テラーノベル
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仕事の合間、ふとした瞬間にスマホを開くのが癖になった。
通知欄に「らん」の名前を見つけるだけで、それまでの疲れが嘘みたいに消えていく。
「二人だけの秘密」
この響き、自分でも驚くほど気に入っている。
彼女は今、高校一年生。自分で選んで、通信制の高校に進んだらしい。
「自分のペースで、マネジメントの勉強も始めます」
そう綴られたメッセージを読み返して、僕は独り、楽屋のソファで口角を上げた。
「……似てるなぁ」
僕もそうだった。自分のやりたい音楽を突き詰めるために、あえて通信制を選んだ。周囲の目なんて気にせず、自分の未来を自分で掴み取ろうとするその姿勢。勝手に共通点を見つけては、胸の奥が温かくなるのを感じる。
でも、通信制を選んだということは。
学校に縛られず、時間を作れるということだ。
(……それなら、東京に来れる日もあるんじゃないかな)
いや、期待しすぎか。彼女はまだ15歳で、石川に住んでいる。
でも、僕の中の「大森元貴」が、わがままな声を上げ始める。
ただのスタッフ候補としてだけじゃない。もっと近くで、彼女が成長していく姿を見ていたい。
「元貴、何ニヤついてんの。またらんちゃん?」
隣で若井が呆れたように声をかけてくる。あの日以来、僕があまりに分かりやすくスマホを気にするもんだから、メンバーにはもう隠し通せていない。
「うるさいな。……ねえ若井、通信制ってさ、スクーリング以外は自由なんだよ。すごくない?」
「何がだよ。……まさか、呼び寄せようとしてないよね?」
若井の鋭いツッコミに、僕はわざとらしく鼻歌で返した。
呼び寄せるなんて強引なことはしない。彼女の夢を一番に尊重したいから。
でも、もし彼女が「東京で学びたい」なんて言い出したら。
その時は、僕が全力で彼女の「居場所」を作ってあげよう。
スマホの画面越しじゃなく、またあのスタジオで、僕の椅子の隣に彼女が座る日を想像して、僕は次のメッセージを打ち込んだ。
「東京に来る機会があったら、いつでも教えてね。また現場、見学においで」
本音が漏れすぎないように、あくまで「プロの先輩」としての顔を保ちながら。でも、返信を待つ指先は、あの日上野公園で彼女の手を取った時のように、少しだけ熱を帯びていた。
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🌹はなみせ🍏
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