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第28話、読み終わりました……もう、胸がぎゅっとなりました。 若い家臣の「生きていてほしい」という叫び、あれが全てを変えましたね。自分の立場を捨ててまでライを生かそうとする熱が、一気に物語を動かした感じがします。 それから、ロウが「説教臭くなる前に行け!」って笑いながら戦うところ。ああいう格好良さ、ずるいですよ……。 ラストの「手だけは離さない」という描写、お二人の関係が言葉以上に伝わってきて、こちらも泣きそうになりました。 しろまるさん、この緊迫感と優しさが同居するバランス、本当に素敵です🌷
金属音が山中へ響き渡る。
ロウの刀が、先頭の武士の槍を弾き飛ばした。
「下がってろ!」
叫びながら、次の一撃を受け止める。
火花が散る。
追手たちも本気だった。
伊波家当主自ら来ている以上、絶対に逃がせない。
ライは咄嗟にマナを庇いながら後退した。
だが包囲は狭まっていく。
逃げ道がない。
「若様!」
武士の一人がライへ手を伸ばす。
その瞬間。
ライは相手の腕を払い、体勢を崩した。
「っ……」
マナが目を見開く。
貴族として育ったライだが、最低限の護身術は叩き込まれている。
だが武士相手では限界がある。
すぐに別の男が迫った。
「ライ!」
マナは反射的に武士へ体当たりする。
「ぐっ!?」
男がよろめく。
「マナ、危ない!」
ライが叫ぶ。
だが次の瞬間、別方向から刀が振り下ろされた。
避けられない。
そう思った時。
——ガキン!!
ロウの刀が割って入った。
「前見てろ!!」
荒い声。
そのまま蹴りで武士を吹き飛ばす。
だがロウも限界が近かった。
肩から血が流れている。
呼吸も荒い。
追手の数が多すぎる。
父は馬上から、その様子を静かに見つめていた。
表情は変わらない。
ただ目だけが鋭い。
「……もうやめろ、ライ」
低い声が響く。
「これ以上傷つけ合う必要はない」
ライは父を見る。
その瞳が揺れた。
一瞬だけ。
本当に、一瞬だけ。
迷いが生まれる。
その隙だった。
武士がライの腕を掴む。
「っ!」
「ライ!」
マナが叫ぶ。
ライが引き離される。
再び、手が届かなくなる。
「離せ!!」
ライが初めて怒鳴った。
だが数人がかりで押さえ込まれる。
マナも別の武士に捕まった。
「やだ、離して!」
暴れる。
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けれど力が違いすぎる。
ロウが助けに向かおうとする。
しかし前へ立ち塞がる影。
——ライの父だった。
いつの間にか馬を降りている。
静かに刀を抜く。
空気が変わった。
ロウの目つきが鋭くなる。
「……あんた、戦えんのか」
父は答えない。
ただ構える。
隙がない。
ロウは小さく笑った。
「厄介だな」
次の瞬間。
二人の刀がぶつかった。
凄まじい音。
ロウが押し返される。
「っ……!」
強い。
今までの武士とは格が違う。
父は静かなまま、容赦なく斬り込んでくる。
ロウは受け流しながら舌打ちした。
長引けば負ける。
その時だった。
「——若様!」
突然、追手側の一人が叫んだ。
皆が振り向く。
若い家臣だった。
関所で見逃してくれた兵と同じ男だ。
彼は苦しそうに顔を歪めながら叫ぶ。
「西の山道に抜け道があります!」
空気が止まる。
「何を言っている」
父の低い声。
だが若い家臣は震えながらも頭を下げた。
「……申し訳ありません」
声が掠れる。
「ですが、若様には……生きていてほしい」
追手たちがざわめく。
裏切り。
本来なら許されない。
父の目が細くなった。
だが若い家臣は顔を上げる。
「若様は、ずっと伊波のために生きてこられました」
拳を握り締める。
「だから一度くらい、自分のために生きても良いはずです!」
マナは息を呑んだ。
ライも目を見開く。
父はしばらく動かなかった。
重い沈黙。
その間に、ロウが低く叫ぶ。
「行け!!」
ライがはっとする。
マナの手を掴んだ。
「走るぞ!」
「でもロウ——」
「いいから!!」
怒鳴る声。
ロウは父の刀を受け止めながら笑った。
「俺まで説教臭くなる前に行け!」
ライは唇を噛む。
悔しそうに。
苦しそうに。
それでも。
「……必ず、生き延びる」
その言葉を残し、マナの手を引いて駆け出した。
西の山道。
暗い森の奥。
後ろで怒声が響く。
だが若い家臣が追手たちの前へ立ち塞がった。
「お下がりください!」
「貴様……!」
混乱が広がる。
その隙に、二人は森へ飛び込んだ。
枝が肌を裂く。
息が苦しい。
それでも止まれない。
月明かりだけを頼りに走る。
やがて。
遠くから、川の音が聞こえてきた。
ロウの言っていた渡し場だ。
マナは涙で滲む視界の中、隣のライを見る。
ライも泣きそうな顔をしていた。
それでも、手だけは決して離さない。
そして背後では。
山の入り口で、父が静かに立ち尽くしていた。
逃げていく背中を、ただ見つめながら。