ごきげんよう、じゃんぬです。
2025/03/08リメイク致しました。
攻め:フランス je『ジュ』
受け:イタリア io『イオ』
⚠️史実というか事実あり
⚠️政治的意図なし
「ねぇイタリー…今夜、どう?」
ある夜のこと。
頬を染めた妖艶な美男子ことフランスは、自身の恋人であるイタリアの耳元で囁いた。
ヨーロッパの二大美食家フランスとイタリアは、何故か付き合っている。
料理にもファッションセンスにも、それぞれ違うこだわりを持つ二人だが、なんだかんだ上手くやっているらしい。
正確に言うと、上手くいっていた、はずだった。少し前までは。
「ごめんフランス…今日はちょっと、疲れてるんね…」
「そっ、か」
フランスのビッグラブを、これまた大きな愛で受け止めてくれていたはずのイタリア。
しかし突然、彼がフランスの誘いを断り続けるようになったのだ。
(いち、に、さん…もう一か月もしてないよ、イタリー…)
もう寝ると言ってシーツを被った自身の恋人の背中を、フランスは寂しい目で見つめる。
暗闇の中、イタリアの背は心なしか小さくなったような気がした。
「ふぁ…朝か…bonjour, イタリー♡」
フランスは、カーテンの隙間から差し込む光で目を覚ました。
寝ぼけ眼のまま、隣で眠る恋人に手を伸ばそうとして──はたと止まった。
「…あれ…?」
いつもお寝坊なイタリアが、いない。
シーツの下に手を這わせると、イタリアがいたはずの場所は、既に冷たくなっていた。
「…ッ!?どこに!?」
今日は日曜日、仕事なんてないはず。
普段なら日曜日は、二人でベッドで昼頃までダラダラいちゃいちゃするはずなのだ。
もしかして…飽きられた…?捨てられた…?
最悪の想像が頭の中を駆け巡り、フランスは慌てて寝床から飛び起きる。
『ちょっと出かけてくるんね、すぐもどる』
簡潔な置手紙。
ノートの切れ端のような、その紙切れを机の上に発見したフランス。
はぁ…と彼が吐いた溜息は、一人ぼっちの空虚な空間に溶けていく。
「…探しに行こ」
どこにいるかは皆目見当もつかないが、兎に角フランスは素早く身支度を整え、ドアを開いた。
鍵が外れる音とともに、少し肌寒いような外気が吹き込んでくる。
「「あ」」
ドアを開くとそこには、立ちすくむイタリアの姿があった。
顔を見合わせた二人は、暫く無言で見つめ合う。
先に沈黙を破ったのはフランスだった。
「…ッねぇ!?どこ行ってたの!?je、心配したんだけど!」
「ぁ…えっと… ごめん…」
「もう…こんな朝っぱらから…風邪ひくってば!ちょっと早く、早く中入って!ほら!!」
「うん…ごめんなんね…」
まくしたてるフランスに、イタリアは肩を縮めて謝った。
「それで…どこに行ってたんだよ」
「ちょ、ちょっと散歩に…」
──あ、嘘だ。
その瞳を見て、フランスは直感で見抜いた。
芸術センスはピカ一のフランスは、勘が鋭い。
それでも、フランスはそれを咎める気にはなれなかった。
揺れる瞳、強張った笑み… 誰にでも隠したい秘密の一つや二つはあるだろう。
信用されていないと思って、傷つかないわけではないけれど。
おずおずと家に入ったイタリアは、ごめん、とか細い謝罪を残して、フランスの横をすり抜けた。
「イタリー…最近ごめんしか言わないな」
何かが決定的に変わっていく。
フランスは、もう何度目か分からない溜息を吐いた。
その日を境に、イタリアは家を開けることが多くなった。
一方のフランスとて暇ではない。
依頼された仕事、趣味の個展の準備、目の回るような忙しさに、次第にイタリアと過ごす時間は減っていった。
プルルル…
『──Hello?』
「Allô~!あれ、ドイツ?」
仕事に向かう道中、着信に気づいたフランスは、歩きながら電話に出る。
どうやら、同僚のドイツからのようだ。
『ああ、忙しいところすまない。実はその、トラブルがな…』
「なに、また仕事〜?困っちゃうなぁ」
歯切れの悪いドイツの言葉に、フランスは思わず顔を顰めた。
このところ依頼が立て込みすぎている。
おかげで、様子のおかしい恋人とゆっくり話すこともできやしない。
と言っても、なんとか暇を作っても、当の本人にはさらりと逃げられてしまうのだが。
『文句はアメリカとロシアに言ってくれ、原因は奴らの喧嘩だからな』
「うーわ…最悪…ドイツ何とかしてよ〜!日曜日やっといて」
『無理だ。うちで日曜日の業務が法律で禁止されてるの、お前知ってるだろ?というか、他の仕事を持ち帰るので手一杯だよ…』
ドイツでは日曜日は休息日。
ほとんどの店が閉まってしまう。
だとしてもこの堅物人間は、家に仕事を持ち帰って片付けるのだろう。
『もう頼めるのはお前だけなんだ!イギリスは信用できないし、日本は死にかけてる!』
「はぁ… 了解、この件はjeが片付けとくね』
ドイツの言葉にため息をついて、忙しない道をカツカツと音を立てて歩む。
ようやく休暇が取れそうだったのに、どうやらまた、仕事が増えてしまったらしい。
『ああ、よろしく頼む』
スマホを耳にあてたまま、何の気なしにフランスは顔を上げた。
品のよさげなカフェが目に留まる。
(あ…ここ、イタリーと今度来てみようかな)
なんて考えていた彼の視線が、見覚えのある顔を捉えた。
「──……ッ!?」
『フランス?どうかしたのか?フラ──』
店の前に。
数人の男に囲まれたイタリアがいた。
フランスの手からスマホが滑り落ちて、道にたたきつけられた。
視界の端で、画面がバキバキに割れる。
でも、スマホなんてどうでもいい。
無我夢中でイタリアの元へ駆けていく。
飽きられた?嫌われた?
イタリアが自分を振って、他の男と並んでいる姿がフランスの脳裏に浮かぶ。
「そんなの、絶対に許さない…ッ!」
「ねえいいじゃーん、ちょっと遊ぼうぜ」
「君可愛い!スタイルもいいし!」
「いや、あの…io…帰らないと…」
「ちょっとだけだって!美味しいパスタの店知ってるんだ」
「ぱすた…い、いやぁ、io恋人がいるから」
「じゃあ…ピザは?どうせ、 彼氏さんにはバレないよ!」
「ぴっつぁ…でもioはフランスのこと、裏切るなんてできないんよ…」
イタリアは本気で困っていた。
ナンパごとき、いつもならさらりと躱せるはずなのだが、今日はしつこい。
しかも、パスタやピッツァで誘惑してくるのである。
いっそのこと、警察でも呼ぼうか…そう考え始めたその刹那だった。
「──ごちゃごちゃうるせぇよ、早く来い!」
「…ッ!やめてッ!」
煮え切らない態度をとるイタリアに、機嫌を悪くしたある男が、彼に手を伸ばしてきたのだ。
にやにやと嗤う輩どもに取り囲まれたイタリアは、さっと青褪める。
こんなの、知らない。
怖い。こわいこわいこわい。
(たすけて…フランス!)
カタカタと震えるイタリアが、ぎゅっと目を瞑った──その時。
「──誰の恋人に手を出してるんだ?死にたいのか?」
イタリアは突然、背後から抱きすくめられた。
嗅ぎなれた香水の香りが鼻を掠める。
途端に安堵して、イタリアは恋人の名を呼んだ。
「フランスっ!」
呼びかけにこたえるかのように、フランスはイタリアを強く抱きしめる。
イタリアは、フランスのいつもと違う真剣な表情に、きゅんと胸がときめくのを感じた。
たじろぐ男らを見下ろして、フランスは更に畳みかける。
「今なら見逃してやる、とっとと失せろ」
「ふらんす…♡」
余計な場面を見せないようにとの配慮からか、フランスはイタリアを背に庇った。
そして彼は、親指をぐっと地面に向けて煽る。
そんなフランスに、彼らは噛み付くように怒鳴り返した。
「だ、誰だよお前!?」
「偉そうに!お前が失せろ!」
「俺らをナメんじゃねぇぞ!!」
「──あ?」
フランスの冷たい声で、辺りは凍りついた。
「jeのイタリーに手を出しておいてその言い分か?…ふざけるなよ」
「フランス…///」
「この【自主規制】…【自主規制】して【自主規制】した後【自主規制】してやろうか」
「ふらんす…?」
突然ピー音が増えたフランスの言葉に、イタリアはときめきではなく不安を覚えた。
そんなフランスの気迫に、男たちは尻尾を巻くように退散していく。
「帰るよ、イタリー」
「う、うん…」
あれだけ騒げば、周囲の視線を集めてしまうのも当然だ。
イタリアは、フランスに腰を抱かれながら、肩身の狭い思いで店を出た。
その日の夜。
ちゃんと話し合おう、と約束した仏伊。
「はぁ…」
湯あみを終えたイタリアは、緊張の面持ちでベッドにちょこんと腰かけていた。
お気に入りのワインを開けてグラスを揺らすが、 何だか味が分からない。
ため息をついたイタリアは、サイドテーブルに飲みかけのグラスを置いた。
「──イタリー」
そんな中、寝室に入ってきたフランス。
落ち着きのあるテノールボイスに、イタリアはびくりと肩を揺らした。
ベッドランプ一つが薄暗い寝室を照らしている。
「ふ、フランス…」
フランスはイタリアに無言で近づくと、その端正な顔を寄せた。
──あ、キスされる。
気がつくとイタリアは、フランスを押していた。
拒まれたフランスは、寂しそうな顔でイタリアを見つめる。
イタリアは、自分の無意識の行動に震えながら、じわじわと涙を浮かべた。
「あ…ゃ…ioなんで…ッ?ごめッ…ごめんなさ…ッ!」
「イタリー、jeの目を見て?深呼吸しよう」
イタリアの冷えた指先を両手で包み込んで、フランスはイタリアの揺れる瞳を覗き込んだ。
すーはー、と二人の呼吸音だけが部屋に響く。
「ゆっくりでいいよ…何があったか、教えてくれないかな」
震えるイタリアを、フランスはそっと抱きしめた。
「ぁ…うぁ…グスッ…ふらんす…ッ!うぅ…ッ!」
フランスの優しい声に、イタリアはぽたぽたと涙を流した。
「ふらんす…あ、あのね…あのねッ…」
「うん、どうしたの?」
しばらくして落ち着いたイタリアは、しゃくりあげながら声を発した。
フランスは、自分の胸に縋り付く恋人の背を、とんとんと優しく叩く。
そして、フランスの肩に顔を埋めたイタリアは、叫ぶように告げた。
「──io、仕事なくなっちゃった…っ!!」
「…え?」
うわぁぁぁぁぁぁぁん!と堰を切ったように泣き出すイタリアを宥めながら、フランスは思った。
え、それだけ?と。
普通の人にとって、失業は一大事だろう。
「うう…ズビッ…失望した?失望したよねぇぇぇ!捨てないでぇぇぇ!」
「え、待って待って、それだけ?」
しかしこのフランスパン男、イタリアが仕事を失ったら、ずっと家にいてくれるじゃん最高!くらいしか考えていないのである。
「え、他に好きな人ができたとかじゃなくて?」
「ioがフランス以外を好きになるわけないじゃんんんん!」
「え、仕事なくなっただけ?」
「嫌いにならないで…すてないでよぉぉぉ!」
その言葉を聞いて、フランスは口角が上がるのを抑えられなかった。
イタリアに嫌われていないどころか、貴方に一途と宣言されたのである。
「ぅ…なんで笑ってるの…やっぱりioがダメなやつだから…」
「そんなわけないでしょ!jeは、いつイタリーに振られるか心配だったの!」
「ioがフランスを振るの!?なんで!?ioが振られるんじゃなくて!?」
見事なすれ違いである。
「だってイタリー…最近話してくれないし、いっつもどっか行っちゃうし」
「それは…クビになったっていったら別れられちゃうかなって、怖くて面と向かって話せなかったの!最近はずっと職探ししてたんね…」
「…ナンパされるし」
「それはioのせいじゃないって!」
最近めっきり減っていた、目と目を合わせて話をすること。
フランスのスカイブルーの瞳と、イタリアの赤と緑のオッドアイが交差する。
「無職になったからって別れるわけない」
「でも…貯蓄だって減る一方だし…フランスの将来のことを考えると、ioと付き合い続けるのは…」
「無理、嫌だ、死ぬ。イタリーと別れるくらいなら、イタリーを殺してjeも死ぬ」
「極端すぎない?」
するり、とフランスはイタリアの左手を取った。
「ね、結婚しようよ」
「え?は?けっこん?」
「うん」
ちゅ、とイタリアの左薬指にキスを落とす。
それだけでイタリアは、頬を赤く染めた。
「仕事があろうがなかろうが、jeが愛するのはイタリーだけだ。イタリーだから、jeは君が好きなの。頭の先からつま先まで、あばら一本から五臓六腑まで、jeはイタリーのすべてを愛してる」
「五臓六腑…」
「君に触れられなくて、jeはずっと寂しくておかしくなりそうだった。君がいないとだめなんだ、君じゃないとだめなんだ!」
「i…ioも…寂しかった」
愛する恋人の目をしっかり見据えて、フランスは息を吸った。
何度も練習したイタリア語で、自分の愛のすべてを示したい。
「Ti adoro…jeと結婚して、イタリー」
喜びで胸が詰まって、声が上手く出せない。
イタリアは目を潤ませて、うん、うん、と頷いた。
そして、イタリアもまた、フランス語で愛を囁く。
「Je t’aime,フランス……わっ!」
感極まったフランスがイタリアを抱き寄せると、二人はどちらからともなくキスをした。
ありがとうございました。
次回はR18になると思います。
G8の中で、出生率が下がっているのって、イタリアと日本が顕著なんですって…。それに対して、高出生率を維持するのが、フランスなのだとか。
イタリアは経済の鈍化と国民の所得低下が、出生率低下につながっていると聞きました。
いや、これは…絶望的萌え!書くしかない!!
高出生率🇫🇷✕お金がなくて乗り気じゃない🇮🇹でカップリングした経緯になります。
全然手を出したことのない純愛モノでしたが、いかがだったでしょうか…?
純愛すぎて禁断症状が出てきたので、次回はガチエロを投稿いたします(キリッ)。
フライタが好調なら、アメ日とかでシリーズ投稿しようかな、とも考えております。
長文失礼致しました。
それではまた、ごきげんよう。
コメント
5件
あなたは文豪だ。
あらまぁ尊い…腐腐腐…ぐ腐腐腐腐腐…
ええやん