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「……よしよし、怖かったな。潔、大丈夫だから。俺がここにいるから」
玲王は、高級な羽毛布団に包まれて震える潔を、布団ごとまるごと抱きしめた。
さっきまでの獰猛な独占欲はどこへやら。今の玲王の瞳には、壊れ物を慈しむような、あるいは生まれたての赤子をあやす母親のような、深い情愛だけが宿っていた。
「……ん、……れお……、……ぅ……」
潔は涙でまつ毛を濡らし、過呼吸気味だった胸を上下させながら、玲王の体温を求めてシーツをぎゅっと掴む。その「ひっ、ふぅ……」という弱々しい吐息を聞くたびに、玲王の心臓は締め付けられた。
「ごめんな。……もうあんな怖い思いさせねーよ。……ほら、力抜け。……いい子だ、潔」
玲王は潔の耳元ではなく、今度は額やこめかみに、羽毛が触れるような優しいキスを何度も落とした。
「御影家の帝王学」を叩き込まれてきた男が、今、全神経を集中させているのは、一人の男の呼吸を整えることだけだ。
「……あ、……水、飲むか? ストロー持ってくる。……あ、いや、身体冷えるか。白湯にするか?」
玲王は潔を離すのが名残惜しくてたまらないが、少しでも快適にしてやりたい一心で、至れり尽くせりのお世話を開始した。
「……玲王、……動かないで……。……どっか、行かないで……」
潔が不安げに玲王のシャツの裾を引く。その一言で、玲王の理性が「愛しさ」で決壊した。
「行かねーよ! どこにも行かねーよ! 一生ここにいてやるよ!」
玲王はベッドに潜り込み、潔を背後から包み込むように抱きしめた。
大きな手で、潔の胸のあたりをトントンと一定のリズムで叩く。まるで、眠れない赤ん坊を寝かしつけるように。
「……トントン、……大丈夫だぞ。……よしよし。……潔は頑張ったな。……偉いぞ、潔……」
「……れお、……あったかい……」
「……ああ、あったかいな。……ずっとこうしててやるからな」
玲王は、潔のふやふやの髪に顔を埋め、その匂いを深く吸い込んだ。
かつて凪を「宝物」と呼んだ時よりも、もっと重く、もっと切実な「何か」が玲王の胸を満たしている。
潔が安心したのか、ゆっくりと規則正しい寝息を立て始めると、玲王はようやく安堵の息をついた。
真っ赤な顔をして、眠っている潔の頬をそっと指の背でなぞる。
(……は? なんだよこれ。……可愛すぎて、もう一生離したくねーんだけど……)
あんなに憎んでいたはずなのに。
凪を奪った男として恨んでいたはずなのに。
今、玲王の目から見えているのは、世界で一番守らなければならない、愛おしい「俺の潔」だけだった。
「……おやすみ、潔。……明日起きたら、お前の好きなもん、何でも食わせてやるからな」
玲王は、潔が目を覚まさないように細心の注意を払いながら、その小さな手を自分の大きな手で包み込み、夜が明けるまでずっと、赤ちゃんをあやすような優しいリズムでその背中を叩き続けるのだった。
御影家の「お返し」は、いつの間にか、終わりなき「純愛の奉仕」へと姿を変えていた。