ごきげんよう、じゃんぬです。
攻め🇫🇷:フランス
受け🇮🇹:イタリア
je:フランスの一人称『ジュ』
io:イタリアの一人称『イオ』
趣味で小説をいくつか書いておりますが、割と初めての純愛…稚拙ですがよろしければどうぞ!
⚠️史実というか事実あり
⚠️政治的意図なし
🇫🇷「ねぇイタリー…今夜、どう?」
ある夜のこと。
頬を染めた妖艶な美男子ことフランスは、自身の恋人であるイタリアの耳元で囁いた。
ヨーロッパの二大美食家フランスとイタリアは、何故か付き合っている。料理の趣向も違う、歴史的に見てもあまり仲の良いとは思えない二人だが、なんだかんだ上手くやっているらしい。
正確に言うと、上手くいっていた、はずだった。少し前までは。
🇮🇹「ごめんフランス…今日はちょっと、疲れてるんね…」
🇫🇷「そっ、か」
フランスのビッグラブを、これまた大きな愛で受け止めてくれていたはずのイタリア。しかし突然、彼がフランスの誘いを断り続けるようになったのだ。
(いち、に、さん…もう一か月もしてないよ、イタリー…)
もう寝ると言ってシーツを被った自身の恋人の背中を、フランスは寂しい目で見つめる。暗闇の中、イタリアの背は、心なしか小さくなったような気がした。
🇫🇷「ふぁ…もう朝か…*bonjour*♡イタリー…ってあれ?」
カーテンの隙間から差し込む光で目を覚ましたフランスは、イタリアに挨拶をしようとして、はたと止まった。
いつもお寝坊なイタリアが、隣にいない。
シーツの下に手を這わせると、イタリアがいたはずの場所は、既に冷たくなっていた。
🇫🇷(……ッ、どこに!)
最悪の想像が頭の中を駆け巡り、フランスは慌てて寝床から飛び起きた。
今日は日曜日、いつもなら仕事なんてないはず…!
『ちょっと出かけてくるんね、すぐもどる』
簡潔な置手紙。
ノートの切れ端のような、その紙切れを机の上に発見したフランスは、安堵と不安とが綯い交ぜになった心地に襲われた。
はぁ、と彼が吐いた溜息は、一人ぼっちの空虚な空間に溶けていく。
🇫🇷「…探しに行こ」
どこにいるかは皆目見当もつかないが、兎に角フランスは素早く身支度を整え、ドアを開いた。
鍵が外れる音とともに、少し肌寒いような外気が吹き込んでくる。
🇫🇷🇮🇹「「あ」」
ドアを開くと、そこには立ちすくむイタリアの姿があった。顔を見合わせた二人は、暫く無言で見つめ合う。
先に沈黙を破ったのはフランスだった。
🇫🇷「ねえ!どこ行ってたの?!je、心配したんだけど!こんな朝っぱらから…風邪ひくってば!ちょっと早く、早く中入って、ほら!!」
🇮🇹「ご、ごめん…ちょっと散歩に…」
まくしたてるフランスに、肩を縮めて謝るイタリア。
その瞳を見て、フランスは直感で、あ、嘘だ、と見抜いた。芸術センスはピカ一の彼は勘が鋭い。
それでも、フランスはそれを咎める気にはなれなかった。揺れる瞳、強張った笑み。誰にでも隠したい秘密の一つや二つはあるだろう。
信用されていないと思って傷つかないわけではないけれど。
おずおずと家に入ったイタリアは、ごめん、とか細い謝罪を残して、フランスの横をすり抜けた。
🇫🇷「イタリー…最近ごめんしか言わないな」
何かが決定的に変わっていく。
フランスは、もう何度目か分からない溜息を吐いた。
*****
その日を境に、イタリアは家を開けることが多くなった。
一方のフランスとて暇ではない。依頼された仕事、趣味の個展の準備、目の回るような忙しさに、次第にイタリアと過ごす時間は減っていった。
🇩🇪『Hello?』
🇫🇷「Allô~!あれ、ドイツ?」
仕事に向かう道中、着信に気づいたフランスは、歩きながら電話に出る。
どうやら、同僚のドイツからのようだ。
🇩🇪『ああ、忙しいところすまない。実はその、トラブルがな…』
🇫🇷「なに、また仕事〜?困っちゃうなぁ」
歯切れの悪いドイツの言葉に、フランスは思わず顔を顰めた。このところ依頼が立て込みすぎている。おかげで様子のおかしい恋人とゆっくり話すこともできやしない。
と言っても、なんとか暇を作っても、当の本人にはさらりと逃げられてしまうのだが。
🇩🇪『文句はアメリカとロシアに言ってくれ、原因は奴らの喧嘩だからな』
🇫🇷「うーわ…最悪…ドイツ何とかしてよ〜日曜日やっといて」
🇩🇪『無理だ。うちで日曜日の業務が法律で禁止されてるの、お前知ってるだろ?というか、他の仕事を持ち帰るので手一杯だ』
ドイツでは日曜日は休息日。ほとんどの店が閉まってしまう。だとしてもこの堅物人間は、家に仕事を持ち帰って片付けるのだろう。
🇩🇪『イギリスは信用できないし、日本は死にかけ…いや、死んでるし、もう頼めるのはお前だけなんだ』
🇫🇷「はあ…了解、この件はjeが片付けとくね」
ドイツの言葉にため息をついて、忙しない道をカツカツと音を立てて歩む。
ようやく休暇が取れそうだったのに、どうやらまた、仕事が増えてしまったらしい。
🇩🇪『ああ、よろしく頼む』
スマホを耳にあてたまま、何の気なしにフランスは顔を上げた。品のよさげなカフェが目に留まる。
あ、ここ、イタリーと今度来てみようかな、喜ぶかな、なんて考えていた彼の目が、見覚えのある顔を捉えた。
🇫🇷「──……ッ!?」
🇩🇪『フランス?どうかしたのか?フラ──』
カフェのテラスに、数人の男に囲まれたイタリアがいた。
フランスの手からスマホが滑り落ちて、道にたたきつけられた。
画面がバキバキに割れるのを、視界の端で見る。
スマホなんてどうでもよかった。フランスは、無我夢中でイタリアの元へ駆けていく。
飽きられた?嫌われた?
イタリアが自分を振って、他の男と並んでいる姿がフランスの脳裏に浮かぶ。
🇫🇷「そんなの、絶対に許さない…ッ!」
*****
「ねえいいじゃーん、ちょっと遊ぼうぜ」
「君可愛いよね!スタイルもいいし!美人さんじゃん」
🇮🇹「いや、あの…io…帰らないと…」
「ちょっとだけだって!美味しいパスタの店知ってるんだ」
🇮🇹「ぱすた…い、いやぁ、io恋人がいるから」
「じゃあピザは?どうせ彼氏さんにはバレないよ」
🇮🇹「ぴっつぁ…でもioはフランスのこと、裏切るなんてできないんよ…」
イタリアは本気で困っていた。
ナンパごとき、いつもならさらりと躱せるはずなのだが、今日はしつこい。しかも、パスタやピッツァで誘惑してくるのである。
いっそのこと、警察でも呼ぼうか、そう考え始めたその時。
🇫🇷「──誰の恋人に手を出してるんだ?死にたいのか?」
イタリアは突然、背後から抱きすくめられた。嗅ぎなれた香水の香りが鼻を掠める。
途端に安堵して、イタリアは恋人の名を呼んだ。
🇮🇹「ふ、らんす、!」
呼びかけにこたえるかのように、フランスはイタリアを強く抱きしめる。
イタリアは、フランスのいつもと違う、厳しくて冷たい声に、男らしい態度に、きゅんと胸がときめくのを感じた。
たじろぐナンパ師らに、フランスは更に畳みかける。
🇫🇷「今なら見逃してやる、とっとと失せろ」
🇮🇹「ふらんす…♡」
「だ、誰だよお前!偉そうに!お前が失せろ!」
🇫🇷「あ゛?イタリーの彼氏だが?jeのイタリーに手を出しておいてその言い分か?ふざけるなよ、この【自主規制】、【自主規制】して【自主規制】した後【自主規制】してやろうか?!」
🇮🇹「ふらんす…?」
突然ピー音が増えたフランスの言葉に、イタリアはときめきではなく不安を覚えた。
そんなフランスの気迫に、男たちは尻尾を巻くように退散していく。
🇫🇷「帰るよ、イタリー」
🇮🇹「う、うん…」
少し冷えるテラス席だからか、人はまばら。とはいえ、あれだけ騒げば、周囲の視線を集めてしまうのも当然だ。
イタリアは、フランスに腰を抱かれながら、肩身の狭い思いで店を出た。
その日の夜。
フランスに話があると言われたイタリアは、緊張の面持ちでベッドにちょこんと腰かけていた。
お気に入りのワインを開けて、グラスを揺らしても、何だか味が分からない。サイドテーブルに飲みかけのグラスを置く。
🇫🇷「イタリー」
寝室に入ってきたフランスの声に、イタリアはびくりと肩を揺らした。
ベッドランプ一つが薄暗い寝室を照らしている。
フランスはイタリアに近づくと、その端正な顔を寄せた 。
あ、キスされる。
──ドン、
気づいた時には、イタリアはフランスを押していた。拒まれたフランスは、寂しそうな顔でイタリアを見つめる。
イタリアは、自分の行動に震えながら涙を浮かべた。
🇮🇹「あ、あ、io、なんで、…ッごめ、ごめんなさ、」
🇫🇷「いいから。イタリー、jeの目を見て?深呼吸しよう」
イタリアの冷えた指先を両手で包み込んで、フランスはイタリアの揺れる瞳を覗き込んだ。
すーはー、と二人の呼吸音だけが部屋に響く。
漸く落ち着いたイタリアを、フランスはそっと抱きしめた。そのぬくもりに、イタリアはぽたぽたと涙を流す。
🇮🇹「ぁ、うぁ、ふらんす…!ふらんす…!あ、あのね、」
🇫🇷「うん、どうしたの?」
🇮🇹「io、仕事なくなっちゃった…!」
🇫🇷「…え?」
フランスの肩に顔をうずめ、うわぁぁぁぁぁぁぁん、と堰を切ったように泣き出すイタリアを宥めながら、フランスは思った。
え、それだけ?と。
普通の人にとって、失業は一大事だろう。しかしこのフランスパン男、イタリアが仕事を失ったら、ずっと家にいてくれるじゃん最高、くらいしか考えていないのである。
🇮🇹「うう…ずび、失望した?失望したよねぇぇぇ!捨てないでぇぇぇ!」
🇫🇷「え、待って待って、それだけ?jeが生理的に無理になったとか、飽きたとか、他に好きな人ができたとかじゃなくて、仕事なくなっただけ?」
🇮🇹「ioがフランス以外を好きになるわけないじゃんんんん!嫌いにならないでぇぇぇ、すてないでよぉぉぉ!」
その言葉を聞いて、フランスは口角が上がるのを抑えられなかった。イタリアに嫌われていない。それどころか、貴方に一途と宣言されたのである。
🇮🇹「ずび、なんで笑ってるの…やっぱりioがダメなやつだから…」
🇫🇷「そんなわけないでしょ!てっきりje、イタリーに嫌われてるものだと…。最近冷たかったし、いっつもどっか行っちゃうし、ナンパされるし」
🇮🇹「だって、クビになったっていったら別れられちゃうかなって、怖くて面と向かって話せなかったの!最近はずっと職探ししてたし…でも最後のはioのせいじゃないって!」
最近めっきり減っていた、目と目を合わせて話をすること。フランスのスカイブルーの瞳と、イタリアの赤と緑のオッドアイが交差する。
🇫🇷「無職になったからって別れるわけないじゃん」
🇮🇹「でも…貯蓄だって減る一方だし…将来のことを考えると、ioと別れた方が」
🇫🇷「無理、嫌だ、死ぬ。イタリーと別れるくらいなら、イタリーを殺してjeも死ぬ」
🇮🇹「極端すぎない?」
するり、とフランスはイタリアの左手を取った。
「ね、結婚しようよ」
「え?は?けっこん?」
「うん」
ちゅ、とイタリアの左薬指にキスを落とす。それだけでイタリアは頬を赤く染めた。
ナンパ癖の酷い昔のイタリアはもういない、今やただの恋する乙女そのものである。
そして、それはフランスも然り。
「仕事があろうがなかろうが、jeが愛するのはイタリーだけだ。イタリーだから、jeは君が好きなの。頭の先からつま先まで、あばら一本から五臓六腑まで、jeはイタリーのすべてを愛してる」
「五臓六腑…」
「君に触れられなくて、jeはずっと寂しくておかしくなりそうだった。君がいないとだめなんだ、君じゃないとだめなんだ!」
「i…ioも…寂しかった」
愛する恋人の目をしっかり見据えて、フランスは息を吸った。何度も練習したイタリア語で、自分の愛のすべてを示したい。
「Ti adoro…jeと結婚して、イタリー」
喜びで胸が詰まって、声が上手く出せない。イタリアは目を潤ませて、うん、うん、と頷いた。
そして、イタリアもまた、フランス語で愛を囁く。
「Je t’aime,フランス……わっ!」
感極まったフランスがイタリアを抱き寄せると、二人はどちらからともなくキスをした。
ありがとうございました。
次回はR18になると思います。
G8の中で、出生率が下がっているのって、イタリアと日本が顕著なんですって…。それに対して、高出生率を維持するのが、フランスなのだとか。
イタリアは経済の鈍化と国民の所得低下が、出生率低下につながっていると聞きました。
いや、これは…絶望的萌え!書くしかない!!
高出生率🇫🇷✕お金がなくて乗り気じゃない🇮🇹でカップリングした経緯になります。
全然手を出したことのない純愛モノでしたが、いかがだったでしょうか…?
純愛すぎて禁断症状が出てきたので、次回はガチエロを投稿いたします(キリッ)。
フライタが好調なら、アメ日とかでシリーズ投稿しようかな、とも考えております。
長文失礼致しました。
それではまた、ごきげんよう。
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ええやん