつまり相部屋ということ…。え、一人部屋は貰えないの?素朴な疑問と、パーソナルスペースくらいはよこせよ、という軍隊への呆れを同時に思う。znさんは、私の質問に対し、こくこくと頷き、同意を示す。…この軍ケチだ。そんなことを思いつつも、いつの間にやら部屋の前まで来ていたらしい。
とても、可愛いとは言えない扉だった。金属でできた扉には、鍵穴なんてものも、ドアノブもなく、一見ただのオブジェにしか見えない。けれど、znさんは慣れた手つきで手袋をはめ、扉の右角を2回、真ん中を3回叩くと扉の一部が開き、暗証番号を入力するタイプの数字の羅列が並ぶ。
…思いのほか厳重な扉に驚きつつもznさんは、ピ、ピ、ピ、ピとテンポよく押していく。
───ガチャリ。
心地の良い音ともにその扉はようやく開く。見た目は明らかに昔の作りなのに、ここまで最新のセキュリティが施されてるとは、恐れ入る。
私がそのまま部屋に入ろうとすると、znさんは、すぐにその行動を静止し、手につけた手袋を扉の向こう側に投げつける。
───ジュッと燃える音が響く。手袋はあっけなく燃え尽き、燃えカスが地面に落ちると、そこらじゅうからレーザーガンで打たれて跡形もなく消える。
「───え?」
「侵入者、対策、らしい、です。正しい、手順、学べば、平気、です!」
「いや、え、やりすぎじゃないですか…?」
いくらなんでも、ここまでやり込む必要はあるのだろうか。変なところでお金を使うなよ、と思っていたら、znさんは無言で頭を振って、私の意見を否定する。
「昔、侵入されて、十数人、死んだ、らしいです!だから、厳重に、なった!」
「あ、えぇ…。なる、ほど?」
サラリと人死にが大量に発生していることに驚く。いや、現実味が無さすぎて、驚くことしか出来なかった。znさんは特段気にすることもなく、正しい入り方を教えてくれる。それはその場で3回ジャンプしてからさらにもう一度ジャンプして飛び越える、というものだった。この部屋の仕組みはだいたい振動によって作動しているらしく、また、止めるためにも振動を正しい回数起こさないといけないらしい。ややこしい技術だし、こんなにも古臭い扉にこんな最先端の技術を使う無駄さが…。いや、実際に人が死んでいるのだ。そりゃ慎重にもなるだろう。考えを改め、私は言われた通りの手順を踏んで、その扉の向こう側へと飛びこむ。
───可愛らしい部屋だった。ベージュの壁に、白いふわふわの絨毯がひかれた床。部屋は線対称に広がっており、半分はznさんで、半分は私、ということだろう。部屋の中心にはカーテンがあり、一応部屋割りで悩むことは無さそうだ。
znさんの部屋には、クマのぬいぐるみが沢山置いてあり、なんとも可愛い趣味だな、なんてクスッと笑ってしまう。znさんは、褒められた、と思ったらしく目をキラキラさせて、クマのぬいぐるみをひとつ持って、私にんっと渡してくれる。
「くれるんですか?」
「同じ部屋になった、記念!これから、よろしく、お願い、です!」
ふわふわと笑うその子が愛らしくて、思わず頭を撫でる。
「君、いくつ?」
私がそう尋ねると、znさんは両手でひとつずつ数え始める。数十秒じっくり待つと、両手を広げながら、
「ぽれ、きゅーさい!この軍、入って、3ヶ月目、です!」
…この軍には小さい子しかいないのか?それとも私がここでは大人なだけなのか?そんな疑問を抱きつつ、私は撫でる手をやめずに、その子の頭を撫で続ける。…まだ、小さい子供が、こんな危険なところにいるなんて、可哀想、の一言でしか言い表せない。
「んへへ。ぽれね、喋るの、上手くない、です!意思疎通、ゆっくりだから、難しい、です!だから、たくさん、話してくれて、嬉しい、です!」
たどたどしい言葉だったけれど、必死に言葉をつむぎ、感謝を伝える様は心に来るものがあった。嬉しい気持ちと、こんな小さな子すら巻き込む戦争が私は許せなかった。ギフトがある。だからこそこの戦場に呼ばれてしまったのだ。
───ギフトがなければ、そこら辺で野垂れ死んでいたかもしれない、と思うとギフトがあることが悪い、なんて思えなかった。この子に、幸あれ。そんなことを思いながら、頭を撫でるのを止めて、話す。
「今日はもう寝ましょう。寝不足は戦う時に響きますから!」
実戦をやったことが無いものがこんなことを言うなんてバカバカしいし、説得力もないが、少しでも明るくあって欲しかったのでせめてものことだった。
「…!はい!もう、寝る!早めに、寝るの、大事、ですから!」
そんな心遣いを分かってくれたかどうかは分からないがznさんはにこにことしながらそう言ってくれる。
きっと、この子は…。そんなことを思いつつ、私たちは各々自身のベッドへと向かう。カーテン越しなのでもう寝ているかどうかは分からない。けど、言わずにはいられなかった。
「おやすみなさい。…良い夢を。」
そう、一言言い残して私は夢へと落ちる。
訓練しては寝て、訓練しては寝てを繰り返すこと7日目。まだ、ここに来て何日かは覚えている。けど、そろそろ曖昧になりつつあった。訓練ももうただの日常に過ぎず、どことなく退屈であった。znさんはいつも明るく話してはくれるが、話題がないのか、もしくは覚えてないのか。いつも同じ話をする。まだまだたどたどしい話し方で、可愛らしいとも思うが、意思疎通が大変だとも思う。難しい言葉が分からないらしく、教えてはいるものの、覚えてはくれなかった。
こんな日常を過ごしていたある日。mmさんに呼び出された。
呼び出されたのは私だけではないらしく、司令室にいたのはmmさんとhn先輩だった。先輩は既にソファに座っており、こっちこっち!と手招きをしてくる。私もおずおずとソファに座った。
mmさんは相変わらず無表情だったが、いつもより真剣な雰囲気を感じる。…いや、初日以外会ったことがないので、それと比べただけだが。mmさんは固く閉ざされた口を開け、話し始める。
「…gsoさんの初任務が決まりました。今回で、hnさんとgsoさんの相性度チェックと、実力を見させてもらいます。」
「はーい!隊長さん!それでそれで?gsoの初任務の内容は〜?」
相変わらず陽気なhn先輩が話をさっさと進めていく。重苦しい雰囲気が先輩の存在だけで吹き飛ぶほどに明るかった。
「今回は防衛戦です。敵が戦線をあげてきたので、戻すまでが仕事です。」
「ふーん。なら蒼燿国まで行けばいいの〜?」
「…?蒼燿国ってなんですか?」
知らない単語が聞こえ、思わず首を傾げる。そういえば、我々の国の名前については以前質問されたから覚えているが、ほかの国については知らないな、と思い出す。…あれ?私地理について全く覚えてないな?と、今更ながら危機感を覚える。
「蒼燿国っていうのは私たちと今敵対してる国ですね。一言で言うなら星神を唯一神として信仰している国ですね。…今、私たちの国との戦闘でもう2年経ちました。」
「…なんで、なんでですか…?こんなことをしてまで、争う理由はなんなんですか…!?」
蒼燿国が何かを悪いことをしてしまったのだろうか。はたまた、我々の国が無礼を働いたのか。それでも、命を奪い合うほど残虐なことをしていい理由にはならない。けれど、実際、それが起きていると思うと気になってしまう。私の中で子供らしい部分である好奇心が湧き上がる。自分でも不謹慎なことはわかるが、それにブレーキを踏めるほど大人ではなかった。
「私達には教えてくれませんよ。大人は。知らない、としか私は言えないですね。」
「ん〜。hnも知らないな〜。hnが軍に入ったのとほぼ同時に戦争始まってたし。どうしてだろ?」
「そう…なんですね。」
どうやら分からないらしい。少しばかり肩を落としてしまうが、そんなことをしている場合でもなかった。
「結局、私は先輩と一緒に蒼燿国という国に行けばいいんですかね?」
「…いえ、蒼燿国に前線をあげられまして。それを引き戻さないと行けません。なので、我々の国で戦うことになります。」
「船乗れないの〜?」
「そうですね。今回は設置型ワープロを使っての移動です。そこからは歩いて向かってください。」
「せっちがたわーぷろ?」
知らない単語にまたもや聞き返してしまう。が、迷惑がられることなく丁寧に教えてくれる。
「あ〜、この国の重要都市には必ずワープロが設置されてるんです。で、ワープロっていうのは、他に設置されたワープロならすぐにでもワープできるんです」
つまり、元々我々の国には至る所にワープロっていうものが設置されており、ワープロを使えばほかのワープロに移動できる、というわけか。…めっちゃ便利やん。
「えと、なら私たちは二人で戦場に向かえばいいんですね?」
「はい。その通りです。敵を全員殺して帰ってきてください。死ぬとしても死んだ痕跡を絶対に残さないでください。」
突然不穏な事を言われて戸惑う。ん、え?
「どういうこと、ですか?」
「ああ。さっきも言いましたが蒼燿国は唯一神である星神を信仰してるんです。で、神様からギフトを頂いている私たちは絶対に信仰対象です。言葉には言い難い酷いことをされるでしょう。」
その真剣な眼差しに私はのまれるがままにこくこくと頷く。言葉に言い難いほどのってなんですか?と聞ける雰囲気ではなかった。
「それでは、そろそろ行ってもらいましょうか。説明に時間をかけすぎてもあれですし。私もそろそろ事務仕事に戻らないと行けませんから。」
そう言って、hn先輩にある程度の情報を伝えた後、この場は解散となり、私は先輩に連れられるがまま、この軍に設置されているというワープロに向かう。
軍の地下室にあるその部屋に手をかけ、ドアノブを回す。そこには岩壁で覆われた、小さな部屋があった。だが、明らかに異質な”それ”があった。
青白い光を自ら発し、その魔法陣が床全体を覆っている。私たちが足を踏み入れた途端魔法陣はクルクルとまわりだし、まるで生き物のように脈打つように見えた。その光は私への道標になると同時に、このどうしようもない世界へ引きずり込まれそうになる。パッとそこから目を離し、違う場所を見る。他にも魔法陣の周りはメタリックな素材の鉄やら鉱石やらがはめ込まれており、近未来的な風貌をしていた。
私は、一瞬躊躇う。この魔方陣の上に乗ったら、私は、もう引き返せない。今までとは違う。今から向かう地で私は人を殺すのだ。今まではただの訓練で、人を殺したりはしなかった。だが、ここから先はどうなってしまうのか?──────殺人鬼に成り下がるのだ。ただの、人間が。人殺しの汚名を被るのだ。
「大丈夫。戦場で殺す命は命なんかじゃない。私達が生きるのを邪魔する障害。私たちは自分のために、みんなのためにその障害を取り除かないといけない。…平和のために、私達は犠牲になる。被害者なんだ。」
慰めのような、言い訳のような言葉を先輩が吐き出す。その目は明るい先輩の輝かしさはなく、覚悟が決まった、軍人の目をしていた。私は、その雰囲気に圧倒される。…先輩もまた、この戦場の犠牲者であることを忘れてしまっていた。この人は、ずっと、ずっと人を殺し続けていたのだ。並外れた覚悟があって、今、私を導いてくれるのだ。
「私たちは、生物なんだ。生きるために殺すのは自然の道理だよ。気にしちゃあいけない。」
「…わかってます。今、私も行きますから。」
私はhn先輩の手を取り、ワープロにのる。──────戦場に行くために。人を、殺すために。
ここで幕を閉じます。皆様、お久しぶりです。ショコラです。今回の物語をご覧になってくださり、感謝の意を示させていただきます。
この物語では様々な国名が出てきますが、どれも実在するどこの国とも関係ありません。また、どの国も参考にしていないです。
次回は本格的に戦闘描写を入れるつもりです。お楽しみに。
それでは皆様。また、お会いしましょう…。
さよなら
コメント
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し、知らないうちに最新話が.....次回から戦闘...楽しみですわ!!
面白いです!
いろは
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#グロ表現あり
観測者l!!@死ぬ気で投稿する