テラーノベル
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放課後の新体育館2階、 剣道部の活動部屋にて。
本日は水曜、部活は休み。そんな事はお構いなくといった態度で竹刀を振り続ける将史。
肩まで伸びた紺色の髪を高く縛り上げ、額に汗をかきながら学園の施錠が始まるまで竹刀を振り続けている。
将史がもう何十、何百と竹刀を振り下ろし、息が荒くなった頃背後からゴトンと鈍い音と共に、
「あいたッ…!」
という青年らしき人の声が。
「誰かそこにいるのか…っ」
将史は勢いのまま竹刀を片手に構え扉の方を振り向く。
「わぁあっ!ご、ごめんなさい!まさか人がいるなんてっ」
そこに居たのは、すっ転んだ体制のまま両の腕で頭を守るポーズをとる見知らぬ生徒がいた。
「…なんだお前…見ない顔だな、見学か?」
将史はその青年に近づき尋ねる。
「は、はい…っ、校長先生に言われて…両親との話が終わるまでっ、校舎内を見て回ってくる様言われまして…っ」
そう言う青年は、上げた腕と腕の隙間からチラチラと将史の顔を覗いた。
「…?…ぁ、すまん」
ふと自身の構えた竹刀に気づいた将史、その目線の意味を察したのかゆっくりと敵意はないと言わんばかりに竹刀の刃先を下げた。
あからさまにホッとする青年。
青年は安心した様子で、そっと胸を撫で下ろした。その右手首には何処か見覚えのある、不器用に編まれたミサンガが。
「!…お前、それ!」
「ひっ…!」
将史はしゃがみ込み、青年の手首を掴んでそれをまじまじと見つめた。
朧げになっていた記憶が、少しずつ霧が晴れていく様に映像が脳裏に映し出された。
白のブラザーを着た、長い髪を碧い組紐で結んだ幼子…顔はまだ思い出せないが、その子に自分が渡したミサンガに、とてもよく似ていた。
「あっ…!、わ、悪い…また怖がれちまった…」
「い…いえ…っ」
将史の中で映像が途切れた瞬間、彼は青年を怯えさせていることに気がつき深く反省した。
脇に竹刀を置くと、青年に向かい合う様に正座して、両拳を膝に乗せ、深々と頭を下げて改めて謝意を述べる将史。
「大丈夫です…すみません、僕が、臆病なだけなんです…っ」
そういい内股気味に正座し将史を見つめる青年。
そして顔を上げた将史はこう問いかけた。
「さっきも聞いたんだが、お前は一体誰なんだ?こんな時間に見学ってのも…」
時刻は既に6時半を過ぎていた、その質問に対し青年はこう応える
「お恥ずかしながら…部活中の見学は…その……っ、自分…あがり症でして…あ!な、名前は…っすが____」
挙動不審ながらも言葉を紡ぐ青年、その後ろから大きな声が室内に響いた。剣道部の顧問だ。
「こんな遅くまで、それに今日は水曜日だぞ!!平!!」
「やばい…っ!!」
将史はさっと立ち上がり、私物である竹刀を持つとすぐに立ち上がった。
「ひぁ……ぁ…っ」
対する青年はすっかり腰が抜けたのか、内股でへたり込み涙目になってしまって居た。
「お、おい…」
「あ…?えぇ、君は…っ!転校生の」
顧問が全て言い終わる前に、将史が青年の手を掴み力づくで立たせた。
「おい!行くぞ…!」
「!?、え、え、え…!?︎」
そしてそのまま正面とは反対の階段口へ向かい走り出す2人。
後ろからは待てと焦る顧問の声がしたが、2人は振り返る事なく走った。
そして学校の校舎裏にある、すっかり花も散った梅の木の下に来た。
「こ、ここまでくれば…大丈夫だな…はぁ〜っ…!」
「はぁっ…はぁ…っ」
2人は肩で息をしながら、はぁと大きくため息をついた。
竹刀を背負いガニ股で汗だくの将史と、内股になっている足に手をついて呼吸する青年は誰が見ても全く正反対だとすぐ分かるだろう。
「ったく、あの顧問、一回捕まると長いんだよ…」
将史が呟いた顧問への愚痴に、まだ息も絶え絶えにも関わらず吹き出してしまう青年
「あは…っははっ…はふふ…っ」
手で顎に伝った汗を拭い、すかさず差し込んだもう片方の手で口元を覆い淑やかに笑う青年と、それに釣られ思わず笑い出す将史。
一時2人で笑い合った後、将史は気持ちのいい笑顔と共に、背後に立つ校舎の影と窓から反射する小さな夕日の光を背景に青年に向き直り
「俺は平、平 将史だ…よろしく」
そして手を伸ばし握手を求める。
青年は少し困惑の表情を浮かべたが、すぐに立ち直り葉だけの梅の木と校庭から刺す夕日を背負って、顔をほんのりと影に覆い、喜びを孕んだ瞳をし、将史の手を握った。
「僕は…道類…っ…菅原 道類」
これが二人の出会いである…。
#BL要素大
北条奏 (アカウント2)
402
海
3
羽海汐遠
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コメント
3件
第2話、読了しました…!剣道部の将史くんと転校生の道類くん、正反対なのにどこか通じ合う空気がすごく好みでした。特にミサンガで過去の記憶が繋がる伏線、じんわり来ました…!臆病でおっとりした道類くんに、不器用に竹刀を下げる将史くんの距離感が愛おしいです。ふたりで笑い合う梅の木のシーン、夕日と重なって好きでした。次もゆっくり読みにきますね。