翌朝。村のはずれの森に、奇妙な男の姿があった。
焦点の合わぬ目、ゆっくりとした歩み、ずるずると引きずる剣。
声をかけても反応はない。
男はただ、太陽の昇る方角へ向かって進み続けていた。
近づいた村人のひとりは、勇気を出して手を伸ばしたという。
けれど、その人影は次の瞬間、風に舞う灰になった。
それは、もはや“勇者”ではなかった。
感情を失い、ただ本能で温もりを求めて彷徨うだけの存在。
“太陽に憑かれたもの”と、村人たちはささやいた。
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